日付変更戦線

おぎおぎそ

第1話

 太陽の力をまとった巨大な火球が、倒れている俺にとどめを刺さんと迫ってきていた。


翔馬しょうま君‼ 動けますか⁉ ……いえ、動いて‼ 意地でも動いてください‼ 逃げないと‼ アレを喰らったら今度こそもう……‼」


 《紀装きそう》をしている俺の内側でささめが大声を上げていたが、いくら喚いたところでどうしようもない。あれだけ強い力の前では凍てつくようなアーマーでさえ無力。身体もボロボロで今はもうまともに動けもしないのだ。ゲームセット。試合終了だ。


 焦げ臭い匂いが充満する。熱を伴った空気のせいで呼吸をするのも苦しくなる。

 目の前でなおも膨らみ続ける火球のせいで目がしみるように痛い。眩しさと熱さで火球を直視することさえ困難になっていた。


 微かな視界を覆うように揺らぐ焔。胸を支配する無力感。


 ……あの日と同じだ。


 俺は、俺はまた何も助けられないのか。


「……馬君……」


 たった一人の弟を。

 その存在していた記憶さえも、記録さえも。



「……翔馬君……」



 ――守れないのか。



「……翔馬君‼ 動いて‼」

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