第27話 冬の始まり(1)
「ふぅっ!先輩、今日も寒いですね~」
「確かに、今日の最低気温って何度だったっけ?」
「確か一桁後半くらいでしたよ?」
「あ~道理で寒い訳だ」
その日は二十代の後半君の外回りだ、流石にリーマンスーツじゃ寒い、流石にもう十二月だしね。
クリスマス……は仲良しカップルとかが苦手な僕にとってはあまり話題にもしないが年末年始が近付いてきたと感じる。
アラサーにもなると一年の流れが速い速い。本当に魔法か何かにでもかかっているんじゃないかと思う程だ。
年末年始は休みなので会社も忙しい、この時期は異世界アレクサンドと日本を小まめに行き来して息抜きをしながらもこちらの仕事をこなしていく予定である。
息抜きは必ず入れる、どんなに仕事が忙しくてもだ。僕の流儀である。
そんな事を考えていると、横目に自動販売機を見つけた。僕は微糖のホットコーヒーを買う。ブラックはまだ苦いので苦手だ。後輩君はココアである。
「おおっあったけぇ~」
「うんっ確かに、それに美味しいね」
「何で寒い時期のホットコーヒーってこんなに美味いんですかね?」
「さあ?やっぱり寒いからじゃないかな?」
冬の時期は温かい料理が本当に美味い、それはこの冬の寒さも一役買っていると僕は思うのだ。
まっだからと言って寒いのは嫌いだ、熱いのも嫌いだが寒いと布団から出たくなくなるからね。
野生の動植には冬眠するのがいる、人間も冬の時期は冬眠とかしたくなる気分だ。或いは仕事とかしなくても生活を国に保証して欲しい。
そんなしょうもない事を考えてしまう季節である、きっと年末が近い事もあって気が緩んでいるんだろう。
「寒いからですか、人間の味覚って本当に適当な作りしてますね」
「寒いだけで食べ物が美味くなるならお手軽で良いじゃないか」
そんな事を話ながらまた寒い外回りだ、頑張ろうっと。
◇◇◇◇◇◇
『ふぅ~ん?じゃあこの時期は小まめにここと日本を行き来するんだね?』
「去年もそうだったじゃないですか、年末は仕事が忙しいので進めながらじゃないと異世界での息抜きも楽しめないんですよね」
『まっ良いんじゃない?僕ははじめ君のやりたい様にやれば良いと思うよ』
「ありがとうございます」
僕は帰る日付と時間を書いたメモを不思議駅の掲示板に貼り付ける、この日に日本に帰るので書き間違いには注意を払う。
さてっこれで少し待てば空の向こうから異世界行きの一両電車が来るぞ。
『……ふぅん、年末年始ね』
「後はクリスマスとかもありますね、まあ独身の僕には何の関係もありませんが」
『クリスマス?なら年末には何かにあるの?』
「え?う~ん……遊んでるスマホゲーで年末イベントとかがあるくらいですかね」
言ってて悲しくなった。本当に異世界へ息抜きする以外は何も大した趣味がない僕だ。
『年末年始イベントか!それは良いことを聞いたね』
「え?何が良いことだと……」
『まあまあ気にしないで!あっ列車が来たよ!速く乗りなよ!』
ネビウス様に列車に押し込まれる、何となく嫌な予感がするんだけど…。
『あっとりあえず年末頃にはまたここに来てよね!その前に日本に戻っておくようにね』
なんで?しかし僕がネビウス様に話をする前に異世界アレクサンドへと列車は出発してしまった。
『うんうん、やっぱりイベントって良いと思うんだよね?それにクリスマスか……少しはじめ君の世界について調べてみようかな?』
何を言っているのか分からないが、多分禄でもない事なんだろうな~~。
「ハァ~~ッまっいいか…」
しかし息抜きに心配事を持ち込むなんて僕の流儀に反する、ここは仕事と一緒に面倒くさそうな事は頭の外に安置してしまおうかな。
気を取り直してアレクサンドへと向かった。
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