リンドウ
ふらふらと蝶々が飛ぶ。
ふらふらと、ふらふらと。
ふらふらと蝶々は飛んで、
ひとり凛と咲きほこる青いリンドウに、
その桃色の羽をやすめた。
黄色、白色、青色の、
蝶々たちが遊んでいる。
桃色の蝶々はひとり、
そっとそれを見つめていた。
「君は、はいらないの?」
リンドウが風にあわせて首をかしげた。
蝶々は一瞬、羽をひらいて、
その揺れのやさしさに羽をとじた。
「……私はみんなと違うから」
「どうして?」
「色が、違うから。私ひとり、違うから」
桃色の羽が、風に震えた。
「そう言われたの? 悲しいの?」
リンドウがやさしく揺れた。
「ぼくは、『悲しんでいるあなたを愛する』よ。だってね、悲しいっていうことは、相手のマイナスな感情もちゃんと受け止めているってことなんだから……君はやさしいね」
「変ななぐさめはいらないの」
「なぐさめなんて、そんな『正義感』のあるものじゃないよ。ただ純粋に、ぼくが思ったこと……君はとても愛らしいよ」
蝶々はその桃色をほんのりと濃くした。
「……ありがとう」
「君は君でしかないんだから、堂々としていればいい。さあ、自信をもって……飛んでごらん。君は、とても綺麗だ」
蝶々は風がやむのを待って、
大きく羽をひろげた。
桃色の羽が太陽にかがやく。
青いリンドウが見守ってくれていた。
桃色の蝶々はくるくると、
そのまわりを飛んでみせた。
くるくると蝶々が飛ぶ。
くるくると、くるくると。
くるくると蝶々は飛んで、
ひとり凛と咲きほこる青いリンドウに、
その桃色の羽をみせた。
黄色、白色、青色の蝶々たちが、
じっとそれを見つめていた。
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