第04話 殺人奇譚と命名します

精神科で煙草の物々交換をおこなった、とかは本当はどうでもいい。

一番、最近の闘病記を記そうと思う。忘れもしない2022年06月27日、僕は交流を深めた男性作家の作品を読了して、思わず嘆息を吐いた。何て幼稚で、救いようの無い内容。大金を預金から引き出した日に恐喝に遭いかけて、同日、一目惚れで購入したナイフで相手を殺してしまう、と言う内容だった。

正当防衛なら情状酌量の余地もあるが、主人公は、「あっ!」と後方に注意を惹き、恐喝して来た相手が背後を気にしていた所を、ズボンの後ろポケットからナイフを取り出し、前を振り向いた時に首に近づけ、ためらいもなく喉を切り裂いたと言う犯行内容。

恐喝は完全に未遂で、守ったのは大金と自称する幾許かの金銭。

物語はそこでカーテンコールでは無く、懇意にしている女性が、世界的に有名な音楽家で、

「腕利きの弁護士を雇ってあげる。無罪を勝ち取って事実婚を成立させましょう」

と、のたまう内容だった。

物語は更に混迷して、恐喝男が地蔵の力で生き返って、ポンタ暦と言うパラレルワールドで、主人公と仲良くベンチに座って、物々交換中心の経済の話を始める。……あっ、物々交換の伏線回収? こんなものは伏線でも何でもない。

とにかく僕は、深い嘆息を吐き、眩暈を起こしながら、一生懸命感想を書いた。しかし、しばらくコメントへの感想は返って来なかった。

僕は直感的に傷つけたと感じたし、僕自身も荒唐無稽で支離滅裂な文章に悪酔いしてしまい、気分の悪い酩酊感に苦しんだ。こう言う時のSNSの沈黙は、精神的によろしくない。結論から言うと返信は翌日に返って来たのだが、

「自己評価は高い方じゃないけど、もっと自信を持ってもいいですよね」

と言う、一生懸命な返信のどこに反応すれば、そう言う返信になるのか理解に苦しむ内容だった。パラレルワールドのポンタ暦を思い出しながら、僕は熱病にうなされて、気が狂いそうな経験をした。精神を病んでいる人は、メンタル攻撃に対する防御策がぜい弱だ。

言葉を並べることがメンタルを摩耗するのであれば、僕は文壇から去るべきなのかも知れない。真逆の例と言うか、皆さんの作品に触れること自体が、進化につながり、喜びに変わるのだと再確認したことも。上記の殺人奇譚は理解に苦しむと何度擦っても被害者は出ない。作者の男性は紆余曲折あって、作品を全削除して、カクヨムから籍を抜いたのだから。こうやって擦ることに対して、有無も言わさない。僕は極力、褒め箇所を見つけるために丁寧に拝読したのに、彼は頑なに育成シナリオを読むことを拒んだ。ハグナリのシナリオ。

GIVE AND TAKEじゃないけど、同じ釜の飯を食うような関係の中で、自分の作品の読者である人間の作品を読まないと言う立ち回りは、一体どう言う料簡か!


脱線し過ぎたので、この作品はもう闘病記には矯正不可能だ。

現在4353文字。原稿用紙10枚が下限だったが、応募先に指定していた幻冬舎にはもう寄稿するのはやめた。

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