距離

ネルシア

距離

家族でニュースを見ている時だった。

♪ポロン♪とスマホから通知が届く。

気怠くスマホを取り、連絡内容を確認する。


「付き合ってください。」


ふーん。

ん?


「え!?!?!?!?」


思わずスマホを投げ飛ばす。


「ちょっとお姉うるさい。」


妹に叱られる。

でも、そんなこと気にしていられず、パニック状態で画面を妹に見せる。


「これ見てよ!?ナニコレ!?!?」


「付き合ってください・・・。えー!!!!!お姉すごいじゃん!!相手は!?」


「・・・友達。」


「男の?」


ふるふると首を振る。


「あー・・・うん・・・。」


妹が気まずそうにする。


「あら~、愛してくれるなら付き合ってみるのもいいんじゃない?」


優しい声で母親が諭す。


「でも、女の子同士って・・・。」


「あなたはその子の事嫌いなの?」


考える。

もちろん嫌いなわけがない。

いや、むしろ好き。

でも、あんなことやこんなこと考えると・・・。

あれ・・・悪くない・・・。

友達とキスするのが容易に想像てきてしまう。


「う、うへへへ、へへへへへ・・・。」


「お姉キモイ」


「そんなこと言わないでよ、わが愛しの妹よ。小さいときはお姉たんと結婚する!

なんて言ってたのに・・・。」


妹が勢い良く立ち上がり、怒り出す。


「ばっっっっっかじゃないの!?!?!?キモイ!死ね!」


そういうと自分の部屋に帰ってしまった。


友達に返信する。


「不束者ですがよろしくお願いします。」


なんせ初めてのパートナーだ。

堅苦しくもなってしまう。


そんなこんなでデートに行くことになった。

デート、デート、デート。

さぁ、困ったぞ。

何を着ていく?何を着けていく?化粧の仕方は?予算は?

そして、私は脊髄販社にすべて任せることにした。


当日。

遊園地の入り口に友だ・・・いや、パートナーガ待っていた。

来る途中までは全然緊張しなかったのに、見えて一歩ずつ近づくたびに、

鼓動が1テンポ早くなってる気がする。

こっちに気が付いて走ってくる。

ドッドッドとパートナーの走る足踏みに合わせるように心拍が高くなる。


「お、おはよう。」


ぎこちなく挨拶してくれる。


「うん、おは、お、おはよう。」


気まずい。

何を話せばいいのか。

以前だったら話題なんて関係なくトントン拍子に話が続いていたのに。


「私初めてだから案内して?」


「わかった。」


ひねり出した言葉が案内してとか私マジ終わってるわ。


とりあえずアトラクションに向かい、乗り、向かい、乗りを繰り返すが緊張で何も頭に入ってこない。


「あ、ポッポコーン買ってきていい?」


「ケース集めてるんだっけ?」


「そう!!この季節限定のー--」


解説が始まるが、その目がキラキラ輝いている表情に見惚れてしまう。

この子こんなに可愛かったっけ。


「ちょっと?」


「可愛い。」


聞いてると答えたつもりが本心が出てしまった。


「・・・りぃも可愛いよ?」


うっわ、決め顔。

無理死ぬ。

尊い。

ほんとに私なんかでよかったのだろうか・・・。


ポップコーン買ってくるねと言ってたったったと駆けていく。

そこから会話が続くようになり、絶叫系もキャーキャー言いながら、

可愛い乗り物もきゃっきゃ言いながら楽しめた。


そして次のアトラクションに向かう途中、手がちょんと触れる。

顔を見るとそっぽを向いているが、手がちょんちょんと触れてくる。

握りたいのかな・・・?

そう思って、手をつなぐ。

普段のつなぎ方ではなく、恋人つなぎで。


するとパートナーの耳が真っ赤になっていることに気づく。

うわぁ・・・。


私も恥ずかしくなる。


そんな楽しい時間もあっという間で、あと1つくらいしか乗れない時間になってしまった。


「最後はさ、あれに乗ろ?」


指さしたアトラクションは、ザ・カップル専用というか。

うす暗い空間を貝殻をモチーフにしたカートに乗って、ロマンチックな照明や演出を愉しむアトラクションだ。

前や後ろの人の姿も見えないように設計されているため、うん、ね。


ドキドキしながら並ぼうとするが、周りは男女のカップルばっかりで自然と足が止まってしまう。

もちろんファーストパスとか持ってない。


「あの。」


と声をかけられたのは好青年な男の子。

困惑しているとスッとチケットを差し出してくる。


「これよかったら使ってください。」


そのチケットはこのアトラクションのファーストパスで時間ももうすぐだった。


「僕たちもう帰らなくちゃいけなくて・・・。よかったら。」


ファーストパスなら駆け抜ければそこまで視線は気にならない。

パートナーと見合わせてこくりと頷く。


「「ありがとうございます!!」」


2人でお礼をしてアトラクションに駆け込む。


いよいよ始まった最後のアトラクション。


「ねぇ。」


パートナーが話しかけてくる。


「なぁに?」


私も返事する。


「キスしてみない?」


つないでた手がぎゅうと強くなる。


「・・・ん。」


もう片方の手も繋げ、向かい合わせになって軽くキスする。

互いに初めてのキス。

火が付いた。

互いの唇を貪りあう。

息遣いも激しくなる。

繋いでた手はいつの間にか抱きしめあっていた。


もうすぐで終わるという合図のアナウンスが流れ慌てて現実に戻る。

ぐちゃぐちゃの服。

真っ赤な顔に激しい息遣い。


2人して急いで事後処理をして、アトラクションを後にする。


「これからよろしくね。」


「うん、こちらこそ。」


私たちの恋愛はこれからだ。


Fin.


おまけ1.妹 ~自室にて~


あー!!!!

もう!!!!

お姉のバカバカバカバカバカバカ!!!!!!

なんで私の気持ちに気づいてくれないの!?!?!?

そのセリフ覚えてるんだったら早く私と結婚してればよかったのに!!

人のものになりたがって!!!!!


というシスコンの妹でした。



おまけ2.急に出てきた好青年


僕はレズが好きだ。

百合が好きだ。

ガールズラブが好きだ。

だが、キスシーンを見るのはご法度だ。

挟まるのは死刑だ。

ただ、いちゃつくのを見るのが至高なのだ。


そのことを事前に話していたのにも関わらず、恋人に振られてしまってここで1人ぼっち。

何故かって?

女の子のカップルばかり見てんじゃねーよ、だとさ。


仕方あるまい。

この我が目は脳が認識するよりも早く百合を見つけることに特化したのだから。

おっと早速反応したようだ。


じーっと観察を続けると、やっぱりこのアトラクションの前で止まった。

同性愛のカップルが未だに堂々と歩けないこの国だとそうなるよなぁ・・・。


こんな時のためのファーストパス複数枚持ちなのさ。


さぁ、行こう、彼女等の幸せのために・・・。


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