片想い

めぐり

陽菜story


蝉の声が降ってくるようにうるさい今日。

私は授業が退屈でこのうるさい蝉の1匹でも見つけられないかと窓の外の木を凝視していた。


これがXであるからこの求め方は〜


ふと窓の外から黒板に目を移したつもりだった。けれど隣の席の裕真がじっとこっちを見ていた。すぐに裕真は目を逸らして、にまにましている。ただ窓の外眺めてただけなのになんで笑われなきゃいけないのかはわからない。私はわからなくて首を傾げる。なんでにまにましているのかは今すぐにでも聞きたいのだが、生憎今は授業中で聞くことが出来ない。とても不服だ。

だけど暑さのせいなのかほんのり火照っているその横顔がまた見てみたくなった。


キーーーンコーーーンカーンコーーーン


いつ聞いてもうちのチャイムは独特だとは思う。

けれど今はそんなことはどうでもいい。隣の君に、裕真に何故笑ったのかがとても聞きたい。でも同じクラスになって、隣の席になって、特別話したことないんだけどな。まぁいいや!よし聞くぞ!

「あ、あの!裕真!」

「ん?どしたー?」

「なんでさっきわt」

「ねねね陽菜〜!ここなんでこーなるの意味わかんない教えて〜。」

せっかく話してたところを邪魔されたことは少し嫌だが相手が結だから仕方ない。

私も結は大好きだから、裕真にはごめんやっぱなんでもないと言って裕真のもとを離れ結にさっきの授業を教えることにした。


まだ蝉の声はいったい何匹いるんだってくらいうるさいが、あんなにうるさかった日差しは多少ましになったと思いたい。一日が終わるのはとても早くて今日の授業はもう終わってしまった。裕真に聞けなかったことは少し心残りだが、裕真は部活に走って行ってしまった。放課後になって私はのんびり帰る用意をして靴箱に向かう。

バコッ パーン

相変わらずうちの中学のテニス部は張り切っている。裕真もそういえばテニス部だったなとふと目で探してしまっていた。あ、いた。目があったのかな、?

しばらく何をすることも無く、なんとなく眺めていた。

すると裕真がこっちに近づいてきた。

「どした?そんなに見て。授業中といい陽菜は謎だよな。あもしかして俺に惚れた?」

「おい裕真!!ふざけんなお前次女子と話したらレギュラー落としてやるからな!!」

「やっべ怒られるまたね!」

いや怒られてるんだけどって言うのは心の中にしまっておこう。言いたいことだけ言って、こっちは聞きたいこともあったのに台風のように練習に戻って行った裕真。多分これが私が裕真を気になり始めたきっかけだと思う。

高まる心には気が付かないことにして家に帰ることにした。


ピピピピピ

今日はいつもより30分早起きをした。

いつもは遅刻ギリギリだがもしかしたら裕真に会えるかもしれないという期待もあって朝が弱い私にしては頑張った。

裕真の家は大体しか知らないから不安だったが、学校に行くまでの一本道で前に裕真を発見した。

もうこれは話しかけようと少し早歩きで歩いていくと裕真の横には結がいた。普段だったら結に抱きついていたが、何故か今日は一定の距離を保ちながら学校に行くことしか出来なかった。学校に着くまで2人はすごく楽しそうに話していてとてももやもやしていた。

いいな、結は。

私だって結みたいに話したかったのにな。

そう思うだけでは変わることはないとわかっているけれどそれ以上の行動を起こす勇気は私には無かった。


もやもやした気持ちで今日は今まで以上に裕真と話せなかった。

だってあんなに楽しそうにしてるんだもん、私と話すより結と話したいんだもんね、、

そう思ったら昨日はあんなに気になった横顔も目も今日はまったく見たいとは思わなかった。

だってあんなに楽しそうに嬉しそうに結に向けている目と私に向けられる目は違うのだから。


いつの間にかもう放課後で今日は昨日よりも生暖かい曇天でそのうち、ぽつりぽつりと雨が降りだしそうだ。

早く帰りたいのに、今日に限って先生がみんなから回収したプリントを確認して職員室まで運んでくれと頼まれてしまった。それも軽く100枚近くもあるのに。

こんなの女子に頼む量じゃないよねと思いながらもしぶしぶ運ぶことにする。

あーこれは3往復はしないといけないかな、と思っていると後ろから急に声をかけられた。驚いて振り返るとそこには知らない男子がいた。あなたと話したことありましたっけ?と思っていると

「え、それ全部1人で運んでるの?手伝うよ一緒運んだ方がすぐ帰れるし雨降りそうだし」

そう言ってほとんど持ってくれた。職員室までお願い。そう言うとにこっと笑顔で、らくしょーらくしょーと言いながら、次の瞬間にはプリントを宙に舞わせていた。

いきなりのことでよくわからないでいるとその男子がつまづいたようで私が声をかけるよりも先に

「初対面の人の前でこんなドジ踏むとか俺ついてないわ〜。今見たの2人の内緒だからね!」

そう言って恥ずかしそうに笑いながら職員室にスタスタ運んで行った。


帰ろうとすると隣の教室からさっきの男子が出てきたからお礼を言って一緒に途中まで帰ることにした。

名前は遥人って言うらしい。

すごく話しやすくて教室からすぐに下駄箱に着いた。


そういえば裕真はまた私に気づいてくれるかな


少し期待をしてテニスコートを見たけれど、裕真はサーブミスを何度もしていた。

今日は調子が悪いのかな、ミスを見られるのは嫌だろうから、裕真を見るのは今日は控えよう。

「どうかした?」

遥斗から尋ねられたがぶんぶんと首を横に振った。

じゃぁ帰ろっかと学校からの一本道まで一緒に帰った。


あーあ。もっとちゃんと裕真と話したかったのにな。

ほんとは話したいし、放課後とか休みの日でも遊びたいし、なんなら休み時間でもいいから。

なんでこんなに勇気が出ないんだろ。話したいのにな。

よし!明日はちゃんと学校着いたらおはよう!って挨拶しよう。それからそれから、、

とにかく明日はいい一日になりますように。

そう考えているとうつらうつらと睡魔に襲われいつの間にか眠ってしまっていた。

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