第16回 書き出し祭り タイあら感想
和崎藤丸
1-1 廃棄東京、からっぽのマキナ(9/29更新)
【タイトル感想 9/10更新】
空っぽと言いつつマキナ(機械)は元々空っぽわけで。あえて空っぽというということは、元々は空っぽではなかったのかな? と想像します。
舞台は東京、近未来のSF、もしくはファンタジーでしょうか。
あえてマキナ、という言い方をしたからにはデウス・エクス・マキナを連想させたいんだと思うんだけれど、違うかな。
機械に支配された近未来、その暴走などによって滅び廃棄された東京と、敵になってしまった一体の機械と一人に人間の出会いが世界の運命を変える──みたいな話が思い浮かぶ。思い浮かぶだけですすみません好き勝手言って……。
ていうか廃棄東京っていう字面がもう完全優勝だと思います。クリックせずにはおられんだろ。
【あらすじ感想 9/14更新】
改めてすべてのタイトルを見たところ、やっぱりこのタイトルは強いな……と思いました。
引力がでかい。
まあ私が(ライトな)SF好きというところもあるんでしょうけども……。
さすが、いの一番に会場入りしただけある作品ですね。
あらすじを読んでみて、ターゲットを確実に絞りこんでいるな、と感じました。
タイトルから感じた印象から外れないあらすじ。
いわゆるSF×セカイ系のイメージで、上段のタイトル感想からもさほど外れてない……かな。
空っぽになってしまったマキナの「自分探し」を通じて、廃棄東京と世界の真実を暴いていくボーイミーツガール。
結構作者様は書きなれた方じゃないかな……安定感がありますね。
ただだからこそ、というか、あらすじがきれいにまとまっていて、読後感が多少なり想像がつくんですよね。
確実に一ページ目は開くと思うんですけど……こういうの大好きなので。
こういうの食べたい! って時にはめちゃくちゃありがたい。
でもそれを逸脱しない程度に、この完璧な王道軸にひとさじ捻りが入っているとなおお得感があって私は嬉しいな、と。
そこらへんが冒頭で書かれてると『買い』ですね。
また汚染され、『廃棄』までされた東京に入っていける舞浜君のポテンシャル疑惑、半年でそれを楽しめる余裕のある理由が推察できそうだとありがたい。
ここがちょっぴり気になるポイントでした。
もちろん作品の中身でそれを気にならないくらい引っ張っていっていただけるなら、問題ないところでもありそう。
特に理由がないなら変更や後付けもできそうですし、そもそも400字のあらすじですし、ここでも「ん?」と思わせて本文誘導するつもりならほんとうにこの作者様は強いと思う。
がっつり理由あったら嬉しくて踊っちゃうね。
「識別名、マキナ。そんなデータが残っている気がします」
これでハッピーにならん男子はおらんやろ。
アニメの予告見せられてるみたいですごくわくわくしちゃったな……。
ちなみに舞浜君、舞台は(廃棄)東京だけど君、千葉じゃない??????
(これが作者様の遊びならめっっっっちゃ大好き……)
【本文感想 9/28更新】
その空間に流れる時間が加速して、そこに存在するものを急速に劣化させることが東京が廃棄された原因というわけですね……。
そして廃墟好きの佐藤少年はその空間の探検に出かけ、得体の知れぬ少女(おそらく完全に人間というわけではない)に出逢う……。
テンポはすごくよかったです。
私はさほど最近のラノベを多く読んでいるわけではないんですが、そうそう、ラノベのノリ突込みってこんな感じ、という一種の安心感がありました。
ある程度必要な前段階情報を会話形式で読者に提供するやり方が素晴らしいですね。
普通に空間汚染だと思っていたので(普通に、とは)、時間汚染、とでもいうんでしょうか。
そこが狂わされているとは思わず、完全に予想外で興味が惹かれました。
ここにひとひねり入れてきたのはでかいんじゃないかな…。
そしてその空間汚染と同等の能力をマキナが有していると思しき最後。
この空間汚染を引き起こしたのはマキナちゃんだと思うんだけど(それを命令した存在は別にいるとして)、しかしそれには代償が伴う……。
この能力を使えば彼女の記憶にも影響するという切なさに、一瞬マキナちゃんと佐藤君の未来に想いを馳せ、辛くなってしまう。
記憶ものの切なさをも展開に盛り込んできたのはすごいと思う。
めっちゃ要素畳みかけてくるじゃん。
廃棄東京、というパワーワードで目を惹き、確実に層を引き込んでるし、「空間汚染ね~」と言いがちの大分目の肥えた(?)人たちをその『空間汚染』の中身を提示することで冒頭で唸らせてくるよね。
そしてマキナちゃんが確実に空間汚染とかかわっていると思しき能力を開示し、しかしそれには代償が伴うことを見せつけてる……。
切ない……。
今の記憶を失ったマキナちゃんを見てると、絶対佐藤君に危険が及べば自分が記憶を失っても助けてくれようとするじゃん。
そういう選択を迫られることになるじゃん……見えるじゃん……。
今のマキナちゃん、無防備でいい子なんだよね。記憶があったころのマキナちゃんとの違いも見れたらよりおいしいな、と思います。
見たいぞ。
今のちょっと天然入ったぽわぽわマイペースマキナちゃんと以前のマキナちゃんの違いはすごかろうね。
そして空間汚染にマキナちゃんがかかわっていれば佐藤君もきっといずれは世界か君かの選択を迫られる……。
ひーんすき。
ただちょっと気になったところは、やっぱり廃棄されて『半年』っていうところなんですよね……。
半年は早ない? って思ってしまう。
そこ以外は特に引っかかる点がなかったので、なおさら。
戦争やってて国土狙われ首都壊滅してるのに、半年で探検できるんだ……ってなる。
この空間汚染は描写を見るに人体に影響を及ぼして、体内時間を早めてますよね。
加速度合が今は弱まっている、という点を鑑みれば初期は死に至らしめるレベルで会ったことは想像に難くないです。
廃墟になるレベルだし……。少なくとも老人は問題があったのでは?
そこに半年で学生がもぐり込めるというのはちょっと現実的でなく、であれば特殊アイテムとか出してくれればよかったかな、と。
作中に矛盾がないなら十年、という単位でも全然問題ないように見えました。
ここで読ませていただいた冒頭だけだと、それでも大丈夫そうなので、それだけで全然納得度が変わってくるのですが……。
まあ十年だったら多少生活基盤整って警備も緩いポイント見つけられるのかな…? みたいな。
後々整合性調えてくれればなるほど、と言える。
でも半年だと早急に説明がいるかな、と思います。
他のところがよきよきだから……ほんとここのポイントだけねちねち言ってすみません……。
もったいないなと思ってしまって……。
めっちゃ理由あるのかな……。
総合的には結構好きでした。
SF×セカイ系×ボーミーツガール×記憶もの、盛るじゃん……。
しかもそれがかなり美しく溶け込んでる。
情報は多いけど、咀嚼するのさほど難しくない。
するっと入ってきますよね。
読後感はどうなるのか、ハッピーエンドかメリバか……。
でも確実にマキナちゃんと佐藤君が納得した終わりであろうと思うので、それを応援したくなります。
続きあったら読むな……。
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