息抜きで異世界へ~金や権力に興味のない超有能冒険者のオッサンは息抜きで冒険をする~
どらいあい
第1話 田中一(たなかはじめ)(1)
世の中コロナで色々と本当に大変らしい。
らしいと言うのは元々僕は休みの日に何処かに出掛けるとかもなく職場と家の往復以外で殆ど出掛ける人間でもなかったので自粛疲れとかもない、もう何年も前から今と大差ない生活をしていたからだ。
僕事、
田舎なので給料は都会の企業よりもかなり安い、休みも特にない、お金もないので休みがあっても仕方ないのだが…。
おっとそんな話はどうでもいいか。問題なのはそんな私にも『息抜きの趣味』が実は見つかったのだ、ここ一年ほど私の楽しみはそれなのである。
私は…息抜きで異世界で冒険者をしている。
仕事を終えて車で自宅に帰る、賃貸の安いアパートだ。防音性も防寒性も皆無で家賃が安い事だけが取り柄のアパートである。
そこに帰宅したのち着替える、リーマンスーツからキャンプとかに行きそうな服装へと。
靴も登山靴だ、スニーカーとかじゃ危ないからな。荷物をリュックサックに入れて準備完了だ。
そして準備を終えた僕は一言とある言葉を発する。
「準備出来ました、お願いします神様」
『はいよ~』
気の抜けた女性の声だ。その声が聞こえた瞬間に僕の視界の景色は一変する。
さっきまで何もない狭いアパートの部屋にいたのに、今は全く違う場所に立っていた。
そこは駅のホームだ、田舎によくある無人駅のこぢんまりしたホームである。掲示板や自動販売機があり一応屋根もある、しかし驚くべきなのはそれだけじゃない。
「何度みてもこの景色は…雄大だな」
そうっそのホームの回りは海だった。
世界の全てが水没でもしたような、そのホーム以外は全て青い水平線と、その先には空と雲しか見えない世界だ。
ここに来たタイミングで青空だったり夕方だったり夜だったりとするが、今回は青空だった。
これからいっちょ冒険しにいきますかって気分だったので丁度良い。
どこまでも続く青。白い雲は入道雲だ、モクモクと本当にどこまでも大きくなっていきそうな雲だ。
『相変わらずここの景色が好きなんだね』
声がしたので振り返る、ホームのベンチに腰を下ろしている一人の女性がいた。
名前をネビウスと言う女性だ。
アッシュブロンドの長い髪をまとめて右肩から胸元に垂らしている、瞳は黒い。
歳は十代中頃くらいの若い少女だ……見た目はね、身長は私より低いが脚はスラッとしていてモデルさんみたいなスタイルをしている。
服装は独特でファッションの知識のない私にはよく分からない、パンク?ラッパー?サイバーパンクだっけ?なんかそんな感じの服装をしている、肩や胸元を露出したスタイルでかなり目立つな。
この女性は神様である、女神ネビウス様だ。
実は僕は一度死んだ、心臓マヒで。しかし本来はもっと長生きする運命の元に僕はいたらしい、そこでなんやかんやと話をして最終的に僕は生き返らせてもらったのだが……。
以前読んだマンガかネット小説の影響だったのか、試しに異世界って本当にあるんですかと聞いたら……。
『もちろんありますよ?なんなら行ってみます?』
と言う神発言、僕は異世界に行かせてもらった。
その後も何度も異世界に行かせてもらうようになった、僕は異世界の魅力に取り憑かれてしまったのだ。
その魅力については後で話そう、今は目の前のネビウス様と話をする。
「またアレクサンドに行きたいんですが…」
『そうっならそこの掲示板にここに戻ってきた時に君が戻りたい時間と日付を書いておいてね』
掲示板の横のベンチには紙と鉛筆が置かれている。それを手に取り明日の日付と時間は……午前五時くらいかなっと記入する。
昔読んだ異世界物のネット小説で魔王を倒した勇者は異世界に来た直後の時間にまで若返って元の世界に戻るって言う場面があった。
これはそれに近い、アレクサンドで何日過ごしても女神様曰くここに来るとこの三十二歳まで若返って元の世界、日本に帰れると説明された。
この掲示板に貼った日付と時間に戻ることになるのだ、ちなみにこのホームに来たときよりも過去には戻せないらしい。
まあ元からおじさんな僕の場合見た目にそう変化はないと思うのだが、それも何度も積み重ねると人より速く中高年になるからとネビウス様からの措置であるらしい。ありがとうございます。
お陰で長いときは一ヶ月位向こうに行きっぱなしの時もある僕だ。
書いた紙を掲示板にピトッとくっ付けると自然と紙は掲示板に貼り付いた。
『それじゃあ良き旅を、はじめ君』
「はいっそれでは行ってきます、ネビウス様」
少し待つと音が聞こえる。それは鉄道の音だ。
ここはホームなので列車が来る、それに乗って異世界へと行くのである。
…来た、列車は一両のみで色はオレンジ色だまさに田舎でたま~に走ってる列車って感じのが─。
空を飛んできました。ファンタジーだね~。
その列車はホームに近付くと僕の前、一応海面から見える線路の沿って着水(着地?)をしてザパァンと水飛沫を上げて停車した。
そしてドアが開く。列車の中には誰も乗っていない、ネビウス様が言うには私以外にこの列車に乗るヤツなんていないらしいので乗客がいないのはいつもの事なのだ。
田舎に一人旅気分である、まあ現在進行形で田舎に住む僕には田舎の良さとか言われてもよく分からないのだけどね。しかし異世界へ行くこの列車に乗る時は心なしかいつもワクワクしている。
心躍ると言う心境だ。
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