異世界のカメラマン

まめでんきゅう–ねこ

第1話 カメラマン生活の始まり

「すみません。この異世界はどんなところなんですか?」

「え……、えっとですねぇ。…………素晴らしい異世界ですよ⁉︎」

「あ、はい」

ここ天啓の間は、転生先の異世界を決める場所なのだが、残念ながら異世界の素晴らしさが全く伝わってない。

「あのう、元の世界には戻れないんでしょうか?」

「え⁉︎あ、いえ、できます」

「あ、じゃあ元の世界でお願いします」

「いやでも、異世界だってすごい場所なんですよ⁉︎チート!ハーレム!スキル!らへんが使い放題なんですよ⁉︎」

「僕は平凡な生き方がしたいんですよ。チートもいりません。自分に合った生き方ができるだけでそれもチートですよ」

「そ、そうですか。…………でも異世界なr」

「どうしてそんなに異世界を推すのですか?」

「え⁉︎いや、その、いえなんでもありません!元の世界ですね!かしこまりました。いってらっしゃいませ」

死神はドアを開けると、転生者は入っていった。

「死神No.369!また失敗したのか。全く。君のセールストークをもっと良くしなさい。

「それは承知してるんですけど、なんというか……、さっきの人普通にいいこと言ってたじゃないですか。なんだっけ?良い生き方するだけでチートだとか?」

「覚えてないのかよ。まぁいい。どうにかして異世界へ転生させなければ、異世界の人口密度が低くなってしまう」

最近異世界転生したがらない人たちが多く、異世界の人口密度が低くなってきているのだ。

ここ天啓の間がある場所、天界はこれまでに多数の売り込みをしてきたのだが、なんの成果も出せてない。

「うーん、ほかに何かいいアイデアがないだろうか?」

「……そうだ、カメラマンてのはどうですか?異世界の写真を撮って、写真集作るんですよ」

「ほう、それはいいアイデアだ。しかし異世界なんて、草原とか砂漠とか雪山、森とかが当たり前のようにある場所だからな。不便に感じられるかもしれない」

「なら異世界の動物を撮りましょう。きっと興味を持ってくれるかもしれません」

「なるほど、それはいいアイデアだ。早速上へ言ってくる」

「って、それじゃあ上司のアイデアってことになっちゃうじゃないですか!」

「いいじゃん別に」

彼女は不機嫌そうな顔をすると、上司は言った。

「じゃあ、お前が写真撮ってくるか?」

「え⁉︎」

「それなら、お前の手柄となるだろう?」

「いやでも私、写真撮ったことないんですよ!修学旅行もカメラなんて撮ったことないし……」

「いいだろ別に。じゃあ言ってくるから、先行ってて」

「あ、結局ついてきてくれるんですね」

「いいや、今大変なことになってるしOKしてくれるだろうと思ってさ」

「え?」

「はいカメラとあと色々入ったポーチ。頑張ってきてくれよ」

死神No.369はドアの外へ押し出された。

「……えぇ、なんで私1人で…」

この時上司は何か悪意があったわけでもなく、単なる不器用なだけなのだ。許してほしい。

こうして死神No.369のカメラマン生活が始まった。

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