事の顛末と婚姻の行方

ラドンは失脚し、スフォリア家への慰謝料の支払いが命じられる。

一部の事業は停止、領地と財産の没収。

爵位も伯爵への降爵を言い渡された。


カレンの処罰についても今後10年は社交界への出入りを禁止し、奉仕活動を命じられた。




命までは取らないものの、プライドの高いカレンにとって社交界に出られないのはとても辛いものだろう。


ラドンも大部分の力を削がれ、立ち直るのにも時間がかかる。


許せるものではないが、命を落とした者もいないための判決だ。

これからのサラエド家に手を差し伸べる者がいるのかもわからない。


暫くは報復の可能性もあるとし、秘密裏に監視がつけられるようにはなった。




ユミルは婚約を破棄したそうだ。


カレンの顔が変わったからだけではなく、

「ミューズ様を罵る姿がとても醜かった」

というのもあったそうだ。


そもそもサラエド家は罪を犯したので、イースティ家も縁故にはなりたくなかったのだろう。




色々あったが無事に社交界デビューしたミューズは今まで話したことがない人からの茶会の誘いが増えた。

社交性と教養を高めるため学校にも通い始めたが、そこでも声がかかる。


デビューの時のエピソードが広まっているため、転身令嬢と呼ばれている。


幼き頃のミューズを知っている者や噂を聞いていた者が、性格も容姿も評判もガラリと変わったミューズをそう呼ぶようになったみたいだ。


ティタンは狂犬王子と呼ばれていたが、後々になってミューズへの愛が深すぎると忠犬王子に変わっていった。


学校生活ではメィリィとフローラも一緒で楽しかった。


ミューズの従兄弟で騎士を目指すキールやティタンの従者マオも増え、護衛騎士のルドとライカも付き添い、時には大所帯で話すこともあった。


メィリィはあれから色々なメイクをミューズに施したり、マオのヘアメイクを変えてみたりフローラの服を選んだりと楽しんでいた。

「女の子って本当に可愛いわぁ」

とご満悦だった。


フローラは学校で毎日鍛錬の話が出来るようになったため、嬉しそうだった。

ミューズもメィリィも女の子なんだからなどと悪く言うこともないので、フローラは気兼ねなく体を鍛えていた。

そのうちにライカと少しだけ親密になったのはまた別の話にて。




今は学校の長期休み。

ミューズの祖父シグルドのところへ泊まりがけで遊びに来ていた。


「それで終わりか?」

「まだまだです!」


邸にある鍛錬場にて、朝からシグルドとティタンは鍛錬をしていた。


それをミューズと祖母サンドラと紅茶を飲みながら眺めている。


「ミューズちゃんの旦那さんは凄いわね。あんなに打ちこまれてるのにめげないなんて」

年のためやや白くなった金髪をまとめた老婦人は感心している。


リリュシーヌとレナンを合わせたような顔立ちで、背筋がピンとしている。


「お祖父様を倒さないと婚姻話が進められないので、必死なんだそうです」

十八歳、遅くとも二十歳にはとティタンは話していた。


「あの人を負かすのはなかなか骨が折れそうね。戦バカだから」

頬に手を添え、ふぅと溜息をつく。


「どうしてもと言うならば、私が口添えするから、安心してね」

サンドラはなでなでとミューズを可愛がる。

そういうところがリリュシーヌにそっくりだ。


「大丈夫です、ティタンならばきっと乗り越えますよ」

「でもミューズちゃんは来週にはスフォリア領に戻るでしょ?

その後直ぐに王家へ行ってレナンちゃんの赤ちゃん達を見に行く予定だし、休み中も忙しいじゃない。

そもそもシグルドと手を合わせる時間があまり無いから心配だわ」

「そうですね…確かに時間は少ないです」


王太子妃となったレナンは婚姻後暫くして懐妊が発表された。


無事に出産を終え、それが男女の双子だったから毎日てんやわんやしているらしい。


可愛い赤ちゃん達と子煩悩な夫に囲まれ、情緒が追いつかないと手紙で愚痴なのか惚気なのかわからない事をこぼしていた。




待望の可愛らしい跡継ぎ達に国王夫妻もでれでれらしい。


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