第8話

俺は天舞音に連れられるがまま家電量販店の近くのショッピングモールに行った。




まず天舞音が向かったのは最近流行りのアパレルショップだった。


そこで天舞音は気になった服を何着か見つけたらしく、すぐさま試着室に直行した。


「わ、わかってるとおもうけど覗かないでね!!」




「覗くかよ、シスコンじゃあるまいし・・・」




少しして天舞音が試着室から出てきた。




彼女が着ていたのはブルーのノースリーブワンピースに白のワイドパンツ、高校生1年生ながらも大人な雰囲気を醸し出す彼女に俺は圧倒される。




「ど、どうかな?」




「に、似合ってるんじゃないか?うん、めっちゃ可愛い!」




「そ、そう?よっし!」


そう言って彼女は小さくガッツポーズをした。


そして彼女はもう一度試着室に戻り,今度は黒のTシャツにベージュのワイドパンツの組み合わせ。


さっきのコーデとは打って変わってボーイッシュな雰囲気だ。




「こっちはどうかな?」




「うん、そっちも良いんじゃないか?」




「そう?じゃあどっちが良かった?」




「それは難しい質問だな、正直俺はどっちも良いと思うんだが・・・」




「じゃあどっちも買う。」




そういって天舞音はレジに向かう。




「じゃあ次のお店行こ!」




「え、まだあるのか・・・」




次に俺たちが向かったのはオシャレなカフェだった。


天舞音が注文したのはカフェモカとスコーン。




それらが届いた瞬間彼女はスマホを取り出し写真を撮り始める。


おそらくSNSにでも投稿するのだろう。




少ししてから俺が姫乃琴音のツイートを確認するとすでにその写真は投稿されていた。


さらにいいねやリツイートの数もすごい・・・




「ひとつ質問いいか?」




「どうしたの?」




「いやーそのーどうしたらSNSのフォロワー増やせるのかなって思ってさ。」




天舞音は少し悩んだようだが短く結論を出した。


「それはもう人気と直結じゃない?SNSだけでバズることもあるかも知れないけどそんな人ごくわずかだし・・・ある程度人気出てきたら少し面白いツイートして新しいファンを獲得するっていう戦略もあるかな?」




「やっぱりそうか・・・」


一口に人気を上げると言ってもそれには過酷な道のりが続いていることを俺は誰よりもわかっているつもりでいた。




俺が難しい顔をしているのに天舞音は気づいたみたいで俺に声をかける。


「少し・・・飲む?」




おそらく聞き間違いだろうと思って「え、なんて言ったんだ?」と言おうとした時には天舞音は俺に向かってカップを差し出していた。




ストローは1本しかない。


これはもうお約束というものだ。


間接キス・・・


まあしかし俺と天舞音は兄妹、普通の兄妹はそんなことを気にするだろうか?いやおそらくしないだろう。


ここは天舞音の厚意を受け取るべきだ。




「あ、ありがとう。」


そう言って俺は天舞音が咥えたストローでカフェモカを飲む。




なんとも言い難い甘さがそこにはあった。


おそらくめちゃくちゃおいしいのだろうが変に緊張しているせいで舌が正常に味を感知してくれない。


さすがに一口飲むだけに留めないとマズイと思ったので俺はすぐにカップを天舞音に返した。




天舞音に関しては俺と違って動揺した様子はなく、平然とカフェモカを飲んでいた。


俺が咥えたストローを使って。




これが兄妹というものだろう。


俺はそう自分の中で納得させた。




天舞音がカフェモカを飲み終わった頃には、もう夕方の6時を回っていた。




「もう遅いし帰るか?」




「うん!!」


天舞音は十分満足したようだ。




帰りの電車の中、俺は天舞音に今日買ったマイクとウェブカメラを使ってテスト配信をすると約束した。




俺は家に帰るとすぐに夕食を食べ終え、マイクとウェブカメラのセッティングを行う。




特に問題はないようなので俺はPCの向かって座る。




天舞音からのメッセージが届く。


『配信ちゃんと見てるからね!!』




ああ、もう大丈夫。


二度と音割れなんてヘマはしない。


このマイクがある限り。




そう、ここからが影人闇の新たなスタートだ!!!

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