書き書き書きりんこ

エリー.ファー

書き書き書きりんこ

 小説を愛している人々がいる。

 美しい言葉を愛していると言える。

 時間の中で過ごすのがすべてであるとは思っていない。

 言葉は、想像であり、創造である。そこから生まれる世界に制約は存在せず、それは作り手側だけではなく、受け手にとっても同じである。重要なことばかり押し付け画はいけない、考えはうっすらと存在するくらいが丁度いいのである。

 味わうような言葉は廃れてしまったが、それは、社会の変化と共に存在使用する文化が持つ、宿命である。

 運命という言葉の温かさよりも、宿命という言葉の冷たさを自然と選び取る所に言葉が持つ、本質的な機能というものを感じてしまう。

 いや。

 これもまた、言葉を使いこなそうとする人間の性質と言えるのかもしれない。

 言葉のない世界は存在する。

 言葉を必要としない時間は生まれる。

 言葉とは幻である。

 けれど、本物であると願っている。

 祈ること以上に、人間が言葉にできることなどあるのだろう。

 打ち込んだ音によって、発生した音楽は、私たちを幸せにしてくれるのだろうか。この場合の私たちの中には、人間だけではなく、すべての命が詰め込まれている。

 そう、私たち。

 この短い言葉に、本来であれば抱えきれないほどの意味を詰め込めてしまうのだから、おかしな話なのだ。

 きっと、正解などないのだ。

 間違いしかない。

 これも、言葉だけがなせる技なのである。




「どうして、言葉を使うの」

「どういう意味かな」

「会話をするだけなら、言葉は必要ないはずでしょう」

「会話には付属品として言葉が付いてきます。けれど、そこに核を与えたのは人間の大きな間違いであると言えます」

「どうしたら、そういう問題を止めることができると思うの」

「問題ではないと思っています」

「それは、何故」

「私たち人間は、今日もそんなことに悩まなくとも会話をすることができ、言葉を使っているのです。重要という言葉の意味を、思考という言葉の意味を、問題という言葉の意味を、もう一度と作り直すべきだと思います」

「分からないではないけれど」

「きっと、もう少しで、人は今現在の自分の手の中にある言葉を捨てるようになるでしょう。そうしたら、また新しい会話の形式が生まれます。そうするうちに、私たちは自分を見失い、また新しい自分を作り出します」

「健全」

「そう、健全なんです。大切なことです」

「とっても好き」

「いっとう好き」

「そう、そういうこと」

「分かっていらっしゃる」




 ジャズを聞きながら小説を書き、そこから生まれる物語が、言葉の羅列なのか、意味を持った一つの提言なのか、考える。

 悩んだ頭には、新しい手がかりが必要だが、残念なことに、意味を付け足せば無粋になってしまう。

 皆が、おなじ方向を向く必要は全くない。

 誰もが知っていて、誰もができない。

 興味のないものが打ち捨てられる。

 そうして、簡単で、洗練されたものだけが、残る。




「もう少しで言葉をつかめるかもしれない。いや、ただの勘違いかもしれない」

「やりましょう。挑戦を続けましょう」

「もし、失敗したら、どうすればいい」

「失敗すると思っているんですか」

「少しだけ、不安になっている」

「あなたが知らないだけで、もう成功しているんですよ。そして、この成功はすべての視界に映っています」

「分からない」

「もうすぐ分かりますよ。いや、もう気付いているくせに分からないふりをしているとか」

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