デスサイズゲーム

白絹照々(しらぎぬてるてる)

第1話 デスサイズゲーム

令和10年。消費税20%になったここ日本。10年前の令和元年10月から、日本の資金を47都道府県にそれぞれ分け与えることになった。そして、資金の分け前はギャンブル。すなわちトランプカジノの勝者に与えられる世の中となった。

夜7時 茨城県庁・・・・・・ここである事件が起こる・・・・・・


女性社員「あら、静流(しずる)ちゃん。こんな夜遅くまで仕事?」


静流「ええ、知事が来るまで仕事を済ませようと思いまして。」


女性社員「そういえば知事遅いですね。いつもは6時ぐらいで上がりますのに?」


静流「そうですね、様子見に行きますか?」


女性社員「そうね。何か問題があったかもしれないしね。」


2人は知事の部屋をノックした。


女性社員「知事、知事。今よろしいでしょうか?」


しかし返事がない


静流「知事、入りますよ。」


静流がドアを開けた瞬間。部屋の中では。


女性社員「きゃー!」


知事がロープで首を吊って自殺していた。


静流「お父さん!お父さ~ん!」


次の日、とあるアパートでは


一城「眠~もう朝か~」

アパート一室に住んでいるこの男「一條一城(いちじょう かずき)」が今回の主人公である。彼は現在高等遊民生活をしている。高等遊民とは高等教育を受けた人で一定の職を求めず徒食する者・・・・・・俗に言うニートだ。


大家「ちょっと一條さん!早く滞納している借金払ってくださいよ!」


一城「なんですか・・・・・・俺はいつから滞納しているわけですか?全然記憶にございませんが?」


大家「もう4か月滞納しているのよ!早く出さないとこのアパートから出て行ってもらうわよ!」


一城「そんな・・・・・・今お金ないですし・・・・・・」


大家「なら早く働きなさい!ニート生活なんかやめて!」


一城「失礼な!ニート生活ではありません。高等遊民と言ってください!」


大家「どっちでも意味は一緒でしょう!それにあなた大学卒でしょう!」


スーツに着替えた一城は大家さんに追い出され、しぶしぶ就職活動をすることに


一城「(やれやれ、何で俺が就職活動しないといけないんだ。それに俺、一回就活に失敗したしな・・・・・・)」


一城は大学卒業同時に一度就職したものの、会社の人間関係に馴染めずに半年で辞めてしまった。重い足取りで地元のハローワークに到着した。


受付嬢「履歴書を見せてもらえないでしょうか?」


一城は履歴書を渡した。

待っている間テレビでも見ようかと思い壁掛けのテレビを見ているとそこで衝撃のニュースが飛んできた。


アナウンサー「昨日の午後7時、茨木県庁の知事。剣城義夫(つるぎよしお)知事が首を吊って自殺したとのことです。」


一城「え!?」


アナウンサー「知事の机には遺書が遺されていたとのことでした。」


一城「あ~あ、これで茨城は終わりだな。ただでさえ家は借金抱えているし、ギャンブル制度が始まってからどんどん衰退していくし。県外に就職もできないし・・・・・・」


ランク制度により、下位の県民は順位が上の県には就職できないようになった。ちなみにここ茨城県は6年連続最下位。しかも県で唯一の借金を抱えており、就職するには県内でしか就職できないようになった。 結局就職先も見つからず、一城は途方に暮れていた。


一城「あ~あ、平成に戻りたい。」


つまずいて転んだ


一城「イテテ・・・・・・道路の修復ができていないからボロボロになっている。最近車の事故も増えているし・・・・・・本当にこの県はこれからどうなるのだろうか・・・・・・」


?「お困りのようですね・・・・・・」


一城 わっ!誰だ!


突然現れたリクルートスーツ姿の赤黒髪のショートボブの女性に一城は驚いた。


赤奈「私、剣城知事の秘書をしている「黒瀬赤奈(くろせあかな)」と申します。」


赤奈は名刺を差し出した。


一城「(ミステリアスな女性だな・・・・・・)」


赤奈「一條一城さん。あなたを、次の茨城県知事に推薦したいのですが。」


一城「は!?俺を県知事に?なんかの冗談ですか?」


赤奈「あなたのことはご存じですよ。大学で。」


一城「大学・・・・・・あっ!(思い出した・・・・・・確か特別授業でポーカーやって知事に勝ったんだっけ)」


赤奈「その実力は本物だと思います。」


一城「でも知事はその仕事で自殺したんでしょ?それほどきつい仕事なんて俺はごめんですよ!」


赤奈「その・・・・・・前の知事は実力がなかったのです。それで追い詰められて自殺したのです。」


一城「そんなこと言うなよ!人の命を何だと思っているんだ!」


赤奈「申し訳ございません、スカウトすることに必死で・・・・・・」


一城「そんなこと言うところに就職したくない! じゃあな!」


一城はその場を去った。誰かが一城にぶつかった。


男性「おい、そこのお前!ちょっと待て!」


一城「何だ?」


男性「何だじゃないだろ。ぶつかっておいて一言も謝らんのかい。」


一城「ぶつかったのはアナタからだろ。」


男性「言い訳はいいんだよ! 今ので服汚れたんだよ。早く金寄越せ!最下位県!」


一城「最下位県?何言ってるんだ?同じ茨城県民じゃないか。」


男性「俺は序列44位の埼玉県民だ!貴様らみたいな最下位民と一緒にするな!」


一城「・・・・・・・・・・・・。」


男性「何だ、上位県だから何も言い返せないのか?だったら早く金を。」


一城「{声のトーンを低く}何が、上位県だ?位が上だからって調子に乗りやがって。」


男性「だったら勝負するか?トランプ持っていればの話だがな。」


一城「黒瀬、今トランプ持っているか?」


赤奈「はい、こちらに。」


男性「そのトランプ、知事専用のトランプか!?」


知事専用のトランプとは47都道府県の県知事しか持つことしか許されない。黒色と金の模様が施された最高級のトランプである。細工ができない仕組みになっているためイカサマができない仕組みになっている。


一城「俺がここの知事だとわかって勝負を挑もうってことか。」


男性「面白い!ポーカーで勝負だ。」


ホログラムにより2人の前に台が広がった。


一城「5戦勝負で先に3勝した方が勝ちだ。初めだし、2勝はお前にくれてやるよ。」


男性「何?お前、俺のことなめてるのか。」


一城 その代わり約束しろ。俺が勝ったらバカにしたことを謝ってもらうぞ。


男性「いいだろう。俺が勝ったら100万もらうぞ。最下位県が払えればの話だがな!」


一城はトランプを配った。


男性「チェンジだ。3枚。」


一城「・・・・・・ノーチェンジで。」


男性「なんだ、勝負を放るつもりか?」


一城「だから勝ちをやるって言っただろ。」


男性「馬鹿め、俺は8のワンペアだ!{手札:♠8・♦8・♦5・♣2・♣J}」


一城 「ハイカードだ。{手札:♥A・♠4・♥6・♦7・♣K}」


男性「ハンデを出したことを後悔させてやるぜ!」


2戦目も男性の勝ちになった。


男性「あと一勝すれば俺の勝ちだ。」


一城「さて、そろそろ本気で行くか。もう遊びは終わりだ。」


一城は初めて2枚チェンジをした。


一城「ほう。」


男性「(コイツ、何笑っているんだ。)」


一城「勝負だ。これなら勝てる。」


男性「何!?何かいい役職が来たのか?」


一城「どうする? 降りるなら降りた方がいいぞ。まあお前みたいに無鉄砲に突っ込んでくれるならありがたいかな。」


男性「・・・・・・おりる。」


一城「つまんねえやつだな。そこは普通勝負だろ。」


男性「俺は1ペアだ。勝負なんてするわけないだろう。{手札:♠9・♥9・♠K・♠3・♦10}」


一條「あ~あ、やっぱりお前はバカなんだな。」


男性「バカだと、2勝しているんだ。ここで勝ちを急ぐわけがないだろう」


一城「俺、ハイカードだけど。{手札♦8・♦5・♣2・♣3・♠7}」


男性「コイツ!」


一城「嘘つくなってルールはないはずだぞ。それに、お前は絶対に勝負を降りるって確信あってのフェイクさ。」


男性「確信あってのフェイク?」


一城「お前、さっき言ったじゃないか。「2勝しているんだ。ここで勝ちを急ぐわけがないだろう」って。人間は勝利を目前にリードしているとき、相手がいい手だとこちらがいい手でも降りる可能性が非常に高い。だからいい手がきたって嘘をついたのさ。」


男性「うるさい!次行くぞ。」


一城「2枚チェンジで」


男性「またか?」


一城「勝負だ。これなら勝てる。」


男性「(もう騙されないぞ)俺も勝負だ。」


一城「騙されないようにしている顔だな。」


男性「黙れ!手札が強ければ勝負に勝てる!俺は3カードだ!{手札:♠J・♣J・♦J・♥A・♥8}」


一城「はい、フラッシュ{フラッシュとは5枚の手札に同じマークがそろっている役のこと}{手札(♥5・♥Q・♥K・♥6・♥10)}」


男性「負けた、騙したな!」


一城「いや、今のは本当のことだろ。深読みしすぎるのが悪い。さて、あとが無くなったぞ。」


一城はカードを切りながら挑発を続けた。


男性「絶対勝つ!」


男性はカードを持った。


男性「(よし、このカードなら勝てる!あとはあの数字が来たら)1枚チェンジで」


男性が引いたカードはお望みのカードだった。


一城は指を少し舐めて、カードを手に取って目をつぶった。


一城「俺は勝負でいいぞ。」


男性「馬鹿め!俺の勝ちだ!」


一城「弱い犬ほどよく吠えるって言うけどな。」


男性「俺はフルハウス{3カードと1ペアが出た時の役}だ!弱い犬はお前の方だな{手札♥J・♦J・♣5・♥5・♠5}」


一城はカードを置いた。


男性「諦めたか!?これで賞金100万は俺のものだ!」


一城「勝手に勝負を決めるな。俺の勝ちだよ。」


男性「嘘をつくな!スペードの10・Q・K・Aだからハイカードだろ!」


一城「ああ、一枚裏返しになっているな。」


男性「よこせ、何のカードだ?」


男性は一城の最後のカードをめくった。


男性「な・・・・・・「JOKER」だと・・・・・・」


一城「役職は、ロイヤルストレートフラッシュ{絵柄が同じで10・J・Q・K・Aが出る役}だ」


男性「つまり・・・・・・俺の負け・・・・・・」


ゲームが終了し、台のホログラムが消えた。男性はトランプを投げ捨てた。


一城「こら、貴重な知事用トランプを丁寧に扱えよ」


男性「イカサマだ! こんな勝負俺は認めないぞ!」


一城「俺はイカサマなんてしてないぞ。それよりも・・・・・・勝利条件、忘れてないよな。」


男性「な、何のことかな・・・・・・」


一城は男性の首根っこを掴んで思い切り地面に押し付けた。


一城「ほら、謝れ!」


男性「痛い痛い!分かった分かった。すみませんでした。茨城県を最下位県と言って申し訳ありませんでした!」


一城は男性の首根っこを放した。


一城「初めからそうすればいいんだよ。ちっ!お前らのせいで親父は・・・・・・」


一城は赤奈と共にその場を去った。


赤奈「流石です。」


一城「別に、むかついたからやっただけだから。」


赤奈「しかし、本当にイカサマをしなかったのですか?」


一城「・・・・・・本当はね。ロイヤルストレートフラッシュ分のカードを抜き取って最終戦においてそのカードを出しただけさ。」


赤奈「それで、その・・・・・・知事の件ですが・・・・・・」


一城「そうだな。さっきは断ったけど茨城県民はきっとみんな苦しい思いをしていると思う。ハローワークに行ってもいい就職先は見つからないし、ギャンブルの腕だけでよければよろしく頼むよ。」


一城は手を差し出す。


赤奈「はい、よろしくお願いします。」


赤奈は応じ握手を交わした。こうして一條一城はめでたく新たな茨城県知事となった。しかし、不安材料はまだ全てぬぐえてなかった。


第1話(完)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る