破滅の刻印

絵馬

第1話 人を愛さない勇者

ユウシャ様。

それが僕の代名詞だったのは5年前だ。


今はさしづめ指名手配犯と言ったところだろう。

それも、王女殺害の容疑となれば救いようがない。


でもこれで良かったのかもしれない。

今の僕は、こうして森の奥で一人、夜空を見上げられているだけでも感謝すべきだろう。


本来なら僕は死ぬべきなのだ。

この世に居てはいけない存在なのだ。



...この刻印が右手にある限り。

僕が愛した者はすべて”破滅”してしまうのだから。



ガタッ

寄りかかっていた木の後ろから突然物音が聞こえる。


「見つけたぞっ」

振り向くと、王国の腕章を身に着けた騎士団が数名視界に入る。

だが、距離にして数十メートルは離れているだろう。


なぜ僕の居場所がバレた?

そしてなぜ今更追ってきた?

もうあの事件から5年は経っている。


だからといって王国に許されたとは思っていないが、一度たりとも追手に居場所がバレたことはなかった。

今更追手などあり得ない。


ドンッ


思考を巡らせていると、後ろから爆発音のようなものが聞こえる。

今度は何だ???


そして、それと同時にすごい速度で僕の真横を走り去る少女が目に入る。


と、思いきや急ブレーキして、こちらを見て言う


「おじさんこっち」


おじさん、そうか。もうそんな歳に見えるのか。





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