第3話 「うまいか?」に十八歳の吾はただ食ひぬ 呑むだけの父の訳も知らずに
「うまいか?」に十八歳(じふはち)の吾はただ食ひぬ 呑むだけの父の訳も知らずに(医師脳)
大学受験に失敗し仙台の予備校へでかけた18歳の春。
下宿を決めたあと、父と二人で駅前のホテルに入った。
「なんでも頼め!」
「ステーキ食いたい」と甘えたほうが父は喜ぶだろう、と浪人生は気遣った。
ステーキ定食は一つ。
なぜか父はビールだけ頼んだ。
医者になって大分たったころ、そのときの父親の財布の中身を母から聞かされた。
「医者冥利に尽きる」などと言っていられるのも、そんな親のおかげである。
十数年前に「老衰」の死亡診断書を書いたことが、せめてもの償いだと思っている。
―南無阿弥陀仏。
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