第24話 おじさんは神器を振るう(3)

「サイレントスニーク」

 足音と気配を消す魔法を発動した。これで他のモンスターに見つかるリスクを減らす。


 更に……。

「サモン、マジックアイズ」


 魔力の光を出す、コイツにあのお狐モンスターを探してもらうとするか。一つ二つじゃ足りないので八つ程召喚した。


一度に複数のマジックアイズを召喚出来るこの魔法は何気に重宝する魔法である。


 ………けど光の真ん中にあるモノアイが実に不気味だよ、こんなの宙に浮いてたらモンスターと間違われないか心配である。


 マジックアイズ達が索敵を開始する。さてっ後はあのお狐モンスターを倒す手段を考えるか…。

 待つこと数十分、マジックアイズがどうやらお目当てのお狐モンスターを発見した様だ。


 マジックアイズを通して姿を確認する。

 あの大きさと六本の尻尾、うんっ間違いなく僕とポンコツちゃんを襲ったお狐モンスターだな。

 普通に休んでいる、なんかムカつくね。


 発見したので後はそこに向かって移動を開始する。他のマジックアイズのお陰で余計なモンスターとの戦闘は回避出来た、問題なくお狐モンスターのねぐらまでこれた。


 マジックアイズを解除して、様子を窺う。

 大きな大樹の根元で休んでいるな。

 魔法を使った罠とかは破壊されそうだし、普通の罠とか持ってきてないからな。こう言う嫌がらせみたいに相性が悪い敵がいきなり現れるからアガーム大陸って危険なんだよ。


 まあここまで来てしまったんだ、後はやるだけである。取り敢えず距離があるうちに先ずは魔法で先制パンチだ。

「ブレイクスパーク!」


 いきなり上級魔法で攻撃だ、巨大な雷がお狐モンスターと大樹を吹き飛ばした。

「キュオオオォォオオーーーーーーーーッ!」

「やっぱり寝たふりだったか…」


 ブレイクスパークはヤツに直撃する前に放った咆哮で打ち消された。いやっ大樹の方は吹き飛んだんだ、全て相殺された訳じゃないのか?。


 考えてる場合じゃないな、お狐モンスターがこちらに向かって来る。

 討滅の太刀を構えて躍り出る、さあてっ決着をつけますか!。


「キュオオオォォオオッ!」

「───流水の太刀」

 お狐モンスターが手始めにと両前脚での連続ひっかき攻撃をしてきた。


 鋭い爪には人間なんて容易く斬殺出来る威力がある、その攻撃を大太刀を振るい受け流す。

 相手の攻撃を斜めから斬撃を加えてずらして、最小の動きで回避する。

 普通の刀なら速効でへし折れる、しかし討滅の太刀は刃こぼれ一つしない。まっ神器ですから。


 むしろお狐モンスターの爪が削られた。

「キュオオオォォオオオオオオーーーッ!」


 攻撃が効かないと見ると今度は尻尾を使って攻撃してきた。六本ある尻尾を僕から見て右から順に、まるで意志があるかの様に伸縮自在に動いてくる。

 ギュンと伸びて来た、足運びだけで躱すと地面にズボッと突き刺さる。


 アレは喰らったら身体に穴が空くな。

 更に尻尾からの攻撃は続く、一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つと順に伸びてくるのを全て躱した。すると最後に尻尾を動かして一本に束ねて来た。


 私がぶっ飛ばされたアレだな。しかし今は身体がちゃんと動くので躱せる、お狐モンスターが身体を振るい束ねた尻尾を真横に薙ぎ払う。

 私は一瞬ヤツの視界から外れるこの瞬間を狙っていた。


「マジックインパクト!」

 振るわれた大きな尻尾に掌底を叩き込む、まるで鉄塊の様だったヤツの必殺の尻尾はその勢いと硬さを失った。


 幾ら魔法をかき消すと言っても常にそんな結界か何かを張っている訳じゃないのだ。あくまでもこちらの動きを見てからの後出しジャンケンでしかない。ならこっちは持続性のない単発の魔法を戦闘の合間に仕込む事は出来る。


 魔法使いのおじさんを舐めちゃいけない。

 ただのモフモフに戻った尻尾、そこに大太刀を振るう。

 一閃、ヤツの六つの尻尾を断ち切った。


「キュッ!?キュオォオオオオオオーーーっ!」

 流石にダメージも大きいだろう。しかしヤツは後方にジャンプしてこちらとの距離を取る。

 怒りに任せて攻撃してはこないか、やはり相当に頭が良い個体の様だ。


「キュルルル………」

「…………ふぅーーっ」

 互いににらみ合う、そして今度はこちらから攻める!。


 大太刀を構えたまま疾走する。お狐モンスターが宙に狐火を出現させた。間合いを取ったまま戦う気か!。

 放たれた狐火を大太刀を振るい蹴散らす、こちらが全ての狐火を消滅させるのを見たヤツは…。


 なんと背中を向けて走り出した、逃走だ。

「まあ、それだけ頭が良いんだ……ダメージを受けたら逃げるのもおかしくないよね」


 ゲームと違ってモンスターも危険だと思えば普通に逃げもするさ。僕も一度逃げて体勢を立て直したし……だからこそ逃がすつもりはないけど。

 僕は大太刀の刃を逃げようとするお狐モンスターの背中に向けるヤツが大きくジャンプする為に頭を上げた。


「飛天の太刀!」

 マンガ的な解説をするなら剣気を放って遠くの敵を攻撃するみたいな真似を再現した攻撃を仕掛ける、ヤツの頭を狙った攻撃。しかしヤツはこちらの殺気をギリギリで察して頭をずらした。


 結果ヤツの喉を大きく切り裂いた。

「ギュォオオオーーーーーーーーーーーーッ!?」


 大ダメージ。しかし油断はまだしない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る