第15話

「師匠は、私に夢を叶える権利を与えてくれたんです。」


「あの日、私は初めてイラストレーターを発掘するためのコンクールを見つけ、作品を応募しました。結果はもちろんダメでしたが・・・」


「しかし、結果と共に送られてきたのは師匠からの提案でした。『私のアシスタントをしてみませんか?』と。そして私は師匠の提案を受け入れ、アシスタントになり、イラストレーターを目指すことができたのです。」


「良い人ですね、千夜先生は・・・」


「はい、とっても。」


彼女は静かに微笑んでいた。


「まあ所詮はアシスタント、まだまだ半人前ですけどね・・・」


「そんなことないですよ、あんなに上手かったんだから絶対にプロになれますって!!」


「そうですかね?」


「知ってました?よく思考は現実化するんですよ、できると思ったらできるようになるしできないと思ったら一生できないままなんです。」


数年前、塾の先生に言われた言葉だ。

確か有名な本のタイトルらしい。


「そうですよね、師匠も似たようなことを仰っておりました。」


「やっぱ千夜先生良いこと言いますね。」


そんな感じで俺と花園先生は自分たちの夢について語り合っていた。


一方その頃、一人の女子高生が玄関のドアを開けたまま立ち尽くしていた。


「誰なの?!この靴!!!私とお兄ちゃんの愛の巣に踏み込むなんて・・・・」


そう、天舞音だ。


私が扉を開いたとき、そこには二つの靴が置かれていた。


片方はお兄ちゃんのもの。


もう片方の靴の所有者を私は知らない。


靴の大きさからして明らかに女性のもの。

そしてなによりこれは学校指定の靴だ。


もしかして、お兄ちゃんの彼女?!


まさか、いや、そんなことはない。


彼女いない歴が年齢であるお兄ちゃんに彼女なんて、できるはずが・・・


いやしかし、まさかの事態が想定されないこともない。


うん?!


お兄ちゃんの部屋の方から物音?!


これはまさか・・・ヤってるの?!


マズいマズイマズイ・・・・

お兄ちゃんの初めては私がもらうつもりだったのに・・・・


ここは、お兄ちゃんの部屋に突撃するべきなのか・・・


うん、お兄ちゃんの健全な学生生活のためにも・・・・・行くか。


私は恐る恐る階段を上っていく。


だんだんとお兄ちゃんの部屋が近づいてきた。


また話し声がする。


しかし、急に突撃するのもどうだろうか?

お兄ちゃんからすれば大事な場面だろう。


なら、偶然を装うのはどうだろうか?


私は脳内でシミュレーションを行う。


いける。これなら!!


私は静かに深呼吸をしてからドアを開ける。


「お兄ちゃんただいま~!」


「お帰り!天舞音、帰ってくるの遅かったな。」


え?!


確かに女の子はいる。

けど、ヤッてない。


私はやっと胸をなでおろすことができた。


いや、まだ問題を解決できていない。

あの私に引けを取らないくらいの美少女は誰?


「ところでお兄ちゃん、その子は?」


「あー、この人は花園先生、この前も話したろ。」


「あーね、花園先生ね。それじゃあちょっと私用事あるから!」


そう言って私は勢いよくドアを閉めて自分の部屋に飛び込んだ。


「あーもう、びっくりしたじゃん。今のお兄ちゃんに変に思われてないかな・・・?」

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