辺境都市ガルトにて。.....フラグにご注意を。
テリーの牧場から歩いて2時間と少し(時間の単位は地球と同じで、1日24時間だった)。目の前にはテリーさんの牧場から見えた時よりも立派で堅固な城壁があった。目線を下に向けると入口と思わしき門から伸びる人や馬車の列が目に入る。
どうやら辺境都市ガルトに入る為の検問所があるらしく、列の進み具合はゆっくりとしている。のんびりし過ぎて大変な目に遭わないように急いで列の最後尾に並んだ。
「ほぉ...珍しい服装ですな。...おっと、これは失礼。私はここ、ガルトで商店を営んでいるイザークと申します。貴方の着ている服が珍しかったもので、ついつい話しかけてしまいました」
「いえ、お気になさらず。遠い、遠い島国の生まれでしてね、故郷の民族衣装なんですよ」
「成程。大陸外の島には変わった文化の国が有ると聞いた事があります。中々出会う事も無いので見る事が叶って嬉しいです」
「そうなのですねぇ。確かに【ユーミヤ】大陸に来てから故郷の人間には会った事が無いので、私が珍しい方なのでしょう」
「そうかも知れませんな。ガルトへは何かご用事でも?」
「お恥ずかしい話ですが、旅の途中で路銀を失ってしまいまして、このガルトで仕事を探して旅の路銀を稼がなくてはならなくて」
「それは大変でしたなぁ。どこか当てでもあるのですかな?」
「いえ、この地域には最近着いたばかりですので。先程、牧場主のテリーさんにお茶をご馳走になったくらいですよ。見ての通り腕っ節には全く自信がないので、ガルトでは商人の真似事でもしてみようかと考えております」
「テリーさんからお茶を...なるほど。これもご縁でしょうから何かご入り用でしたら私、イザークの店に来て下さい。商人同士、勉強させて頂きますよ」
「ありがとうございます。申し遅れました。私、秋雨と申します。その際には是非立ち寄らせて頂きます」
「是非。お、順番がきたようですのでお先に失礼します、アキサメさん」
「はい、それでは」
話をしている内に順調に列が進み、今はイザークが検問所にてやり取りしているの見ながら秋雨は考える。
(イザークさん、ですか。最初は警戒していた様子でしたが、テリーさんの名前を出した事で明らかに緩和されましたね。イザークさんはガルトでもある程度の地位の方かも知れませんね。助かりましたよ、テリーさん)
「次の者!こちらへ!」
「はい、ただいま」
イザークの検問も直ぐに終わったようで、直ぐに順番がまわってきた。秋雨は考えていた設定を思い出しながら検問に臨む。
「身分証を」
「すいません、【ユーミヤ】の物は未だこれからでして、ここガルトで登録する予定です」
「他所から来たのか?そういえば見慣れない格好だな。商人か?」
「はい、と言っても家業を継ぐのが嫌で飛び出してきた身ですので、これから商業ギルドに登録する
「では、この水晶に手を乗せて名前と出身国を宣言してくれ」
そう言われた秋雨は地球で占い師が使うような水晶に手を乗せてハッキリと宣言した。
「名前は〈アキサメ・モリヤ〉、出身国は〈ニホン〉です」
「.....聞いた事ない国だが...よし、問題無し。犯罪歴も無し。通って良し...と言いたいところだが、身分証の無い者は入市税で2000ルク必要だ。金は持ってるか?」
「すいません、ルクでの待ち合わせが無くて両替商に行かないと用意出来ないのですが...」
「分かった。そういう奴も居るからな。今から証文を渡すから明日の10の鐘までに金を払いに来てくれ。ギルドに登録すればギルドカードが身分証代わりになるから早目に登録するといい。....言っておくが未払いで逃げたら一発で犯罪奴隷堕ちだからな?追跡魔法がかかってるから直ぐに捕まるぞ?」
「勿論ちゃんと払いますよ。ギルドカードの方もきちんと用意しておきます。ご丁寧に有難う御座います」
「じゃあ、これが証文だ。無くすなよ?...では改めて、通って良し!オホンッ...ようこそ辺境都市ガルトへ!」
ニカッと笑う筋骨隆々な門番に歓迎の言葉をもらいながら、秋雨は異世界の都市の石畳みをしっかりと踏み締めて歩き出す。
(警察機構もしっかりとしている。石畳みが敷かれているのを見る限り文明もそこそこ発展していますね.....何よりも魔法なんてものがあるとは...益々
大通りらしき道を端寄りに歩く秋雨。どうやら会話だけで無く読み書きにも
通りにある八百屋っぽい野菜の並ぶ店を覗いて見ると、普段から目にしていた野菜や、独特な色や形の見慣れない野菜を見つける。興味が湧いてくるが今は両替、宿、ギルドが最優先なので後ろ髪を引かれる想いでその場から立ち去る。
「両替商は何処ですかねぇ。門番さんに聞いておけば良かった」
「なんだ兄ちゃん、両替したいのか?だったら商業ギルドで出来るぞ。見たところ他所から来たんだろ?商業ギルドはこの大通りを真っ直ぐ行くと右手に見えるぜ」
「ご親切にありがとうございます」
「良いんだよ!ルクと両替できたらウチの串焼きでも買ってくれ!」
「そうですね、美味しそうですし是非買いに来ますよ」
偶然にも、通りかかった屋台の親父さんに両替も出来るという商業ギルドの場所を教えてもらい、秋雨は通りを真っ直ぐ進んで行く。
親父さんの言葉通り15分ほど歩くと、右手にこの都市では珍しい3階建ての立派な建物が視界に入ってきた。おそらく緊急時の避難場所も兼ねているのだろうと思わずにはいられない程に堅牢な造りをした商業ギルドの入口には門番が2名居る。秋雨は背筋を伸ばして呼吸を整えると「平常心、冷静に」と心の中で呟きながら一歩前へと足を出したその時、
ーードッガーン!!
商業ギルドの扉が勢いよく開くと同時に、スキンヘッドの男が商業ギルドから外へと吹っ飛んできた。
ピタリと足を止めて、秋雨は思う。
(危なかった...もう少しでフラグを回収してしまうところでした。流石は
飛んで来た悪漢らしき男はなんとか立ち上がると商業ギルドの入口から目を逸らす事なくジリジリと後退する.....秋雨が立っている方へ。
悪漢と合わせる様に秋雨も摺り足で後ろへと下がるが集まってきたギャラリーに阻まれてしまい、とうとう秋雨の目の前には悪漢の綺麗に剃られている
(勘弁して下さいよ!私がいつフラグを回収したというんですか!?主人公さーーん!)
『どこに行くつもりだ!このコソ泥!』
姿はまだ見えないが、商業ギルドの奥の方から良く通る若々しい声が聞こえてくる。
カチャ、カチャ、と剣の鞘と鎧が奏でる音をBGMにしながら優雅に歩いてくる人影。
入口から出てきた金髪碧眼のその男は、長髪を靡かせながら真っ直ぐと悪漢のもとへと歩いて来た。
そのいかにもな美丈夫のベストタイミングな登場に秋雨はーー
「主人公さんキターーー!!..あっ!ヤバっ!」
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