闇に呑まれた世界の英雄譚

アマルテア

NO.1 光

かつてこの世界は全てを闇に覆われていた。


その闇をはらったのは、


平凡な一人の少女だったという。




青い空。


地上に太陽の光が降り注ぐ。


その緑で溢れかえる土地には


一つの村があった。


その村の中心にはシンボルである噴水があり、


その噴水を囲む石垣にもたれかかって座る


一人の青年がいた。


年齢的には男性というのが相応しいが、


年齢よりも若々しく、


爽やかな青年のような顔をしている。


その青年の手には本があり、


彼の視線はその手元の本に注がれていた。


「お兄さん、『えいゆう』さんのおはなし聞かせて~!」


「聞かせて聞かせて~」


その青年の周りに、


村の子どもたちが集まる。


青年は本を閉じ、


集まってきた村の子どもたちへと目を向ける。


「良いよ。『英雄』さんのどの話が聞きたい?」


「さいしょから~」


「はじめから~!」


子どもたちの言葉に青年はクスッと笑う。


「また最初から?」


子どもたちへ確認するように


青年はそう問いかける。


「だって、すきだもん!『えいゆう』の話!」


「しょうがないじゃーん」


「もういっかいだけ!」


青年は困ったなと眉をひそめる。


だが、諦めたように息を吐き、


手で持っていた本を


彼の体の横に置いた。


そして、青年は語りだす。

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