第2話
夜が明け、強い日差しが窓から照り付けられる中、俺は暑苦しい思いをしながら目を覚ました。
時計を見る・・・・朝7時30分!?
ヤバいと思った頃には俺はクローゼットから制服を取り出していた。
着替え終わった俺は、朝食のためにキッチンに向かう。
食卓についたとき、俺はあることに気づいた。
「母さん、天舞音はもう起きたのか?」
「え、まだだけど・・・」
母はキョトンとした感じで答えた。
「母さん、今すぐ天舞音を起こさないとあいつ遅刻するんじゃないか?・・・・」
俺はなぜ娘を起こさなかったのか問い詰めた。
「えー、ちょっとぐらい良いじゃない、あの子はあなたとは違って配信頑張ってるんだし。思春期の女の子に無理させるのも悪いわ。」
「別に俺は頑張ってないわけじゃないからな!結果がまだ伴ってないだけだ!!」
「はいはい、わかったわ。」
母はその言葉を最後にキッチンから姿を消した。
それから俺は急いで妹の部屋の前に来た。
ノックをしたが返事は無い。
「おーい、開けるぞ!!」
そう言って俺は妹の部屋の中に入った。
部屋は特に散らかっているわけでも、綺麗に整理整頓されているわけでもなく、ただただ普通の女子部屋って感じだ。
一つ違和感を感じるのは部屋の中に二つの机があること。
一つは普通の勉強机だがもう片方はほとんど配信関連の物で埋め尽くされている。
天舞音は配信用の机で爆睡していた。
おそらく作業中に寝落ちしたんだろう。
「天舞音、起きろ!!もう学校行く時間だぞ!!」
「え、
寝ぼけながらも彼女は立ち上がってクローゼットに向かった。
俺は安心して妹の部屋から出て行った。
数分後、天舞音は制服を着て食卓に現れた。
しかし、ゆっくり朝食を食べてる余裕は無い。
「今日は走るよ、お兄ちゃん!」
そう、たまに彼女は食パンをくわえながら駅までダッシュするとかいうまるで少女漫画で良くありそうなことをやってのける。
まあたいてい俺のスピードについて行けず、途中でゼーゼー言うのがオチなんだが・・・
もちろん今回も300メートル先の駅まで行くのに全力ダッシュをすると、200メートルくらいで妹は疲れ果ててしまう。
「ちょ、ちょっと待ってお兄ちゃん・・・・しんどい。」
「まったくしょうがない奴だな。まあ電車の時間まであと2分あるからこの距離からだったら歩いても大丈夫そうだな。」
そう言って俺と妹は駅まで一緒に歩いた。
電車に乗ってからは一緒じゃない。
電車に乗ると互いに親友と会うからだ。
「よー雄馬!昨日の配信どうだった?」
声をかけてきたのは俺と同じクラスの
彼は俺の妹である姫乃琴音の大ファンである。
スパチャした金の合計金額は十万を裕に超えるらしい。
しかしながら天舞音は未成年。
もちろん彼女は銀行口座を持っていないのでスパチャの収益は俺たちの両親の口座へ直行する。
さらにそれが俺のお小遣いにも還元されるのだ。
ありがとな、村松・・・
「お前、昨日の配信内容知ってて聞いたろ・・・」
「悪い悪い、てかさー、お前昨日の琴音たんの配信見たか?」
「あー見たよ、で?」
「お、お前朝っぱらから機嫌悪いな・・・まあその雑談中にさ、ついに琴音たんに兄貴いることがわかったわしいぜ!!まったく、羨ましい限りだぜ・・・」
「隆は兄貴欲しいのか?」
「は?違うわ!!欲しいのは兄貴じゃなくて妹としての琴音たんだ!!!琴音たんが俺の妹だったら・・・・・(ここからは村松の激しい妄想が続くので省きます)」
「そ、そうか・・・」
実の兄からすればこういうガチ恋勢は恐怖の対象なのだが・・・今回は我慢しておこう。
「まあ妄想はほどほどにな・・・」
電車が学校の最寄り駅に到着したので俺たちは電車から降りて学校に向かった。
俺たちが通っているのは私立
いわゆるなんちゃって進学校とかいうやつで、毎年最難関国立大学に20人前後合格しただけで自画自賛するような学校だ。
俺は高校2年生だが成績は中の上、なんだかんだ国公立大くらいは目指したいというポジションだが、正直大学進学というものにあまり興味がない。
授業が始まったが、昨日の配信の疲れと眠気により、まともに集中できなかった。
そして迎えた昼休み・・・
「なあ雄馬、今日のお昼、一緒にどうだ?」
「ごめん今日はパスだ、昨日の配信のせいであんま眠れてないから寝る。」
俺は村松の誘いを断った。
数分して俺の背中がつつかれる。
何があったのかと後ろを振り向くと天舞音が立っていた。
「ねえお兄ちゃん、今日お昼一緒に食べない?」
「悪い、今ちょっと眠いんだ。」
「それならこれでも飲んだら?」
そう言って天舞音は俺にカフェインだらけのエナジードリンクを手渡した。
「配信者御用達のやつだからこれ飲んだら半日は眠れなくなるんだよ!!」
これを日常的に飲んでいるということはおそらく、妹はカフェイン中毒者だろう。
せっかく妹から貰ったので俺はそれを飲むことにした。
味は悪くなかったが、飲んだ後の自分が怖かった。
「じゃあお兄ちゃん、お昼食べに行こ!!」
天舞音は俺の手を引っ張って来た。
「わ、わかったからその手を放してくれ・・・」
俺は渋々天舞音と昼食をとることを承諾し、学食へと向かった。
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