第28話 御襁褓やめトイレを済ませし媼なり笑顔うかべて尊厳さへ帯ぶ

 病院から入所して間もない婆さんの診察で、困っていることはないかを尋ねた。


「トイレに行きたい」と遠慮がちに話す。

「病院にいたころからオムツにするよう言われてきた」とも訴える。


 便意を確認し「朝食後に車椅子でトイレ誘導を」とナースに指示した。


 一か月後の診察では「おかげさまで…」と快便の報告をする婆さんの笑顔に「よかったよかった」と握手をする爺医の自分がいる。


 とても他人事とは思えない。

 明日は我が身である。

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