第8話 重苦しい文化祭の準備

私立双子沢学園は2学期を迎えた。


寝待「よっ、真面野おはよう。」


勉「あぁ、果報おはよう。」


寝待「元気ないな。お前夏休みの間何かあったのか?」


勉「別に。」


寝待「俺なんか夏休みはずっとバイトだったぜ。まあ夏休みが稼ぎ時だからな。でも1日でいいから女の子と遊びたかったな~」


勉「・・・・・・・・・・・・。」


寝待「あ、あそこにいるのは百合根さんじゃないか?」


勉「僕、先に行くね。」


寝待「おい、百合根さんにあいさつしないのか?」


勉「そんな気分じゃない。」


寝待「あいつ、本当にどうしたんだ?」


勉「(クソッ、なんでこんなにイライラしているんだ)」


校舎内に入ると三八が向かってきた。


三八「あ、勉くんおはよう。」


勉「三八さんおはよう。久しぶりだね。」


三八「あのさ、華ちゃん見なかった?華ちゃんが欲しがっていた香水が手に入ったのよ。」


勉「・・・・・・知らない。」


三八「え、どうしたの。急に不機嫌になって?」


勉「今日日直だからもう行くね。」


三八「え、あ、うん・・・・・・?」


昼休み屋上でお弁当を食べる女子生徒会役員3人、しかし、勉は来ていない。


団子「そろそろ文化祭の時期だよね~」


三八「もうそんな時期ね。」


団子「ねえねえ知ってる?文化祭の伝説。」


三八「なにか伝説があるの?」


団子「文化祭の最後に花火が上がるんだけどその上がった直後に女性が男性にキスをするとそのカップルは永遠に幸せになるんだって。」


三八「それ、どこ情報?」


団子「類先輩から教えてもらったの。ちなみに先輩は実際にやってみたみたいよ。」


三八「へ~でもあまり広がってないけど。」


団子「もう一つ条件があって絶対男性にばれてはいけないらしいらしいよ。」


三八「そうだ、華ちゃん。勉くんにやってみたら?」


華「・・・・・・そうだね。できればだけど。」


団子「なんか元気ないけどどうしたの?」


華は夏休みに勉と喧嘩して2週間ほど会話すらしていないことを伝えた。


団子「え~!真面野くんと喧嘩した!?」


三八「喧嘩って2人が?」


華「喧嘩ではないけど隠し事をしたことがバレてね。」


三八「どうりで勉くんが不機嫌になるわけだ。」


華「やっぱり・・・・・・」


三八「で、何を隠し事したの?」


華「そういえばまだ話してないよね。このことを。」


華は2人に整形手術をしたことを話した。


三八「そうなんだ・・・・・・初めて知った。」


団子「私も長い付き合いだけど初めて聞いたよ・・・・・・」


団子は指をぽきぽき鳴らした。


団子「でも真面野くんには後でじっくり話さないとね。」


三八「団ちゃん!?」


団子「三八ちゃん。放課後、真面野くんをとっちめるよ!」


放課後、2人は勉を呼びにB組に向かった。


三「真面野くん、話があるんだけど。」


勉「僕、もう帰ろうと思うんだけど。」


団子「ちょ~っと時間もらえない?{勉に顔を近づける}」


勉「花寄さん怖いって・・・・・・」


3人は屋上に向かった。


団子「あのさ、華ちゃんのことなんだけどさ。」


勉「・・・・・・・・・・・・。」


三八「もう仲直りしてもいいと思うんだけど。」


勉「そんなこと、お前たちに関係ないだろ。」


団子「関係ないわけないじゃない!華ちゃんが今悲しんでいる状態なのに。」


勉「あいつの肩を持つのか。お前ら。」


三八「私はただ、2人にこれまで通り仲良くなってもらいたい。今の2人は何というか、怖い。」


勉「信用されていない奴とどう仲直りすればいいんだよ!」


団子「もしかして、整形したことを黙ったことを怒っているの?」


勉「整形に関しては怒っていないよ。アイツのこともあるだろうし。でも、アイツは僕のことを信じてくれなかった。ばれたら嫌われるかもしれないって・・・・・・」


団子「それは・・・・・・」


勉「話はそれだけか、もう無いなら帰るぞ。」


三八「ちょっと待って。」


勉「何だ。」


三八「そりゃあ誰だって隠し事は1つでもあるよ。私だって背中の傷のことは隠している。だからってそこまで華ちゃんを蔑むことはないんじゃないかな?」


勉「知らないよ。アイツは約束を破ったんだ。」


三八は勉にビンタした。


勉・団子「!」


三八「今の勉くんは、私が好きになった勉くんじゃない・・・・・・」


三八は涙をこぼしながら屋上を走って出た。


勉「・・・・・・ちっ!」


団子 真面野くん・・・・・・私も帰るね。


団子も屋上を後にした。

それから1週間たった後。1年生が体育館に移動となった。


青菜先生「え~と、今から演劇班と出店班に分かれようと思う。10月初めはみんなが待ちに待った文化祭だ。この学校は毎年それぞれの学年で劇をすることになっていてな。私たち1年生は白雪姫をやることになった。そこでだ。今から演劇班をくじ引きで行う。くろまるが演劇班。あかまるが主役だ。何も書かれていない人は出店班になってもらうぞ。」


生徒「は~い」


生徒たちは一斉にくじを引き始めた。くじの結果。


青菜先生「じゃあ白雪姫の主役は、男子は果報。女子は百合根に決まった。2人とも頼むぞ。」


華・寝待「はい。」


寝待「(嘘だろ!まさか百合根さんと一緒に主役やれるなんて!)」


寅之助「果報め、また百合根嬢と一緒とはけしからん。おまけにぼくちゃんは出店班だし・・・・・・ しかし、お前も出店班とはついてないな、真面野。」


勉「別に。(なにが文化祭だ。学校にいても何も面白くない!)」


次の日から演劇班は1-A組で演技の練習を行っていた。


寝待「{演技}キミ、大丈夫か! 心臓は、止まっている、死んでいるぞ。」


回生「はいカット、もうちょっと感情的に言ってもらえないかな?」


寝待「そうか?分かった。(言えるわけないだろ。百合根さんを前にして)」


回生「じゃあ最初からやり直しで、百合根さん起きて。」


華「ス~」


回生「あれ?本当に寝ている。」


寝待「お~い、百合根さん。」


華「ん、あれ?どうしたの?」


寝待「(寝ぼけた顔もかわいいな)練習中だよ。」


華「あ、ごめんなさい! 私寝てしまって」


男子生徒たち「(百合根さんかわいいな~)」


寝待「にしてもセリフが長すぎないか? 白雪姫ってここまで喋る話だっけ?」


男子生徒A「嫌なら俺が変わるぞ。」


男子生徒B「果報の代わりなんていくらでもいるからな。」


寝待「やるわい!こんなことで諦めてたまるものか。」


団子「なんか華ちゃん調子が悪そうだけど大丈夫?授業も上の空だし。」


華「平気平気。私もセリフ長いし頑張らないと。」


団子「(華ちゃん、やっぱり無理してる・・・・・・)」


一方1-B組に集まった出店班は


寅之助「やっぱり執事メイド喫茶がいいと思うな。」


女子生徒A「え~私は嫌。」


女子生徒B「スネオくんの個人的趣味でしょ。」


寅之助「誰がスネオだ!」


点睛「寅之助様!真面野が来ていません。」


寅之助「あいつ、帰ったのか?」


女子生徒A「そういえば生徒会の仕事があるって席を外したけど。」


寅之助「あっそ、別にいいけどな。話し合いに参加しなかった分当日働かせてやる。」


勉はすでに家に帰宅していた。


勉「はぁ、楽しくないな。早く3年間終わってくれないかな。 あっ、彼女できないと卒業できなかったっけ・・・・・・ なんかこの学校にいても特に何もないからな。」


勉はふとあることを考えた。


勉「・・・・・・学校辞めるか。」


勉の携帯が鳴った。


勉「はい、真面野です。」


寝待「真面野、ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」


勉「何だ?」


寝待「いや~百合根さんが劇に集中出来てないんだよな。なんか知らないか。」


勉「そんなことで連絡したのか。」


寝待「だって文化祭まであと一週間ちょっとしかないから。」


勉「僕に百合根さんのことが分かる訳ないだろ。用が無いならもう切るぞ。」


寝待「おい!」


電話が切れた。


寝待「なんだよアイツ!」


女子生徒C「果報くんどうしたの?いきなり怒鳴って。」


寝待「あっ、悪い。こっちの話。」


女子生徒C「ならいいけど。実は衣装が完成してね。着てもらえないかな。」


寝待「分かった。」


演劇班は被服部に頼んだ衣装を着ていた。


回生「お~果報くん結構似合っているじゃない。」


寝待「そうか。そういわれるとうれしいな。」


三八「華ちゃんの衣装着替え終わったよ。」


更衣室からピンクのドレス姿の華が現れた。


生徒たち「お~!」


華「どうかな?」


寝待「すごい似合うよ!さすが百合根さん。」


華「ありがとう。」


団子「どう、似合う?私のドレス姿。」


寝待「{棒読み}あ~似合う似合う」


団子「いいもんね~カドくんに褒められてもうれしくないもんね!」


寝待「花寄さんはいい加減に俺の名前を覚えろよ!」


生徒たち「あはははは!」


学生たちは夜遅くまでセリフの読み合いや動きの確認まで行った。


赤井先生「みんな、もうそろそろ帰りなさいよ。」


生徒たち「は~い」


回生「続きは明日ね。休日だけどみんな集合忘れないでよ。」


寝待「分かっているって。」


回生「特に果報くんは心配ね。」


寝待「え~!」


その日の夜 勉は家で退学届を書いていた。



勉「さすがに文化祭を放り出すわけにはいかないから。文化祭が終わってから提出するか。」



勉「もういいや、あとは明日やろう。明日は休みだしね。」


文化祭まであと1週間・・・・・・


女性「・・・・・・気持ち悪いのよ。」


勉「へ?」


女性「勉強ばかりしているあんたが気持ち悪いって言ってんの。近づかないでちょうだい。」


勉「そんな。でも、俺たち友達でしょう?今まで一緒に遊んでいたじゃない?」


女性「は?あんたなんて友達なんて一つも思ってない・・・・・・よ・・・・・・」


勉はベットで汗びっしょりになりながら起きた。


勉「はっ! 何だ、今の夢は・・・・・・ 昔・・・・・・だよな。あの女性誰だっけ?」


勉は考えたが夢に出てきた女性のことはよくわからなかった。


勉「母さん、ちょっと散歩してくる。」


勉は散歩に出かけた。


勉「(体を動かせば思い出せるかもしれない)」


華「寝坊した・・・・・・急がないと遅刻する!」


角で2人がぶつかった。


華「イタタタ・・・・・・」


勉「大丈夫ですか・・・・・・」


華「あ、勉くん・・・・・・」


勉「何だ、早く行けよ。」


華「うん。 あのさ・・・・・・」


勉「それと、僕学校辞めるから。」


華「え・・・・・・」


勉「早く行けよ。遅刻するんじゃないの?」


華「そうだね、じゃあ・・・・・・」


華はその場を走り去った。


勉「(・・・・・・ちっ、何でここまでイライラしているんだよ。僕は)」


華は学校に着いた。


三八「あ、華ちゃん。遅かったね・・・・・・ってどうしたの!?おでこが腫れているのとそんなに泣いて?」


華「私のせいだ・・・・・・私のせいで・・・・・・勉くんが・・・・・・」


三八「勉くんがどうしたの?」


華「学校をやめるって・・・・・・」


三八「え!?」


散歩から戻った勉は


勉「アイツ、泣いていたな・・・・・・ って何同乗しているんだ僕は。」


兼備「勉、懐かしいものを見つけたわよ。」


勉「何を見つけたの?」


兼備「小学校の卒業アルバムよ。ほら、お母さんかなり若いでしょう。」


勉「自分で若いって言うか・・・・・・」


兼備「あ、そういえば勉この子と仲良かったでしょう?」


勉「え、どれどれ・・・・・・あっー!こいつだ!」


兼備「びっくりした・・・・・・どうしたの、急に大声出して・・・・・・」


勉「夢に出てきた女の正体はこいつだったんだ。」


兼備「夢?」


勉「こっちの話・・・・・・」


勉は自分の部屋に戻り記憶を思い出していた。


勉「確かこの子名前なんだけっけな・・・・・・ 槍玉・・・・・・挙尾・・・・・・そうだ・・・・・・イライラしていた理由はそうだったのか。」


勉は自分のベッドに飛び込んだ。


勉「・・・・・・どうしよう、百合根さんにとんでもないことをしてしまった・・・・・・」


それから1週間が経ち、ついに文化祭本番を迎えた。


第8話(完)

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