第3話 ランドセルについて
「俺のランドセル選びは失敗やったと思うねん」
「何やねん、急に」
「いや、昨日可愛いカバンを見つけて買おうとしてんけどな、その色が昔持ってたランドセルと同じ色やってん」
「ああ、あの一目惚れしたピンクね」
「それに気づいた瞬間、小学校時代の苦悩が脳裏に蘇って」
「え?めっちゃ気に入ってたやん、あのピンク」
「いや、あの色は好きやってん。どストライクやってん。でもある日気づいてしまってん。自分が全身ピンクマンになってしまっていることに」
「………あ〜。あんたピンクの服多かったもんな」
「そう!ランドセルを選ぶ時点では何も考えず好きな色を選んだけど、コーディネートの極意は引き算!ピンクのランドセルを引き立てたければシンプルな服装を!ピンクの洋服が着たければベーシックな色のランドセルを!これが真理!」
「それでランドセル選びが失敗やったと言いたいんやな」
「目の前のピンクの服を諦めることなどできず、かと言って色んな色の服を買ってもらうなんてできず。いっそ壊れたら新しいの買ってもらえんかとランドセル振り回しまくってたわ」
「小学校時代のあんたの奇行にはそんな原因が。で、その教訓を活かして昨日見つけたピンクのカバンは諦めたと」
「うん。そうやねん。そうやねんけどな。今日もっかい見に行ってから決めよっかなって………」
「今までの話はなんやってん」
「ダメやと思ってても抗いきれん事もあるのが人間!」
「開き直った!」
「そう言えば、お前はなんでランドセル赤にしたん?」
「話はぐらかした!そやな、服がモノトーンのもんばっかりやったから、ランドセルは差し色になるもんをと思って」
「何気にトータルコーディネートのことをきちんと考えてる。なんか悔しい」
「けど服装から男やと思った通りすがりの人に『男の子が赤いランドセル背負てるわぁ』言われたことは何回もあったけどな」
「その人らはお前が女やと知ったらなんて言うんやろな」
「さあ?『女の子ならもっと女の子らしい格好しろ』とかちゃう?」
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