2年生編第19話(第44話)「大和と哀羅の恋模様」
文化祭の演劇発表会の結果、演劇は1年生が優勝した。
団子「あ~あ・・・・・・頑張ったのに私たちは2位か。」
哀羅「すいません。」
二人は生徒会室で休憩していた。演劇班はステージ発表が終わった後は模擬店班の手伝いをするか店をめぐるかのどちらかである。
哀羅「そういえば一緒に主役やってた人って花寄さんの彼氏さんですよね。ロミオとジュリエットすごくよかったです。」
団子「ありがと~」
哀羅「いいなぁ・・・・・・」
団子「もしかして羨ましいの~?」
哀羅「そう・・・・・・ですね。」
団子「もしかして・・・・・・大和くんのこと好きになったとか?」
哀羅「な!?なんでわかっ・・・・・・」
団子「アッハッハッハ!哀羅ちゃん分かりやすい~」
哀羅「自分でも分からないんですよ。最初はデリカシーのないこと言うし、ストレートに物事言うし、正直いい要素がないですよ。」
団子「哀羅ちゃんも結構ズバズバ言うよね・・・・・・」
哀羅「でも、演劇では最初のころはケンカもありましたけど。私のフォローもしてくれるし遅くまで読み合わせに付き合ってくれて・・・・・・その本番のガラスの靴のミスをフォローしたときに鼓動が高まったんです。」
団子は少しニヤッとした。
団子「それは、恋に落ちたわね。」
哀羅「やっぱりそうなんでしょうか?」
団子「そうだ、この学園の伝説知っているかしら?」
哀羅「伝説ですか?」
団子「文化祭の最後の打ち上げに花火が上がるんだけどその上がった直後に女性が男性にキスをするとそのカップルは永遠に幸せになるんだって。」
哀羅「そんな伝説があるなんて。」
団子「もう一つ条件があって、その伝説を絶対男性にばれてはいけないらしいらしいよ。」
哀羅「つまりバレずにキスしろと!?」
団子「そういうこと~」
哀羅「でも・・・・・・向こうは私のことを好きだなんて思わないですよね。それなら私からアプローチしても意味ないんじゃ・・・・・・」
団子「それはどうかな~私の勘だけど大和くんも哀羅ちゃんのこと好きなんじゃないかな~って。」
哀羅「そうですか?とてもそんな風には見えないですけど。」
団子「男はヘタレだから自分からは言えないのよ~」
団子はポンッと手を叩いた。何かを思いついた団子は生徒会室にあるスペアキーケースをあさりだした。
団子「これ、花火の穴場スポット。大和くん誘って行ってみたら?」
団子は一つのカギを哀羅に渡した。
哀羅「プールのカギですか?」
団子「ここ、離れた場所だけど見晴らしいいのよ~」
哀羅「分かりました。大和くんに会ったら誘ってみます。」
その時、生徒会室のドアが開いた。
大和「あ、喜籐さん。模擬店の助っ人に来てくれないかって。」
哀羅「や、大和くん!?」
大和「俺らで模擬店優勝狙って行こうぜ!」
団子「あら~大和くんじゃない。」
大和「は、花寄先輩!?」
団子「おじゃま虫は退散するわね~」
大和「あ、いえ、僕たちもすぐに出るんで。」
団子「そういえばひとつ気になっていたけど、先輩と同級生で一人称変えてるんだね~」
大和「そうですね。普段の一人称は「俺」なんですけど年上には敬語を使っているのでその流れで僕って言うんですよね。」
団子「そうなんだ~ そういえば哀羅ちゃんから話があるんだよね。」
哀羅「!?」
大和「喜籐さんから?」
哀羅はその場でモジモジしていた。顔が赤くなっていた。
哀羅「その・・・・・・文化祭が終わったら・・・・・・あの・・・・・・えっと・・・・・・」
大和「なに、いいたいことがあるならはや・・・・・・」
団子は大和にみぞおちをした。
大和「ガハッ!!」
団子「ごめんなさ~い手がすべっちゃって。」
大和「(よかった・・・・・・また余計なことを・・・・・・)」
哀羅「私と・・・・・・打ち上げコッソリ抜け出さない?」
大和「え?」
団子「(その言い方ちょっとおかしいような・・・・・・)」
こうして文化祭は終了を迎えた。2年B組では打ち上げが行われていた。
メアリー「模擬店総合優勝おめでとうですわ~!」
華たちの模擬店が総合優勝を果たした。人気一番の理由はやはりヴァンパイア姿の華が人気だった。
華「みんなありがとう。全員で力を合わせたおかげだね。」
寅之助「何をいいますか。百合根さんの人気あってこその優勝ですよ。」
乱麻「その言い方は誤解を招くぞ。」
男子生徒A「でも確か去年は門限があるって先に帰ってなかったっけ?」
華「あ・・・・・・そうだね。今日はちゃんと許可もらったから最後まで付き合うよ!」
男子メンバーはよっしゃーという声が響いた。
教室の端では勉がオレンジジュースを飲んでいた。
勉「(華、楽しそうでよかったな。)」
蓮乃「真面野くん。端にいないでみんなで楽しもうよ。」
勉「気遣いありがとう。でも今の主役は華さんだから。」
蓮乃「打ち上げなんだからそんなこと気にしないでよ。」
勉「こういうの初めてだから。」
蓮乃「去年は参加しなかったっけ?」
勉「去年は途中で帰ったから。」
蓮乃「そうなんだ・・・・・・そういえば主役の二人は?」
勉「それは・・・・・・ロミオとジュリエットの続きをしているんじゃないか。」
蓮乃「え?」
その頃学校の屋上前の踊り場では寝待が団子が来るのを待っていた。
寝待「アイツ、屋上前に集合って言ってたけど・・・・・・」
団子「お待たせ~待ったかね?」
団子が階段を上って現れた。
寝待「屋上って生徒会役員以外立ち入り禁止だろ?」
団子「今日は誰もいないからヘーキヘーキ。」
団子は鍵を開けて屋上に入った。
寝待「広っ!」
団子「ベンチあるからここに座ろ。」
寝待「おう・・・・・・」
寝待はベンチに腰掛け、団子は隣に座った。
寝待「そういえば何か食べ物持って来たのか。」
団子「あ・・・・・・忘れてた。」
寝待「お前がか!?あの食いしん坊の団ちゃんが?」
団子「その・・・・・・食欲無くてさ。」
寝待は団子の顔をじっと見た。
団子「どうした?」
寝待「お前、今日変だぞ。午前の時はいつもの感じなの・・・・・・に」
団子「そんなわけないじゃ~ん。」
寝待「まさか、今日の演劇で負けたのが悔しかったのか?」
団子は一瞬ビクッとした。
団子「何でそう思ったの?」
寝待「だって明らかにテンション違うからさ。」
団子は少しうつむいた。
団子「そっか・・・・・・やっぱバレちゃうか。」
寝待「(なんかシュンとした団ちゃん見るの初めてだな。)」
団子は寝待の胸に頭を軽くついた。
寝待「団ちゃん!?」
団ちゃんの方からすすり泣く声が聞こえた。
団子「ごめん・・・・・・彼氏の前で泣くなんて・・・・・・でも悔しくて・・・・・・せっかくここまでみんなで頑張ったのに・・・・・・」
寝待「団ちゃん・・・・・・今日は思いっきり泣いていいから。」
寝待は団子の頭を優しくなでた。団子は涙腺のダムが決壊し、寝待の胸の中で思い切り泣き出した。
一方その頃、大和と哀羅が食べ物を持ってプール前にやってきた。
哀羅「じゃあ開けるね。」
哀羅はプールのカギを使って鍵を開けた。
大和「ここが穴場スポットなのか?」
哀羅「うん、花寄先輩に教えてもらったんだ。ここから見る花火は絶景だって。」
大和「そうなのか。というか花火なんて初めて聞いたぞ。」
哀羅「でも打ち上がるまで時間がかかるからそれまでベンチに座って待っていようか。」
大和と哀羅は見学用のベンチに腰掛けた。
大和・哀羅「・・・・・・・・・・・・。」
何を言っていいのかお互い分からず時間だけが過ぎていった。
大和「(どうしよう・・・・・・喜籐さんに誘われたからもしかして脈ありかと思ったけど・・・・・・)」
哀羅「(告白したいけど向こうはどう思っているのか・・・・・・それが怖くて言い出せない・・・・・・)」
大和・哀羅「あの!」
声がはもる。
大和「あ、喜籐さんから先にどうぞ。」
哀羅「大和くんの方こそ。私は後でいいから」
大和「そうか・・・・・・あのさ、変なこと聞くんだけどさ。」
哀羅「何?」
大和「今、好きな人とかいるの?」
哀羅「・・・・・・え!?」
大和「やっぱこの話無し!喜籐さんこそなんのはな・・・・・・」
哀羅「いるよ。好きな人。」
大和「な!?」
哀羅「まだ、告白したことないんだけどね。」
大和「そう・・・・・・なんだ・・・・・・ハハハ・・・・・・」
大和はそういいながら持って来たたこ焼きを口に運んだ。
大和「あっっ!!」
哀羅「大丈夫!?」
大和「大丈夫だって、水ないか?」
哀羅はカバンからミネラルウォーターを出して渡した。
哀羅「これでよければ、私の飲みかけだけ・・・・・・」
大和はミネラルウォーターを受け取ると急いで水を喉に流し込んだ。
哀羅「あ・・・・・・」
哀羅は顔を真っ赤にしていた。
大和「どした?」
哀羅「いやその・・・・・・そのミネラルウォーター、私の飲みかけなんだけど・・・・・・」
大和は間接キスを知ると途端に慌てた。
大和「あっわるい!ちゃんと話聞いてなくて!!」
哀羅「ううん、いいの。先に言えばよかったことだしね。」
大和「(くそっ・・・・・・またやっちまった。)」
大和は飲み干したペットボトルをごみを入れるビニール袋に入れた。その後、またシーンと沈黙が続いた。
大和「あーあ・・・・・・先越されたな・・・・・・」
哀羅「先?どういうことです?」
大和「ホントのことを言うと俺・・・・・・喜籐さんの事が好きなんだよ。」
哀羅「え・・・・・・」
大和「(あれ、今俺なんか言った?)」
哀羅は顔がさらに真っ赤になっていた。
大和「あ、ごめん!また傷つけることを言ったか!?」
哀羅は首を横に振った。
哀羅「そっか・・・・・・私と一緒だ。」
体育座りで満面の笑みを見せた。
大和「一緒って・・・・・・え・・・・・・?」
哀羅「私も、大和くんのこと、好きだよ。」
哀羅はベンチに座りなおした。
大和「ごめん、状況が追い付いていなくて・・・・・・」
哀羅「そっか、じゃあ簡潔に。」
哀羅は大和の手をギュッと握った。
哀羅「私たち、両想いだってコト!」
大和は握った手を見てぽかーんとしていた。
大和「(え、両想いって・・・・・・喜籐さん好きな人いるんじゃ・・・・・・もしかして、俺二股かけられてるとか・・・・・・)」
大和は手を離した。
大和「二股はよくないと思う!」
哀羅「二股?私他に好きな人いないよ。」
大和「他にいないの。でもなんで俺!?」
哀羅「最初は・・・・・・デリカシーないし入学式のあの事件は今でも忘れていないわ。」
大和「それは・・・・・・すまん。」
哀羅「でもね、演劇の練習を続けて分かったの。大和くんは努力家で諦めないところ。そして周りに優しいところ。後は私を救ってくれた本番のアドリブ。あれが決め手だったかも。」
大和「そうだったのか・・・・・・」
哀羅「でもこれで心の中のもやもやがなくなった気がする。まさか大和くんが私のこと好きだなんて信じられなかったから。」
大和「それは俺の方こそ、散々傷つけてごめん。こんな俺でよければお付き合いしてもらえないでしょうか。」
大和は深々と頭を下げた。哀羅も頭を下げた。
哀羅「こちらこそ、よろしくお願いします。」
哀羅が頭を上げた瞬間。ひゅ~と何かが上がる音が聞こえた。
哀羅「(ここで花火!?)」
哀羅は団子から聞かされた伝説の話を思い出した。
哀羅「(頬にキスをすれば・・・・・・)」
大和は上がる花火に視線が行っている。今なら大和にばれずにキスできると思った哀羅はそっと大和に近づいた。
哀羅「(あと、もう少し・・・・・・)」
哀羅が大和の頬にキスをしようとしたその時。
大和「花火、近くで見てみようぜ!」
大和が立ち上がってプールの飛び込み台に向かった。哀羅はバランスを崩してベンチに横になるように倒れた。
大和「・・・・・・何してるの。」
哀羅「イタタタ・・・・・・バランス崩して・・・・・・(も~なんで動くのよ!)」
しかしポフッという音が鳴り花火は上がらなかった。
大和「ありゃ?」
その後、放送がかかり、もう一度上げなおすこととなった。
哀羅「(よかった~助かった・・・・・・)」
大和はプールの水面下眺めていた。
大和「普通に見るのもいいけど水面下の花火は綺麗だろうな・・・・・・」
そして改めて花火が上がった。
大和「喜籐さん。花火があが・・・・・・」
大和が振り返った時、大和に駆けてきた哀羅が両手で大和の両頬を押さえ、花火が上がったタイミングで大和と哀羅の唇が重なった。大和はバランスを崩し二人ともプールの中に落ちてしまった。
大和「ぷはっ!何すんだよ!」
哀羅「ゲホゲホ・・・・・・しっかり支えてよ!」
大和「いきなり駆けてきたら・・・・・・って今・・・・・・キスしなかった?」
哀羅「・・・・・・何のことかしら。」
哀羅はそっぽを向いていた。
大和「こっちむいて言えよ。」
哀羅「イヤ。」
大和「だから、こっち向いて話せって。」
大和が哀羅を振り返らせると、哀羅は顔を真っ赤にしていた。
哀羅「!!」
哀羅はその場で潜った。しかしすぐに上がった。
哀羅「私、泳げなかった・・・・・・」
大和「何やってんだオマエは・・・・・・」
哀羅「だって真っ赤になった顔見られたくなかったから・・・・・・」
大和「じゃあホントにキスを・・・・・・」
哀羅「あれは事故!!事故だから!!」
大和「事故って・・・・・・」
哀羅「それじゃあ・・・・・・」
哀羅は大和の唇に唇を重ねた。
哀羅「これが、私のファーストキスよ。」
大和「おま!?」
哀羅「そろそろあがろ。服が体に張り付いて気持ち悪いし。」
大和「お前が突き落としたからだろ。」
哀羅が振り返ると大和はギョッとした。
大和「あ、あのさ・・・・・・一つ言いたいんだけどさ。」
哀羅は顔を向けた。
哀羅「何?」
大和「・・・・・・やっぱりくまさんパンツは幼すぎるからやめた方がいいんじゃ。」
哀羅はゆっくりと大和に向かって行った。そして・・・・・・
哀羅「ふんっ!!」
大和のあごにアッパーをかました。大和は宙に浮き大きな水しぶきをあげ、プールに落下していった。そして花火が上がったときこの組も・・・・・・
寝待「!?」
団子に唇を奪われていた。(ちなみに不発した一発目は互いに気づいていませんでした。)
第44話(完)
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