第07話 ケット・シーと血糖値

主治医は、猫撫で声でこう、さえずる。

「数値によってニャ、お薬を代える必要も出て来ますニャー」

更に

「糖尿病は怖い病気ですからねえ、

今飲んでるお薬が飲めなくニャりますよ?」

脅しでも何でも無い。主治医は別段可笑しいことは言ってない。

只、カルテには妻の血糖値は刻まれていなかった。

さながらケット・シーな妖精猫め!

「ケット=猫」「シー=妖精」

さえずるなら、血液検査をしてからどうなんだ?

妻が危惧しているのは、十数年掛かって

ようやく見つかった最高の飲み合わせを

血糖値うんぬんで崩されてしまうこと。

度重なる体調不良に怯える日々に戻りたくない気持ちは

精神病理の当事者として良く理解出来る。

妻は彼女の実家付近にある

循環器内科で血液検査をすることを決めた。

数値は70~100mg/dlが正常値

彼女が最後に計った時は111だったそうだ。

「たかが」11?「されど」11?

異常値だったら薬を代えられる?

薬を代えられたら精神疾患が崩壊する?


妻は0kcalのゼリー、寒天しか

間食時に摂らないようにしているし

ターミナリアファーストと言う

血糖スパイクを抑えるサプリメントを常用している。

この努力が実らないでどうする!

僕はパートナーとして、家族として応援しているし

危惧している薬品変更が回避出来れば

安堵の想いを抱くであろう。


循環器内科への来院は台風一過の火曜日に決定。

見てろよ妖精猫「ケット・シー」

アンタのさえずりが間違いだったってこと

彼女の努力が証明してみせる。血糖値は、必ず下がる!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る