第2話 霊能者
待ち合わせは〇〇線〇〇駅からちょっと歩いたところにある駐車場だった。その駅は都内の市部だったから、自宅から電車で1時間くらいかかってしまった。ちなみに俺は23区に住んでる。俺が改札を出ると同じ方向に向かって、オタクっぽい男たちがぞろぞろと歩いて行く。値段が高いから、若い人もちょっとはいるけど、1人参加がほとんどだった。
バスの入り口で、名簿を持った運転手が乗客の名前を確認している。
座席は決められていた。俺は車に酔うのだが、たまたまラッキーなことに前の方だった。
俺が乗った時は、すでに何人かが自分の席にいた。
参加者は20人くらいしかいないが、大型の観光バスでも借りるのでも、10万くらいだろうから、取り敢えず儲かっていそうだ。それにしても、霊能者のAさんはいくらもらってるんだろうか。それにバスガイドが付いているし、けっこう豪華だ。バスガイドはおばさんで、さすがに喋りがうまかった。
「本日は〇〇観光のバスツアーをご利用いただきまして、誠にありがとうございました。満員御礼の大盛況で、従業員、大変びっくりいたしました。みなさまのご安全をモットーに、安全運転に務めてまいります、運転手は荊木。ガイドは私、久保田美奈子がお届けいたします。こういうツアーですから、後輩たちはみな逃げてしまって、乗務員歴35年の私、久保田美奈子が指名され、本日、皆様に同行させていただきます。
本日のツアー先は、本当に怖い、いわくつきのスポットばかりです。私が長い間、バス業界にいて、あそこはやばいよ。夜は通らない方がいいよ、なんていうような所ばかりがリストに入っております。皆様、そういうのがお好きですよね。私も、まさか自分が行くとは思いませんでした。今日はバスの中からだけでなく、降りて直にご覧いただくお時間も取っております。どうぞ、心おきなく、近付いて、触って、何かいたら背負って帰って来ていただければと思います。こちらには、霊能者の水巻先生もいらっしゃいます。除霊が必要だったらしていただけるということですので、心おきなく、霊と戯れていただければと思います。38,000円ですからね。普通のツアーで、こんな高額なツアーはないですからね。前あったのは・・・ちょっとやめておきます」
きっと、芸能人とのバスツアーだろうと思った。セクシー女優とのツアーは10万以上した。よく考えてみると、幽霊が出なかったら、無駄金だ。セクシー女優のツアーの方にすればよかったと俺は思っていた。ツアーと言っても露天風呂でヌード撮影会があるというだけだが。俺は霊とは関係ないことを考えていた。
俺の隣の席にいた人が通路から身を乗り出して話しかけて来た。
「あの霊能者、水巻先生じゃないですよ。ほら、写真と全然違う」
俺はその人が差し出したスマホを見た。
「あ、ほんとだ・・・」
本物は70代くらいの品のいい白髪のおばさん。目の前にいるのはかつらみたいに黒々とした髪をしていて、かなり庶民的な感じがした。俺は何となく、そのバスツアーに不安を感じた。
「どうですか?水巻先生。今日は幽霊、出そうでしょうか」
「もうここにいますよ。みなさんには多分、見えないですけどね」
「どこに霊がいるか、乗客の皆さんに教えていただけるんでしょうか」
「ご希望があれば・・・でも、怖いですよ。知らない方がいいかもしれませんからね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます