69話 緊急招集と悪魔の計画変更




 しばらくして、村長むらおさスーさんが、村人達に言う。


「皆の衆、もうええか、気が済んだか」


と尋ねると、村人達は、その村長むらおさの言葉に、黙った頷


いた。


それを見て、村長むらおさスーさんが、俺達に


「冒険者様、ありがとうごぜいました、もう結構です」


と言い、改めて俺達に深々と頭を下げた。


「じゃ、帰りましょ」


とシェリーさんが言うので、俺は村人達に会釈をし、スカイバリアン


とマリンバリアンそれに、海坊主の遺骸を小槌に収納し、オトアを


フェードアウトさせ、俺自身も、コンバットスーツをリバースした。


そして、帰ろうとシェリーさん達と、馬車へ向かおうとした時だっ


た。


「あのう~、田舎の村で、なんもねーけんど、お昼を食べていっ


て下さらんか」


村長むらおさスーさんが、俺達を呼び止め言う。


(ああ、そーいやもうお昼か)


と思いつつも、その言葉に俺は振り向き、


「いえいえ、報酬はちゃんといただいてますから」


と断り、去ろうとすると、村長むらおさの孫娘のメイリンさんが、


俺の腕をつかみ、


「それでは、村のオラ達の気持ちがおさまらねぇ、後生だから


食べて行ってけろ」


と懇願するその言葉に、俺は少し考える。


(んーっどうしようかな)


って思って、チラっと、シェリーさん、タミーさんの顔見ると、


2人は俺に近づき、俺の手をつかんでいるメイリンに笑顔で


シェリーさんが言う。


「そこまで言われたらね、テンタ君」


と言いながら俺の方を振り返る。


そこに、タミーさんが続けて、


「誰かさん達が、散々待たせるから、私、お腹すいたぁ~」


って言われ、俺も、俺の側に居る三毛猫オトアもその言葉に


恐縮し、


「そうですね、せっかくおっしゃっていただいたんで、


いただきましょうか」


と俺が答えると、メイリンさんは、急に明るい笑顔へと


代わり、


「こっちさ、来て」


と俺の手を引き連れて行くのだった。

















 東屋と併設して立っている小屋、つまり、村の集会場に


案内された俺達はその小屋でお昼を頂くことになった。


大きな丸いテーブルに、俺、三毛猫オトアは、テーブルの上、


その隣にシェリーさんと、タミーさんで、その隣のレツ


さん、ダイさんは立ったまま。


お昼をごちそうになる。


「いただきます」×6


皆で手を合わせてお昼を頂く。


 出された料理は……包子バオズ


俺達の元の世界の中国と同じ肉まんのようなもの。


 因みに、具ない物は饅頭マントウと言うらしい。


・ 肉が入っているのは肉包ロウバオ


・ 刻んだ葉野菜が入っているのが菜包ツァイバオ


・ チャーシュー風を包んだ叉烧包チャーシャーバオ


・ あんこが入った豆沙包ドウシャーバオ


等を頂いたが、どれもおいしい。


 ただ、日本の肉まんと違い、蒸しパンの部分には味がない


が、触感はかなりむっちりとしていて、日本の肉まんとは


違うおいしさがある。


 そんな、素朴だが、おいしいお昼をごちそうになっている


時に、俺にヴィクセンさんから念話が入る。


≪テンタ君、いまどこ?≫


とヴィクセンさんに尋ねられたので、素直に


≪今は、『天堂ティエンタン』から南に2km離れた美魚メイリーユー


村に居ますけど≫


と答えると、


≪あっ、よかった、そんなに離れたないわね≫


≪テンタ君、オトアちゃんは、至急こっちに戻って来て≫


と少し慌てたような言い方をするヴィクセンさん。


≪急に戻れって……、いったいどうしたんですか?≫


俺は、そんなヴィクセンさんに事情を聞くと、


≪詳しいことは、こっちについてから話すから≫


≪兎に角、冒険者ギルド東支部長からの緊急招集よ≫


と言うので、


≪えっ、じゃぁ、シェリーさんとタミーさんもですか?≫


と聞き返すと、ヴィクセンさんは、


≪いいえ、シェリーとタミーは、いいの、兎に角A級


冒険者に対しての緊急招集だから≫


と言うので、何があったかわからないが、兎に角俺は


戻ることにする。


「シェリーさんとタミーさん、俺、東支部長からの


緊急招集を受けたみたいなんで、先に帰りますね」


「オトア行くよ」


と言いながら、シェリーさんとタミーさんの返事も聞かずに


集会場を飛び出し、


赤着せきちゃく!」


そして、三毛猫オトアが、


「フェードイン!」


と叫びながら俺のベルトバックル部分に吸い込まれる。


「宇宙シェリフバルバン!」


とキメのポーズを取り、すぐさま左太腿装甲から、小槌を出して


「スカイバリアン!」


とスカイバリアンを出し、急速浮上及びフルスロットルで、


天堂ティエンタンを目指すのだった。












------(第三者視点))------☆




 時間は少し戻って、6月末のテンタが、謎のジグラットを調査


しているころ。


 当初、ダリウス(オトア体)以下悪魔達は、悪魔男爵バンバが


テンタを倒し、三毛猫オトアの魂を奪還したのちに、テンタ達の


居る大陸を西方向に移動してアルセダイン王国(エルフ系)と


カザード国(ドワーフ系)を制圧し、そのまま聖クリスタル国


の北支部まで攻め、そこも制圧し、そこから、聖クリスタル国


の北側から攻め入り、 同時に、悪魔子爵ゴースンが、三日月


魔王国の魔人を従え、そのまま、海を渡って晋王国及び聖クリ


スタル国の東支部を制圧し、次いで北晋王国、南晋王国を制圧。


そして、そのまま西に向かい、聖クリスタル国の東側から攻め


入る。


 また、悪魔伯爵シャッキーも大陸南の海に浮かぶ島にある


ネシア王国を占領し、そのまま海を渡って、デンスアーラ


共和国(獣人系)を制圧し並びに聖クリスタル国南支部を制圧


し、そのまま一気に進路を北に取り、聖クリスタル国の南側よ


り攻め入る。


そして、悪魔公爵ヤブーが、大陸西のバーン王国、ルベル国


ドウブ国、コラクル国の4ヶ国を制圧後、聖クリスタル国の


西支部をも制圧し、聖クリスタル国の東側から攻め入る予定


であったが、各悪魔とも、冒険者特に、転生者達の活躍で、


当初の予定が進まないでいた。


 そんな中、悪魔男爵バンバが、テンタと、テンタに協力す


るクリスタルマン達に倒され、当初の予定を見直さねばなら


なくなった。


 そこで、当初の計画に加え、悪魔子爵ゴースンはアルセダ


イン王国(エルフ系)を、悪魔公爵ヤブーがカザード国(ド


ワーフ系)の国を新たに制圧することを咥えると言う計画


に変更となったのだ……が。














 ここは、テンタ達が居る大陸の東にある北晋王国、晋王国、


南晋王国の3つの国の海の向こうにある魔人と呼ばれる人達が


納める国、三日月魔王国の北部にある山城跡、かつて人鬼が


居城していた城跡に、悪魔子爵ゴースン達が、ここを本拠地と


定めた所。


「オミクロン、首尾はどうじゃ」


と悪魔子爵ゴースンが、配下のオミクロン(コブラの頭の男)


に聞く。


「はは、ここの守備隊をはじめ、周辺の村は抑えたのですが、


そこから、この地を納める上月(かみつき)藩の掌握には、


今だ手こずっております」


と悪魔子爵ゴースンの問いに、オミクロン(コブラの頭の男)


が言う。


「この国には、冒険者がおらんと言うのに、なぜ手こずって


居るのじゃ」


のゴースンの問いに、


「はっ、魔人は、自身の体を戦闘隊形に変え戦える種族です


ので、この辺の人間(村人)にレッサーデーモンを憑依させた


だけでは、到底かないませぬ」


とオミクロン(コブラの頭の男)の返答に、


「んーっ!」


と苦虫をかみしめるように唸るゴースンに、プサイ(顔がバ


ラの花で体は茨で出来た女)が、進言する。


「ゴースン様、ここに元々いた人鬼を利用なさるのはどうで


しょう」


その進言に、ゴースンは目を見張り言う。


「んっ!?、滅んだのではないのか」


その問いに、プサイ(顔がバラの花で体は茨で出来た女)が、


答える。


「いえ、滅んではおりませぬ、わずかながらではありますが


生きながらえた者達がおりまする」


そのプサイ(顔がバラの花で体は茨で出来た女)の言葉を


聞いて、オミクロン(コブラの頭の男)が、口を挟んだ。


「数は!?」


その言葉にプサイ(顔がバラの花で体は茨で出来た女)が、


ちらっと、オミクロン(コブラの頭の男)の顔を見て言う。


「20人ほどかと」


その言葉に、オミクロン(コブラの頭の男)が急に怒った


ように言う。


「馬鹿か、たった20人ほどで何が出来よう!」


その言葉にプサイ(顔がバラの花で体は茨で出来た女)は


冷静に言う。


「はい、足りませぬ……足りませぬが、足らない分は補え


ばよろしいかと」


そのプサイ(顔がバラの花で体は茨で出来た女)の言葉に


さらに、オミクロン(コブラの頭の男)が、


「補う!?……どうやって」


と高圧的にプサイ(顔がバラの花で体は茨で出来た女)に


言い返すが、プサイ(顔がバラの花で体は茨で出来た女)


はニコリ笑って言う。


「この国には、あやかしと呼ばれる魔物達がおりまする、


そのあやかしの中から魔人に対抗できる強力なあやかし


達だけを選び、利用すれば可能かと」


そこまでの言葉を聞いて、悪魔子爵ゴースンが言う。


「なるほどな、確か魔人どもと戦った人鬼達もその


あやかしどもを戦いに利用したと聞く、よしプサイよ、


早速それを実行せよ」


とゴースンの命令に、傅きながら、


「はっは」


と言って、その場を足し去るプサイ(顔がバラの花


で体は茨で出来た女)を目で見送った、ウプシロン


(バッタの頭の男)と、ファイ(アリの頭の男)と


、カイ(サボテン頭の男)3人が、悪魔子爵ゴース


ンの前に進み出て、そのうちのウプシロン(バッタ


の頭の男)が言う。


「ゴースン様、我等にもご提案があるのですが」


その言葉に、ゴースンが、


「何じゃな、申してみよ」


と言うと、ウプシロン(バッタの頭の男)が言う。


「この三日月魔王国は、魔人族が治め、他の国のよ


うに、冒険者の手を借りて、魔物を退治することは


致しておりませんんが、ただ、貿易のため、人や


物の行き来は行っておりまする」


その言葉に、ゴースンが頷き、


「そうじゃな」


と答えると、ウプシロン(バッタの頭の男)は


続けて言う。


「人や物の交流があると言うことは、我等が三日月魔


王国を手に入れんと行動を起こせば、当然、その情報が


他国に知れることとなりましょう」


その言葉に、ゴースンが、


「確かにな」


と言うと、


「その話を聞いて、他国と言うより、聖クリスタル国


……が動かぬとも、冒険者どもをこの国に派遣してく


るやもしれませぬ」


とウプシロン(バッタの頭の男)の言葉に、ゴース


ンは、頷き、


「そうよのう、当初は速やかにこの国を制圧するつもり


じゃったが、こうも時間が掛かっては、その恐れも出て


こよう」


と答えると、そのゴースンの言葉に、ウプシロン(バッ


タの頭の男)は、身を乗り出し言う。


「そこで、我等が思うに、先に先手を打ってはと思うの


ですが……」


その言葉にゴースンが、身を乗り出し言う。


「先手?とは」


そうゴースンに聞かれたウプシロン(バッタの頭にの男)


に聞くと、


「かつて、我等の国、チョーラ帝国があった場所にある


オークとオーガーを生み出していたあの装置を使い、


大量のオークとオーガーと、レッサーデーモン達を使い


先に、晋王国を攻め、あわよくば晋王国並びに北晋王国


と南晋王国を抑えることが出来るやもしれませんし、少


なくとも、ここ三日月魔王国をゴースン様が掌握する


までの時間稼ぎができましょう」


そのウプシロン(バッタの頭にの男)の言葉にゴースン


は、感心するように頷き、


「なるほどな……」


そして、


「相分かった、その件、其の方達に任せるといたそう」


と言うゴースンの言葉に、ウプシロン(バッタの頭の


男)と、ファイ(アリの頭の男)と、カイ(サボテン


頭の男)3人が、


「はっはぁ」×3


と頭を下げ、悪魔子爵ゴースンの前から去って行くの


だった。


















 ウプシロン(バッタの頭の男)と、ファイ(アリの頭の男)


と、カイ(サボテン頭の男)3人は、晋王国の王都、きんから


南に数千キロ進んだ南晋王国との境界に近い山深い場所に居た。


「どのへんだ~ファイ?」


と、ウプシロン(バッタの頭の男)が、ファイ(アリの頭の男)


に聞くが、ファイ(アリの頭の男)は、その言葉に返事もせず


に、頭に付いたアリの触角を小刻みに動かしながら、あたりを


捜索していたが……。


 突然、体をピクっとしたかと思うと、腕を2本から4本に増


やし、その腕に鍬を持ち、その鍬を猛烈に振るって穴を掘り始


めた。


\\\ザッ、ザッ、ザッ///


 あっという間に地中深くトンネルを掘る。


そして、地中のトンネルから、地上に居るウプシロン(バッタ


の頭の男)とカイ(サボテン頭の男)に言う。


「あったぞ~!」


その声を聴き、地上に居るウプシロン(バッタの頭の男)と


カイ(サボテン頭の男)は、ファイ(アリの頭の男)が掘っ


たトンネル中に急いで入って行くのだった。













 それから数日が経って、ウプシロン(バッタの頭の男)


と、ファイ(アリの頭の男)と、カイ(サボテン頭の男)


3人は、地下に居た。


「よし、これで装置は起動するはずだ」


とウプシロン(バッタの頭の男)が言うと、では早速起動


させようと、ファイ(アリの頭の男)が言い、2人は側に


ある椅子にそれぞれ座って、装置に自身の魔力を注ぎ込ん


だ。


(((((ウィ~ン、ウィ~ン)))))


作動音と共にいろんなランプが光だした。


 すると隣にある、球場ぐらい広い広場にある、2つの筒


から、次々とオークとオーガが生まれていった。


 このオークとオーガは、今でこそ魔物と呼ばれ、人々に


意味嫌われる存在だが、元々は、7千年前のチョーラ帝国


が、オークは農作業用に、オーガーは戦闘員ように作られた


ホムンクルス(人造人間)だった。


ウプシロン(バッタの頭の男)と、ファイ(アリの頭の男)


と、カイ(サボテン頭の男)3人は、その太古の装置を修復


稼働させたのだった。













 ウプシロン(バッタの頭の男)と、ファイ(アリの頭の男)が、


魔力を注ぎ作ったオークとオーガは1,000体づつ。


そのうちのオーク100体とオーガー100体をカイ(サボテン頭


の男)が強化改造し、オークゼネラル99体とオーガゼネラル99


体に変え、また、残りのオークゼネラル1体とオーガゼネラル1体


を再強化し、オークキングとオーガーキングに変えた。


そして出来たオークゼネラルとオークキングにオーガゼネラルと


オーガーキングには、それぞれ ウプシロン(バッタの頭の男)


と、ファイ(アリの頭の男)下僕であるレッサーデーモンを憑依


させ、それぞれのオークキング、オーガキングには、それぞれ


オークとオーガをコントロールするための杖を与え、


「オークとオーガーよ我らの都を取りもどせ!」


とウプシロン(バッタの頭の男)がオークとオーガ達に号令をか


け、地下の広場から地上へと転送した。


 2千ものオークとオーガの軍団は、そのまま北に進軍し、行く


先々にある村を襲うのだった。















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