第4話 ハンバーガーとテリヤキソース
「それでは第一回アブド男爵領名物料理候補の試食会をはじめるよ~」
昨日あれからケイコと話した結果、簡単に作れて美味しいケイコの国の料理を色々教えてくれると言われて、翌日の今日昼に試食をしようとなった。
ちなみにレシピはアリサとベックが頑張って書き出したそうなのですぐにでも広める事が出来るそうだ。
「なんだか軽いノリだな」
「こういうのは楽しまないと、それにおいしいものを食べようとしてるのにしかめっ面ではおいしいものもまずくなってしまいますよ」
「うーん、確かにそうだな」
俺の言葉にケイコはウィンクをしながら答えてきた。
「まずはこれから」
ケイコが合図をするとアリサがお皿に乗ったさんどうぃっちを持ってきた。
「これはさんどうぃっちか?」
「いえ、これはサンドウィッチとは違ってハンバーガーという物です」
「はんばーがー?、昨日のさんどうぃっちと違いが分からん」
見るとパンに大きめのお肉と野菜を挟んであって、サンドウィッチとちがうのか?と悩んでいると、
「正直あまり違いは無いのですが、私の国ではサンドウィッチは平たいパンで挟む物で、ハンバーガーはこの国のパンの様な丸いパンを切って挟む物で具材がほぼ固定されています」
「ほう、ではこの国のパンを使うという事は昨日のさんどうぃっちもはんばーがーということなのか」
「うーん、ちょっと違うんだけど呼びやすいほうで統一してもいいですね、まずは食べてみてください」
俺の疑問にケイコは答えてくれて、食べるように促すので、昨日と同じように手でつかんでかじると、肉がやわらかくシャキシャキした野菜の食感に驚く、何か香ばしいソースがかかっていた、咀嚼するごとに肉は口の中でとろけるのではないかという柔らかさで、今までにないほどの肉汁と野菜は酸味があり、ソースは香ばしくてこってりしてお肉の肉汁に合う、それが口の中に混ざり合って美味い。
今まで食べていたパンや食材のはずなのに、作る者の手ひとつでこうも絶品になるのかと感動しつつもあっという間に完食してしまった。
「ケイコ殿、このはんばーがーという物すごいおいしいな、特にこのソースが肉に合ってる、それにこんな柔らかい肉など高いのではないか?こんな高級食材を使っていたら料理も高くなって平民は食べれないぞ」
俺が絶賛するとお辞儀をしてから説明を始めた。
「ソースは私が作りました、ソースに関してはこの国に無かった物で作り方も特殊なのでソースは別に単独で販売という形になるかと思いますが、ソースなしでも美味しいかと思います。それからお肉ですが燻製や塩づけの過程で出たくず肉を使っていますので一般的に売っている安いお肉ですよ」
「なっ、こんな柔らかくておいしい肉がくず肉だと!?」
意外な答えに身を乗り出して聞き返してしまった、驚いたケイコは一瞬びくっとしたがすぐに姿勢を正すと、
「はい、くず肉を集めて細かく刻みまして、パンを細かくしたものと小麦粉に卵、それに炒めた玉ねぎをまぜて固めた物になります。私の国ではハンバーグといってこれで一つの料理なのですが、これを野菜と一緒にパンにはさんだものをハンバーガーといいます」
「はんばーぐにはんばーがーか、・・・おおっ、それで先ほど言った似ているが違う料理という事なのか、それにしてもこんなおいしい料理があるとは、ケイコ殿の国はさぞ豊かな国なのだろうな」
ケイコの説明に納得してまだおかわりがあるというので、みんな奪い合うようにハンバーガーを食べる。
食べ終わってから、ソースの作り方の話になったが「そればかりはどうしても教えることができない」と申し訳なさそうに言われた。
「いやそんな顔しないでくれ、実際こういうものは開発した者が作り方を秘匿して秘伝として外部に流出を防ぐのが普通だからな」
「申し訳ありません」
「そうなるとソースの売り上げはすべてケイコ殿の物ということにしよう、料理のレシピを教えてもらっただけでもこの領地には金鉱を掘り当てたようなものだからな、これ以上もらったら女神様から神罰が落ちてしまう」
「ありがとうございます」
そして試食会は終わり領民にどうやって広げるかという話になった。
「宿の食堂や露店などは無いのですか?そこの料理人に教えたらどうですか」
「宿はあるにはあるのだがこんな辺境に来るものなんて物好きか行商人くらいしかいなくてな、ほとんどは開店休業状態なのだよ。料理の露店なんて出したところで町民は買わないからこの町ではないぞ」
「うーん、どうしたらいいかな」
俺の答えにケイコは悩み始めた。
「それではこうしましょう・・・」
ぶつぶつと言いながら考えた後、口を開いたと思ったら気でも狂ったのかという提案をして来た。
それは領民すべてにハンバーガーを教えた上で例の秘伝ソースを領民限定に安く提供してそれを使った料理コンテストをしようという。
それだけならまだしも優秀者には秘伝ソース永久無料提供権を与え露店を出すことを許可すると言い出した。
「なっ、お前は馬鹿か?そんなことしたら折角の収入がなくなるじゃないか」
「馬鹿とか言わないでください」
驚きすぎてつい声を荒げてしまったが、ケイコの考えは、最初は収入が無いかもしれないが、このソースとハンバーガーは売れると思う、だからまずは宣伝して広めるのが先でその為の投資だと思えばいいと言う。
「優秀者以外には販売するんですから収入がなくなるわけではないですよ、領民は材料費だけでもいいですし安く提供して、領民以外には十分利益の出る価格で売ればいいのですよ、評判やうわさを聞きつけて買おうとしてもこの町でしか買えないとなれば、買い付けに大勢の商人や人が来ますよね。そうなるとこの領地に使うお金が増えて税収アップしますよね、増えた税は領民に還元すれば領民も潤うし余裕もできますよね」
「うっ、それはケイコ殿の言う通りかもしれないが、それだとケイコ殿の負担が大きくなるのではないか?」
「そこは材料さえあればいくらでも作れますし負担もそんなにないですから、それに味を知ったら似たようなものを作る料理人なども出てくるかもしれないじゃないですか、そうなったらこの領地だけじゃなくこの国、大陸と広がって食の幅が広がるじゃないですか、おいしいものは人をそして国を幸せにするんですよ」
ケイコはそんなことを言ってくる
「だがな・・・」
「はぁ、もう男の子がうだうだ言わないの!!、はい、これはもう決定です、ベックさんとアリサさん、まずは今朝用意してもらった材料を集められるだけ集めてもらえますか?ソースづくりしますので、それとサンドウィッチとハンバーガーのレシピを広めてください、広まったころに料理コンテストの告知と開催の準備をします」
「「は、はい、畏まりました」」
話し合いはこの案で決定して、ケイコはベックとアリサにてきぱきと指示を出してしまった。
そして話し合いから三日後、食糧庫には大きな水がめ(10リットルは入る物)が10個ほど並んでいた、中身はすべて秘伝ソースだった・・・。
「ちょっと作りすぎちゃった、テヘペロ♪」
つくりすぎちゃったって・・・。俺は驚き頭を抱えつつも規格外なケイコのやる事にいちいち驚かないと誓った瞬間であった。
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