バツイチの叔父が人魚姫と結婚するらしい

巳崎怜央

(一) 海釣り

 俺の叔父さんは海釣りが趣味だった。俺が帰省した時ですら、いつも決まって家を留守にして、日本中の海に行っているものだった。


 対する俺は、インドア派もこれ以上ないほどのインドア派で、夏場の外出なんてありえなかった。これは三十超えた今だって変わっていない。動画見てゲームして、タイムラインを巡回して、また動画見るの繰り返し。こんな生活を続けていたもんだから、いつの間にかここまで肥えてしまったんだとも思う。叔父さんとは似ても似つかない、ぶよぶよな腹と腕周り。


 ただこんな俺でも、学生の頃はそれなりにモテていた。今よりは運動のできるデブだった。通学のチャリンコで毎日の運動習慣が着いていたからだとは思う。なにせ彼女がいた。クラスじゃ地味目な子だったけど女子からの支持が厚くて、なんでか俺に告ってきた。勿論嬉しかったから、俺はOKを出した。


 高二の夏、彼女と上手くいってなかった俺は、帰省先の地元でいつもと違うことがしたくなった。婆ちゃんに聞くと、叔父さんが明日も海に行くらしく、俺は着いていくことにした。


「釣りに行くのか。お前が」


目をまん丸にした親父が、半笑いで問いかける。


「やめとけやめとけ。倒れるぞ」

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