第15話 王城からの召喚
数日後、ミリア王女殿下はオリビア王女殿下を匿うという名目で俺に押し付けて涼しい顔で王都に帰っていった。
そして、オリビア王女殿下はというと
「働かざるもの食うべからずです」
といい、なぜか畑仕事をしている・・・、それも平民が着るような服を着て子供たちと雑草取りをしていた。
オリビアお付きの侍女たちも一緒に雑草取りをしているので、周りの大人たちは恐縮しまくりの何かあったら斬首にされるのでは、と一緒に作業している子供たちが不敬をしないかとかビクビクしながらオリビア王女の行動をチラチラと眺めながら作業をしていた。
そんな状況を察してかオリビア王女殿下は
「私は身分は王女ではありますけど、今はアブド領の領民扱いなのです。なので特別扱いされた方が不敬に当たります。それと私の事は王女殿下ではなくただのオリビアと呼んでください」
と言い切り、最初は腫物を触るような態度だった大人たちもオリビアの行動などを見て慣れてきたのか、次第に普通に接するようになってきた。
オリビアは、朝は子供たちと荷車で水を運ぶのを手伝い、雑草取りや収穫した物を運ぶ、午後からはケイコと一緒に年少組への勉強を見てあげたり、時には川に行き子供たちとはしゃいでいたりと、王宮に居たのではできない体験ができていると毎日のように夜は興奮しながら侍女や俺たちに話していた。
「なんかすごい楽しんでるよな」
「大騒ぎにならなくてよかったわ」
「最初領地を手伝うと言われた時はどうしたものかと思ったけどな」
俺はオリビアが部屋に戻った後にケイコと話していた。
数日後そんな落ち着いた日々も一通の手紙が届き一転して大騒ぎになるのであった。
「どうしてこうなった」
「どうしてかしらね」
「リゲル様、そんな暢気な事は言っていられませんよ」
「そうだな、ベック、とりあえず現状を報告してくれ」
「はい・・・」
一通の手紙を手にベックが説明を始める。
長い手紙だったが内容は簡単で、俺が第5王女をたぶらかした疑いがかかっている、手紙を受け取ったら王女を連れて即時王城に来い。
来ない時は王家、国家への反逆とみなし討伐軍を向かわせる。
という内容だった。
「これはすぐに行くしかないよな」
「支度は出来ています、すぐにでも出立は出来ます」
俺はオリビア王女とその侍女、王女の護衛と共に王都に向かう為、館の前に停めてある馬車に乗り込んでいく。
ケイコとベックは残り領地を任せてアリサは俺のお付きとして着いてきた。
領地を出て10日、俺は王都の門で王家からの召喚状を見せて王都に入っていく。
約2年ぶりの王都で変わらない街並みを馬車で進んでいく、門からはすぐに伝令が出ていたので、連絡待ちという事で宿に向かっていた。
ある程度の貴族なら王都の貴族街に館を持っているのだが、アブド男爵家は下級の貴族で館を持てるほどの金も無い、王都に来ることもめったにないこともあって基本宿暮らしになる。
宿に近づくと数人の騎乗した騎士が俺の馬車の前に現れ止めた。
見ると騎士たちはきれいに輝くフルプレートの鎧に胸には国の紋章が彫られていて、騎士の中でもエリートの王直属の近衛騎士団だと分かった。
「アブド男爵の馬車とお見受けする、王よりの勅命にて王城に連れて行く、私たちについて来てもらおう」
御者台にいたアリサに従うようにと伝えると、近衛騎士に囲まれたまま王城へと続く道を進んでいく。
周りでは貴族の馬車とそれを護衛先導する近衛騎士が現れたものだから道の脇は人だかりとなり、馬車の紋章を見てどこの貴族だと首を傾げる者や、普段ならめったに見られない近衛騎士に歓声をあげたりとちょっとした騒ぎとなっていた。
近衛騎士に連れられて馬車のまま城門を通過する、その際に守衛の騎士たちが門の両側に並んで敬礼をしていた。
「チェック無しのスルーに騎士たちの整列敬礼とか、なんか偉くなった気分になるな」
「多分近衛騎士とわたくしがいるからだと思いますよ」
「ですよね・・・」
少し興奮気味な俺の独り言に対したオリビアの返しにテンションが下がる俺を笑うオリビアが見てきた。
王城の扉の前に着くと、オリビアとその侍女と護衛が先に開かれた扉に入っていき、その後俺たちは別室に案内された。
俺が部屋のソファーに座る。
「どうなるんだろ俺」
豪華な部屋で一人っきりでどんどん不安になっていく俺にメイドがお茶を出してきた。
一口お茶を飲んだところで執事服を着た者が来て、「お待たせしました、ご案内いたします」と俺を案内していく。
案内された部屋は俺の領主館の食堂より広く、壁際には絵画や高価な物が並んでいて、広い部屋の真ん中にテーブルとソファーが置いてあった。
部屋に入るとすぐにミリア第4王女殿下が現れ、
「こんな騒ぎになってしまいすいません」
と言ってきた、俺は無難な挨拶をすると、すぐに扉が開いて人が入ってきた。
見ると、王様本人と王妃様と綺麗な女性ひとりだった。
俺は何度か国王様と王妃様を遠目に見たことはあったが、こんなまじかで見るなんて下級貴族の俺には一生に一度あるかないかの事件な事と、目の前の王様の威圧感に全身から汗が噴き出してきた。
「わたひ、いえ、私は、アビュドだんひゃく領のアブド男爵とうひゅのリゲル・アブドでしゅ、こにょたびは即時召喚の命により・・・」
声は裏返り噛みまくりな挨拶をすると、王様が俺を見定めるような目で下から見てから口を開く。
「おぬしがオリビアの婚約者か?」
「ほへ?」
いきなりの王様の一言に思考が全て吹っ飛んで変な声を出してしまった。
そのやり取りを王妃様の横で見て居たミリア王女殿下がいたずらを大成功させた子供の様な顔をしていたのに気づかなかった。
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