骸骨のエキストラ

絃琶みゆ

骸骨

 まるで、夢を見ているかのような感覚……。

 いや、夢に違いない。

 そうでなければ、この世の全てがおかしいことになる——。


 僕が目を覚ましたのは、自分の家の、自分のベッドの上。掛け布団が微妙な薄さだから、たぶん季節の変わり目。夏から秋だと思う。


 この目覚めは、もう何十回も繰り返されている。


 ゲームでいう、リスボーン地点のようなものだと把握している。


 一階に降りて、すぐ洗面所へ向かう。自分の姿を鏡で見て、心底ホッとした。

 映っていたから。


 そのまま顔を洗ってスッキリした後、母のいるダイニングに向かうと、やはり——。


 記憶の中の母は優しく微笑んで「おはよう」と言ってくれるはず。だが、ここにいる母は、表情なんてない。

 古いレコーダーの音みたいに、くもった声で


「おはよう」


 と言うのだ。


 僕は引きつりながら、頑張って口角を上げて、「おはよう」と返す。


 いつもならここでにこっと笑うところなのだが。


 いつからかわからないが、僕には僕以外の人間が、骸骨に見えるようになってしまった。まるでレントゲン写真が三次元になったような。

 これが夢なのか、夢であってほしいのか、わからない。


 ただ外に出れば骸骨たちが行き交っているのだ。あっちもこっちもどこへ行っても彼らは付き纏ってくる。視界に入らないときなんてない。


 ただ、鏡に映る僕は間違いなく人間で、僕以外に、まともな人間はいないのだった。

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