第20話 性感マッサージは結構です!
宿に着いて、すぐに汗を流し、洗濯をする。定着したルーティンワークだ。明日チェックアウトだから今日が最後か。4泊5日と長い間、お世話になりました、とベッドで大の字になっていたら、ご主人がセイロンコーヒーを持ってきてくれた。
「ポロンナルワはどうだった?」
自転車を借りて回ったんだ。遺跡地帯は時間が止まっていて、本当に感動した。ただ、今日は非常に日焼けをしたんだ、と話していたら、ちょっと待って!とご主人が部屋から出て行った。2~3分ほどで戻ってきたご主人の手には大きなアロエがあった。庭に生えているアロエを切ってきてくれたのだ。
本当にどこまでも親切な人だった。
この国でも日焼けにはアロエなんだ。アロエの効能は万国共通なんだな…なんて思いながらセイロンコーヒーを啜っていたら、ご主人がアロエの皮をその場で向いて、私の首筋にこすりつけてきた。
これくらい、自分でやるよ!といっても、大丈夫、僕が塗ってあげるから、と譲らない。ご主人は首だけでなく腕や足などにも進出。
様子がおかしい。
駄目だ、ご主人、奥さんが今、妊娠しているから欲求不満でやたら私に親切にしてきていたのではないか。
「子供さんはいつ生まれるの?男の子?女の子?」
わざと家庭的な話題を必死で振る。
「男の子だよ、2か月後誕生するんだ。楽しみだ。」
そう話しながらも手は止まらない。私は必死で次の会話を模索する。
「大変英語が上手だけど、どこで学んだの?」
「ドバイへ出稼ぎに行っていたんだ。働いていたホテルで身に付いたよ。その時に稼いだお金でこの宿を建てたんだ。」
手を休めることがないご主人に困惑していたら、突然、ご主人の携帯電話がけたたましく喚いた。面倒くさそうにご主人が電話に出る。
シンハラ語なので何を言っているのか分からない。すぐに切って、ごめんよ、と言いながらまたアロエマッサージを続ける。すると、またけたたましく携帯電話が喚く。ご主人が渋々出る。ごにょごにょ言いながら、すぐに切る。でもまたすぐに携帯電話が喚きだす。
分かった。奥さんだ。
ご主人が日本人の旅人の部屋に遊びに行っていることが分かっていて、心配しているのだ。
これ、女の感。
「後は自分でアロエマッサージをするから、奥さんのところに戻ってください」
と私が言うと、ご主人は驚いた顔を向けてきた。ビンゴだった。
食後は屋上に上がり星空を眺めた。写真に撮ったけどやはりきれいに写らない。満天の星、と言う感じではなかったけど、少なくとも日本より星の数は多かった。
いつも通り、20時過ぎに布団にもぐる。明日は旧王都・世界遺産都市キャンディへ向かう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます