俺の身体がおかしいぞ。

「おかしい。やっぱりおかしいぞ…」



 朝、目が覚めると全身が怠いし、重い。日に日にそれが増していくのがわかる。



 「身体が重いな…くそ、本当に出来てやがる」



 鏡を見れば、昨日清春に言われたとおり、目の下に薄らクマがある。ちゃんと寝てるのに、何故だ。つーかお前以外誰も気付かなかったぞ。相変わらず気持ち悪いやつだ。


 最初はちょっとした違和感くらいだった。

 そうだ、風邪か何かだと思っていた。



「これは、もう気のせいじゃない。何か起きてる」



 もしかして、誰かが俺を攻撃してやがんのか。


 学年一位。サッカー部次期キャプテン。お飾りだが生徒会副会長。妬みを十分に受ける肩書きだ。


 だが品行方正、清廉恪勤に見えるようにずっと努力してきた。


 こんな馬鹿な真似してくれたのは誰だ。いや、そもそもそれは無いか。



「───理不尽。……ちッ、駄目か…眠ってやがんのか…?」



 俺がそう名付け、呼び、答え、魅了する悪魔。


 理不尽な同士、理不尽。



 それにしてもここ最近おかしいな…いるのはわかるが…


 玲奈あたりからこいつの声が聞こえにくくなった。そして三日前にはまったく反応しなくなっていた。


 それに合わせて俺の性奴隷グループのチャット蘭が少し沈黙し出した。いつもならどんなシチュがいいか、順番はどうするか、ローテーションはどうだとかで鬱陶しいくらい揉めてたくせに。


 最初は…それも玲奈がグループに馴染んでからか…あいつのせいか? いったいなんなんだ。


 「今日も玲奈と…なんだ…次は京子もか…」


 この二人から朝の挨拶がない。

 だが俺からメッセは投げれない。


 もしこの悪魔が去ってしまったらと、主と従、これは徹底してきたからな。


 帰りに…京子の家にでも行くか?

 いや、それは駄目だ。


 しかし、いったい何人生贄にすりゃ自由に使えるようになるんだ、こいつは。だいたいこういうのは使えば使うほど強くなるもんだろ。どれだけ奪わす気だ。


 ああ、次は…大島理森待ちか。清春のノロマめ。早く付き合えよ。認めたくねぇが、お前はモテるんだ。


 でも、あの感じは長く友達してからで、すぐには駄目なやつか。


 絵子の時を思い出させやがって。

 ムカついてくる。


 この悪魔の厄介なところは誰にでも効くわけじゃない。


 清春。あいつにだけの理不尽ってだけで、だからそう名付けた。


 絵子と清春は本当に理不尽な目に合わせてくれたからな。


 そんな時に理不尽に出会った。


 だから理不尽に引き裂いてやった。



『何を…何が………ぇ…? 何で大輝が…何…してんの…嘘、嘘、裸…なん、さっきまで清春くんといたのに! なんで! いやぁ! やめてぇ! 見ないで! 離して! 離せ! このクズ! おじさんに言うから! 清春くん! 助けて! 清春くん! あ、やめて、やめて、嘘だよね、嘘でしょ、大輝…やめてやめてやめて…いやぁぁぁぁあぎぃッッ!! …あ、あ、あ、あ、清春くんの、な、の、にいぃぃ大輝大輝大輝ぃ! お前は殺す殺す殺してあぎゅあぁぁぁ……いだい、いだいよぉ…清春…く…ん…エコ…大…好きだよぉ…ごめ、んね…ごめん、ねぇ…』



 以来、清春の女を根こそぎ寝取ってやった。合意は無いから正確には違うがな。


 最初は面倒な仕様だと思っていたが、なかなか良い仕組みじゃねーか。


 挿れた時だけ正気に戻るなんてよ。



「くくっ…痛快だったぜ。今思い出し、て、も……? いつもならここでググっと持ち上がんのに……?」


 そういえばムラムラもあんまりしないな…


 こんな時はだいたい桐花が察して、尻を差し出してきたってのによ…まあ、尤も最中は決まって清春に助けを求めるからな。


 毎回飽きないな、あいつら。


 おかげで変な性癖に目覚めちまったじゃねーか。清春の絶望顔見ねーと最高にイケなくなっちまったじゃねーか。


 笑っちまう。いや笑えないか。


 ああ? もしかして、こういうのは力溜めてるパターンか? 次のレベルアップまでの一時的な弱体化、あるだろ。


 それに例え何かあっても逃げないだろ。スマホの中のあいつらはただの性奴隷にしか見えないしな。満面の笑顔だから、否定しようがねぇ。


 奴隷の歴史なんてもんはこの国にはねぇ。んなもん勉強すりゃあ誰だってわかる。異教徒を断罪するのもそりゃ当然だ。何せ隠れて輸出してたんだ。怒るだろ、普通。


 ましてや性奴隷なんてもんもねぇ。そもそもどんだけアホっぽい単語なんだよ。俺の性奴隷にしてやる! って使うのか? 真剣にバカかそいつ。それに誰が作るんだ、そんな言葉。


 まあ、便利だけどよ。俺みたいな悪魔が憑いてるやつが使うなら良いが、その他のやつは使うなよ。


 わかっていない、ただのバカ晒すからな。


 それにしても、人がモノだったとか本当に大陸文化は狂ってんな。


 だがそこがいい。


 その価値観、俺も好きだぜ。


 堅牢な城塞都市なんて、略奪されないため、奪われないためだ。壁にそれ以外の意味はねえ。


 それに扉の開く方向がそもそも簡易バリケード仕様だ。この国じゃそんな風に考えて扉なんてつけねぇ。


 だから俺に対して外開きで壁のない清春はいつも奪われるだけだ。一番入れちゃ駄目な略奪者なのによ。いつでもウェルカムだ。


 しかしいつも思うが、あいつ、奪われてばかりなのになんで平気なんだ?


 この国と同じで狂ってるだけか。



 まあいいか。それにしても、本当にこの悪魔は、かかッ、俺とは相性ぴったりだぜ。


 だから早く付き合え、親友清春。


 だから早く目覚めろ、理不尽な同士。


 俺以外に理解あるマスターは、いねえだろ。

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