2年生編第16話(第41話)「一致団結」

文化祭の準備の最中、一年の大和と哀羅が劇ですれ違いのケンカをしてしまった。勉はけんかを止めようとしたのだが華にある作戦があると言われ、現在学校で劇の班での練習会を行っていた。


ロミオの父{勉}「貴様のような非常識な奴らと同じ空気を吸うなんて吐き気がする。」


ジュリエットの母{蓮乃}「こちらこそあなた方一家と同じ地域だなんて不愉快極まりないですわ」


?「はい、一回ストップ。真面野くん。もうちょっと感情込めて言わないと。」


今回の演出家は演劇部の次期部長で、双子沢のタカラジェンヌと言われているA組の「迫田 真(さこだ まこと)」である。凛々しい見た目、黒のショートカットから男性に間違われるが、女性である。


勉「もう少し感情込めて・・・・・・もっと皮肉を込めて言えばいいんですか?」


真「皮肉っていうか、相手に対して突っぱねるように言えばいいのでしょうか?」


勉「突っぱねるか・・・・・・」


勉は少し考えた。そして・・・・・・


勉「貴様のような非常識な奴らと同じ空気を吸うなんて吐き気がする。」


真「いいじゃないですか。その感じで行きましょう。」


勉「(去年、華にキツく当たった時を思い出してやってみたけど。こういう感じなんだな。)」


昔の自分のやったことを反省しつつ勉は練習を続けた。


真「よし、大体よくなった。今日はこの辺で終わりにしよう。」


勉「お疲れさまでした。」


勉は帰り支度をしていると、蓮乃が声をかけてきた。


蓮乃「お疲れさま、あのさ、この後時間あるかな?」


勉「別に用事はないけどどうした?」


蓮乃「この後、私に付き合ってくれない?」


勉「え、付き合うって・・・・・・」


蓮乃「演技の掛け合い。」


勉「あ、そっちね・・・・・・」


蓮乃「もしかして付き合うの意味勘違いしてた?」


勉「何で分かった!?」


蓮乃「私、エスパーだから」


勉「またか・・・・・・」


蓮乃「本当のことだからね。」


勉が蓮乃の演技の掛け合いの練習をしている中、華は一年の教室にいた。柱の陰に隠れてアンパンとパック牛乳を持っている。


華「(モグモグ・・・・・・哀羅ちゃん大丈夫かな・・・・・・)」


華の作戦はこれだ。昨日の電話に話を戻そう。


華「名付けて、あえて火をつけ燃え上がらせ作戦!」


勉「・・・・・・ごめん、詳しく教えてもらえないか・・・・・・」


華「つまり、そのままにしておくってこと。」


勉「ほっとくわけか・・・・・・」


華「ほっとくわけではないよ。もしケンカになったら私が止めるし勉は今、劇で忙しいでしょ。去年私も大変だったもの」


勉「・・・・・・まあ、それならいいけど何かあったら僕にすぐ報告してね。」


華「りょ~かい」


回想終わり、一口サイズになったアンパンを口に放り込んだ。


華「(それにしても哀羅ちゃん遅いな・・・・・・)」


華が牛乳パックにストローを差し、飲んでいると。


?「先輩・・・・・・こんなところで何しているんですか?」


後ろから女子生徒に声をかけられた。びっくりした華は牛乳を吹き出してしまう。


華「ゴホッゴホッ!!」


?「だっ大丈夫ですか!?」


振り返るとそこには哀羅の姿が。


哀羅「驚かせてしまい、すいません!」


華「ところで哀羅ちゃんこんなところで何しているの?」


哀羅「さっきまでお手洗いに行っていました。」


華「それなら待ってても来ないわけだ。」


華は哀羅の顔を見つめた。


華「哀羅ちゃん、よ~く聞いてね。昨日の大和くんの言ったことは・・・・・・」


哀羅「あ~そのことならもういいです。」


華「え?」


哀羅「私、決めたんです。彼に文句言われないようにもっと演技するって。だから昨日のことは忘れてください。」


華「そう・・・・・・なんだ。」


哀羅「では、私は演劇の練習に戻るのでこれで!」


哀羅はそう言い、その場を去ってしまった。


一方、勉は蓮乃との練習を終え、帰ろうと下駄箱に移動していた。


勉「さ、帰って勉強の続きを・・・・・・あそこにいるのは、大和くん?」


下駄箱に背を預けている大和を見つけた。どこかぼーっとしている。


勉「大和くん?」


大和「あ、真面野先輩・・・・・・」


勉「どうした、ボーっとして、何かあったのか?」


大和「僕・・・・・・喜籐さんに嫌われたかもしれないです・・・・・・」


勉「は!?」


その夜、勉は華に大和に聞いた話を伝えた。


華「そ、それって本当なの?」


勉「大和くんは朝、喜籐さんに謝ったらしいけど、いいからって突っぱねたらしいんだ。結構強い口調で・・・・・・」


華「そ、そんな・・・・・・まさか食い違いが起こっていただなんて。」


勉「食い違いって?」


華「哀羅ちゃんの口ぶりからして許しているみたいなんだよね。」


勉「そうなのか、なら大和くんにそう伝えないと・・・・・・」


華「ちょっと待って!」


勉「なんだよ・・・・・・」


華「私いいこと考えちゃった♡」


勉「またか・・・・・・」


華「このままほったらかしにしておこう。」


勉「それ、大和くんがかわいそうだろ・・・・・・」


華「ちょっと大和くんには痛い目に遭ってもらわないと、あの悪い癖は治らないでしょう。」


勉「まあ・・・・・・一理あるな。」


こうして勉と華はこの話を大和に伝えないことに。


文化祭の準備も中盤になり、両班とも忙しさを増していた。


女子生徒A「本番用の衣装できたよ~!」


団子「やった、待ってました~!」


こうして全員の衣装の試着会が行われた。寝待は紺色の衣装を着た。


寝待「どうだ?ロミオの衣装似合っているか?」


勉「似合っているんじゃないか?去年の王子の衣装もよかったけど。」


寝待「こういうの着るとテンション上がるよな~」


勉「そういうものかな・・・・・・」


寝待「お前なら理論的にどうちゃらこうちゃらとか言うんだろう。」


勉「そんなムード壊すようなこと言わないよ。それにモチベーションを上げる方法としては一理あるからな。」


寝待「お、お前がそんなことを言うとは・・・・・・」


三八「団ちゃんの着替え終わったよ。」


男子生徒は全員団子を見に振り返った。ピンクのロングドレスを身にまとった団子が現れた。


団子「どう、似合ってるかな?」


寝待「あ、おっう・・・・・・似合ってんじゃねえか。」


男子生徒A「ふざけんなよ果報!!」


男子生徒B「彼女のせっかくの衣装をあっ、おうで済ますなの!」


寝待「うるせぇな!そんないきなり褒められるわけないだろ!」


勉「・・・・・・あれって着付けにかなり時間かかったよな・・・・・・」


三八「うん、特にあの部分が・・・・・・」


勉「?」


三八「いやなんでもない・・・・・・」


そんな衣装話に花を咲かせている同じ時刻、一年生の演劇班は・・・・・・


男子生徒C「塵積、最近演技に身が入ってないな。どこかうわの空というか・・・・・・」


男子生徒D「最初は主役だからって張り切ってたのにな。」


男子生徒C「逆に喜籐さんはどんどん上達してるよな。」


哀羅「・・・・・・。」


哀羅は大和のもとに寄った。


哀羅「あのさ、最近の大和くん。劇に集中できてなくない?」


大和「え・・・・・・あの・・・・・・」


哀羅「最初の威勢はどうしたのよ。」


大和「だから、そのせいで喜籐さんに迷惑かけて。」


哀羅「・・・・・・せっかく本気になれたのに。」


大和「え、本気?」


哀羅「大和くんのあの発言があったから私は頑張れたの。あの時のことはもう許したんだから。」


大和「いや、あの時謝ったら素っ気ない態度で突っぱねてたじゃないか。」


哀羅「突っぱねた・・・・・・あ、そういえば日直で早く学校に行かなきゃって、だから・・・・・・」


大和はその場に座り込んだ。


大和「お前・・・・・・ふざけんなよ!いっつも振り回しやがって!」


哀羅「は!?勝手に勘違いしていたのはあなたの方でしょう!逆ギレやめてくれる!」


大和「お前だって言い方さえ間違わなければ勘違いせずに終わっていただろうが!」


哀羅「だから日直だからって言ったでしょう!そんな急いでいるタイミングで謝る大和くんが悪いでしょ!」


大和「ぐっ・・・・・・」


大和は確信を突かれ、言葉が出せなくなった。


男子生徒C「おい、塵積その辺にしとけって。周りの人がお前らのこと見ているぞ。」


大和・哀羅「え・・・・・・」


2人が周りを見ると、怯えた目をしていた人がたくさんいた。全員二人の痴話げんかを目撃していたからだろう。


大和・哀羅「ご・・・・・・ごめんなさい。」


二人は頭を下げて謝った。そして二人は互いに顔を見合わせた。


大和「喧嘩は後だ。」


哀羅「ええ、まずはこの文化祭の演劇を成功させるのが先!」


二人は握手を交わした。


大和・哀羅「共にやろう!そして必ず優勝しよう!」


こうして1年の演劇班は一致団結をしたのだった。


第41話(完)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る