第22話 オリビア王女の差し金


翌日目が覚めるとこれからの事を考え顔を洗うと貴族服にそでを通し気合を入れていく。

そしてみんなで食事前に前日打ち合わせをした事の再確認をすることにした。


「ターブ準男爵は俺と王女様で対応するから、使用人たちはアリサとケイコ、それと女神様で対応してほしい。それと女神様は絶対素性を明かしてはいけません、イージ子爵領の時のように大騒ぎになってしまいますからね、あくまでもうちの客人としてふるまってくださいね」


「「「はい」」」


確認が終わると俺たちは食事をとるため客人用の食堂に向かう。

食事が終ろうかという頃に何やら館が騒がしくなって来た。


「何だろう?使用人が騒がしくなってきたな」

「もしかして今日私たちがすることがばれたとかないですよね」


ケイコが聞いてきたが、使用人たちが話す内容がちらほらと聞こえてきてどうも来客があるようだった。


「そうじゃないみたいだな急な来客が来るので慌てているようだな多分先触れがやってきて迎え入れる準備に入ってるのだろう」


使用人の動きから見ると貴族が来るのだろうと推測できた。

貴族というのは承認欲求の塊のような人が多い、そういう貴族たちは街に近づくと先触れを出し訪問を伝えて大げさに歓迎してもらおい満たすものだ。

俺の場合は目立ちたくない、それに歓迎されるのになれてないというのもあるからそんなことする気も無い。


「とりあえず俺たちもターブ準男爵について迎えた方がいいかもな」

「私たちも出迎えるんですか?」

「ああ、こうして先触れを出すって事は上級貴族の可能性があるからな、下級貴族の俺でも顔を出しとけば相手は満足するもんなんだよ」


食事の片づけをアリサに任せると俺とケイコとパルミール女神様でエントランスに向かう。


エントランスに着くと、手の開いている使用人が整列をしていてオリビア王女が玄関前に立っていた、その横にはターブ準男爵も居た。


「なんだお前らもご機嫌取りか?」


俺たちはターブ準男爵の後ろに立つと、振りかえった準男爵がふんと鼻を鳴らすと、一言言って前を向く。


誰が来るのか聞きたかったがこの態度を見ると無駄だろうなと黙って待つことにした。



しばらく待つと門の前が騒がしくなり、すぐに門が開かれ馬車が数台入ってきた。

馬車に描かれた紋章を見て俺は驚いた、王族の紋章が描かれた馬車とミリア王女の紋章が描かれた馬車が入って来るのだ。


『なんでミリア王女が??』


そう思ってオリビア王女を見ると、王女はちらっとこちらを見て口角をちょっと上げて頷き前を向いてしまった。


『オリビア王女の差し金か、そういえば昨日「今日になれば・・・」と言ってたな』


そう思いだして、なるほどなこういう事だったのか、とケイコと女神様を見ると二人もにやけたような笑顔を浮かべていた。


俺たちの前に馬車が止まると、降りてきたのはミリア王女ともう一人、第一王位継承者で第一皇子のヘントン王子だった。


「これはこれは、王子様と王女様、こんな辺境迄ようこそおいでなさいました。おつかれでしょう、ささこちらへ」


ターブ準男爵は腰を低くして手を擦りながら王子たちを館の中に案内しようとしていたが、王子たちはそれを無視してオリビア王女の元に行き挨拶をしてから、俺たちの前に来た。


「君がアブド男爵だね、ミリアから聞いていた通りの見た目だな」

「王子様自らの挨拶、ありがとうございます」

「そんな堅苦しい挨拶は要らないよ、妹たちが世話になってるんだ、お礼を言うのはこっちだよ。それに君とは色々と話してみたかったし、まあそれはこの件が終わった後でってことで」


王子様はそう言うと軽く手をあげて振り向いて王女様とターブ準男爵を連れて館に入っていった。

俺たちは我に返りあとに続いて館に入ると、後ろから使用人たちもぞろぞろと入ってきて各自持ち場に散っていった。


「俺たちはとりあえず部屋に行こうか」


ケイコと女神様にそう言って部屋に向かおうとすると、王子様に呼び止められた。


「アブド男爵、どこに行くのかな?君はこっちだよ、後ろの二人もね」


そう言う王子の笑顔が何やらいたずらを企てている子供の笑顔のように感じたのは気のせいだろうか。

それにどこかで見たような・・・とも感じた。


ターブ準男爵に案内される王子様と王女様の後ろから俺たち三人がついて行く。

そして案内されたのは館で一番大きくて豪奢な部屋だった。

見渡すときれいな宝石がちりばめられた置物など高価な物が飾られており、中央には立派なテーブルに座り心地のよさそうなソファーが置かれていた。


王子たちが席に着くと俺たちはターブ準男爵の後ろに向かうと、


「アブド男爵はこっちだ」


王子に言われて王子様の座るソファーの後ろに向かうが、なぜか王子の隣に座らされた、・・・何でおれここに座らされてるの?

驚きと緊張から固まった俺の事を隣に座っていたミリア王女がクスクスと笑っていたが全く気付かなかった。


ターブ準男爵と王子様たちはしばらく挨拶と世間話をしていたようだったが俺は緊張から上の空だったがある程度落ち着いてきた頃に、終始笑顔だった王子が真面目な顔をしたと思ったら本題を切り出した。


「さて今日の本題に入ろうか」


その言葉で部屋全体の空気が一瞬で変わるのが感じられた。













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