第37話 年末年越し大決戦!前編(4)

 僕達以外にも後方でまごついていた冒険者達も戦闘に参加する。普段はパーティーも組まないのでその実力は窺い知れないモブ冒険者達だが紫装備のモンスター達にも遅れは取らない。


 片手剣や大剣、槍にハンマーに弓にボウガンに魔法とそれぞれの武器をおおいに振るって暴れている。

 こう言うレイドイベントみたいな戦闘は嫌いじゃない、何より命の安全が保証されてるってのが良いよね。


「うはははは!くたばりやがるんだよーー!うわっと!?」

 ポンコツちゃんが調子に乗っていると突っ込んで来た槍持ち足軽に接敵されていた。


 君のボウガン威力低いんだから幾ら射っても大したダメージにならないのに…武器の攻撃エフェクトは一緒でもその攻撃力が段違いなのはその手のゲームじゃよくあるんだ。


 そんな身の程を一切弁えないポンコツちゃんをフォローするのはマコラである。ポンコツちゃんに迫った足軽をクレセントブーツの一撃で胴体から輪切りにした。


「……大丈夫?」

「なんのなんの!この借りは直ぐに返しますよ!」


 なんか以前酒盛りで知り合ってからちょくちょく話をしているのか仲良くなった二人だ。ポンコツちゃんにはお守りが基本的に必要なのでマコラにも頑張って欲しいところである。


 こちらにも弓持ちの足軽が狙いをつけてきた、マジックバレットで先にアゴを撃ち抜いて意識を刈り取る。しかしまた次の紫装備が現れる、今度は紫武者か。接近されると危険だな。


「ハァッ!」

 するとリゼルさんが割り込んできた、紫武者の甲冑を易々と貫通するレイピア。

 その鋭い突きがヒットした所に微かに魔力の光が灯る……まさか。


「燃え盛れ、天昇焔てんしょうほむら

 紫武者の全身から火炎が発生した、あれは魔法を織り交ぜた剣技。魔法剣術だ。


「突きと同時に敵の身体に魔法を付与する魔法剣術ですか。中々の高等技術ですね」

「ウチは魔法剣士、使う流派は『ロクテン流剣術』だ」


「『ロクテン流剣術』、確か火水風土雷闇の六つの属性魔法を扱う魔法剣術でしたっけ?」

「………知ってるのか?」

「少し聞きかじった程度ですけどね」


 さてっ無駄話は戦闘中には厳禁だ、そろそろ戦闘に戻るとするか。

 そして紫装備のモンスター達を倒していく、すると光となって消えていく連中の中にゲームで言うドロップアイテムを残していく個体が現れた始めた。


 そしてそのドロップアイテムとは……ナスである。

 なんで?意味分からんと思いながらもナスを広う、ほうほうっこれはかなり上物のナスだな。


 ナスは煮浸しも漬物も美味しいんだ、しかしなんでモンスターを倒してナスなのか。まさか紫繋がりとか?えっナスをドロップするモンスターだから紫装備なのかアイツら……。


「いやいやそんな馬鹿な」

「ハジメ!真面目に戦う!」


 マコラに怒られた、確かにその通りだよね。

 真面目に頑張ろう。


 そして戦闘を繰り返しながら僕達も富士山を登る、ある程度移動を繰り返すと分かることなのだが。このダンジョンはつづら折りで徐々に上に登っていく通路の様だ。


 道が折れる所が広めの空間となっていて、そこで紫装備のモンスター達が襲ってくるのを繰り返している。敵の数が半端ではない。


 冒険者の僕達も体力には限度がある、何時間も山登りと戦闘を続けるなんてのは不可能だ。

 階段の所にはモンスター達が出現しないので休んでる冒険者も多い、携帯食料を食べたり水分を取ったりしている。


 僕達も何度か休憩を取っては紫装備のモンスター達との戦闘を何度も繰り返しては上を目指していった。

 階段をもう何千段登ったのかすら分からなくなってくる、回復魔法をちょくちょく使わないととてもじゃないが足がつる、おじさんの足は本当に直ぐにつるんだよ。


 魔法でモンスター達を打ち倒し、時に立派なナスをリュックサックに突っ込んで山を登る僕達はヤッとのことで富士山の中腹辺りと思われる所まで登ってきた。


 今までで一番広い開けた場所だ、学校のグラウンドの数倍くらいの広さはあるな。

 そしてそこには僕達が来た階段の通路以外にも左右に大きな門があった、しかしその門は硬く閉ざされている、あの門は一体?まあいいか。


 そしてそこに冒険者達が集まっていた、ここにはモンスターの姿がないぞ…。


 すると一人の男性冒険者が上を見て声を上げた。

「上だ、上から大物が来るぞ!」


 僕達も上空を見る、何かが接近してくる。

 かなり大きいぞ。

「……まさかあれは」

「うげっ!グッグリフォン!?」


 現れたのは鷹の頭と翼、そして獅子の身体と尻尾を持つ幻獣グリフォンだった。

 それも二体もである、コイツはとんでもない大物が現れたな。



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