第42話 違う意味で「今でしょ」のお国柄
10分くらいでガンガラーマ寺院に到着した。
まず右手受付で、入館料300ルピーを支払い、靴を預ける。順路ができていたので、それに従って巡る。
コロンボで一番の寺院とは言うが、大したことがない。ダンブッラからシーギリア、アヌラタブラ、ポロンナルワと文化三角地帯の世界遺産を見てきた私は目が肥えてしまっていたのか、全く感動しない。心にグッとくるものが全くない。さっき見たロータスタワーの方がまだ笑えて面白い。
ガンガマーラ寺院の次に向かったのは、寺院から左へ2分ほど歩いたところにあるシーママラカヤ寺院だ。ここはまだよかった。御利益を感じる施設ではないが、水上に浮かぶ寺院は個性的で面白い。こちらの寺院はスリランカを代表するジェフリーバワと言う建築士が設計したものである。
高層ビル群を遠くに眺めながら祈りを捧げることができる寺院というよりも、
街中のオアシス的な公園というコンセプトを感じる。
前評判通り、そんなに見どころのないコロンボ。私自身、そんなに買い物にも興味なく、できれば時間の許す限り観光したいというタイプなので、せっかくだからスリランカを代表するジェフリーバワの旧宅「ナンバー11」へ行くことに決めた。
ここは予約が必要なところなのだが、まだ午前中だし大丈夫かな?と思い、すぐにタクシーを呼び、向かった。その道中、意外な出来事と遭遇した。
突然、タクシーが警察に呼び止められたのだ。
何が起こったのだ。よく見ていると、タクシー運転手が交通違反をしたらしく違反切符を切られていたのだ。これには驚いた。ずっと横暴な運転に慣らされてきたため、いつの間にか交通ルールもへったくれもない国だというイメージが出来上がっていた。大都市ではちゃんと取り締まろうとしているようだ。
スリランカは一歩一歩努力しているんだなと思って、微笑ましく思った瞬間
でもあった。
シーママラカヤ寺院からジェフリーバワ旧宅「ナンバー11」まで250ルピー。
ジェフリーバワの旧宅はコロンボ大学近くの高級住宅街にある。そして10時、
14時、15時30分の3回のみ旧宅ツアーが開催されている。料金は1000ルピーかかる。
ガイドさんはすべて英語だが、分かり易い英単語をピックアップして話してくれるから、何ら不自由は感じなかった。
この旧宅はホテルとして宿泊もできるようで、1泊朝食付き300ドルだと言う。この旧宅にジェフリーバワが住み始めたのは1958年。そこから死去までの30年間、ずっと時間とお金をかけて改装しまくっていたと言う。ガイドさんがいないと迷子になる造り、それくらい迷路みたいな住宅になっている。ちょいちょい部屋にスリランカの遺跡っぽいのが見えるのが面白かった。光や風を大切にするバワのこだわりを手に取るように感じることができる、旧宅ツアーは、建築のことをよく知らない人でも楽しめると思った。
旧宅を出た後は、少しこの高級住宅街をうろついた。需要がどれだけあるのか分からないが、学習塾や予備校みたいな施設もよく見かけた。
エリアによって住む人たちが違うというのは、どこの国でもあること。日本も最近そうなりつつあると感じる。
コロンボ大学のある通りの突き当たりにあるのが、コロンボ国立博物館だ。
この建物の周辺には自然史博物館やアートギャラリーなどが顔をそろえる。入場料は1000ルピー。すべて撮影禁止。
紀元前からの歩み、セイロン島の成り立ちや、古代遺跡、などを展示してあったり英語での解説が添えられていたりする。
ともかく中が暗い。そして、この博物館だけに言えることではないが展示の仕方が雑。ケースが汚れていたり埃っぽかったり。
よく見せようとか、こうしたらもっとよく伝わるのではないか、とか、こう改良したら使いやすくなるんじゃないか、とか、こういう風にした方がもっと見栄えが良くなるんじゃないだろうか、とか。そのような思いが全くこの国からは伝わってこない。宿もそうだし、列車もそうだし、駅のつくりもそうだし、バスもそう。全てに言える。
今使えたらいい。そんな不便がなければいいじゃん。見えりゃいいじゃん。
もっと。もっと。もっと。
これがない。そこそこでいい。この感覚をこの国から一番強く感じた。
その態度を一番前面に押し出しているのが、国の顔となる博物館ではなかろ
うか。
一番立派だったのは外観。1877年、イギリス統治時代にウィリアムグレゴリーによって造られた、博物館の箱。その当時に流行った建築様式をよく伝えている。
イギリスに過去統治されており、イギリスの手が多少加えられているのだから、大英博物館のような作りになっているのかなと期待していたのがバカだった。でも、同じイギリスに統治されていたインドの博物館は、こんなに雑じゃなかった。もっと明るかったし、資料も見やすく整頓されていた。
お国柄ってあるのだと思う。やはり島国は独特なのだ。
じっくり足を止めてみようという気も起らない博物館だから1時間程度で鑑賞を切り上げた。
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