~異世界転移~ 彼女のカラダを取り戻す(何故か異世界でヒーローやってます)

グリーンピースの豆ごはん

第1章 異世界出会い編

0話 プロローグ



 


 俺は、日向天太ヒムカイテンタ普通の高校2年生……。


 いや、少しばかり普通じゃないかも。


 それは、俺が小学4年生の時、俺のクラスに転校してきた涼風響スズカゼオトア


を一目見て、好きになってしまったこと。


 好きになったこと自体は普通なんだけど、彼女のことがあまりに


好きすぎて、俺はろくに口が聞けず、ただ、ただ、遠くで彼女を見


つめるだけしかできない。


 あげく、彼女の登校下校時に、さりげなく後を追ってみたり、


彼女の家の近くをうろうろしたり、自分でもわかってるんだけどね……


これがストーカー行為なんだと。


 やめられないんだよね……。


 まぁ、一応、彼女には見つからないようにはしてるんだけど。


 そりゃ、何度か自分の思いを伝えようと考えたさ。


 小中学校の卒業式なんかに告白しようと考えたり、自分の思いを


手紙にして、渡そうかと思ったりもした。


 如何せん、俺……字が思いっきり汚いのよねぇ~、それに彼女の前


に立つと、体が硬直して固まってしまうし、どうしようもないんだよ。



 









”キ~ンコ~ン、カ~ンコン”



 この日の授業が終わり、俺が帰ろうとしていると、教室の扉を


”ガラ~”と開けて、上級生らしき女生徒が叫ぶ。


日向天太ヒムカイテンタってどいつ!?」


俺が声の方に振り向くと、そこには涼風音々スズカゼネネ……。


涼風響スズカゼオトアの1つ上のお姉さんだった。


 振り向いたと同時に彼女と目が合うと、そのまま教室にズカ


ズカ入ってきて、俺の前に立ち、俺をジロジロと見る。


「あんた、いつもうちの家の周りウロウロしている


じゃない?」


その言葉に、


(ヤバァ~イ!!)


焦る俺。


 しかし、家の周りをうろついていることを責めるのかと


思いきや。


日向天太ヒムカイテンタってしらない?」


と聞いてきた。


 俺は委縮しながら小さい声で答える。


「ぼ……くです」


「あん!?」


俺の声が聞き取れなかったのか、威圧的に聞き返して

くる。


 俺は、半ばやけくそで、


「僕です!!」


と大声で言うと、


「あっ、そ、ちょっと顔貸しな~」


と言いながら指で”こっち来い”のサインを俺に送る


音々ネネさん。


「あっ、はい……」


俺は、大急ぎでカバンを取り、音々ネネさんの後を


着いていった。



 



◇◇◇◇◇








 音々ネネさんの後をついて歩きながら俺は考える。


 涼風音々スズカゼネネさんは、涼風響スズカゼオトアの姉であり、


1学年上の生徒会長。


 頭脳明晰、成績が優秀だけでなく、運動神経抜群で美人ときて、一見、


非の打ち所がない人なのだが……。


 唯一、欠点……つーか、正義感が異常に強い人で、うちの学校のブラッ


ク校則を変えさせるため、校則を変えないと言う校長先生や、PTAなど


の大人相手に論破して校則を変えさせたり、ある時は、まじめな生徒から


カツアゲする不良グループに対し、説教した挙句、その説教に切れた


不良7人を1人で相手して、病院送りにたと言う、わが校の伝説の人で


ある。



(やっぱ……オトアをつけまわしたってんで、俺、しめられる


のかな?……にしても、6年もの間何も言ってこなかったのに……な)


などと、考えているうちにある所についた。


『鈴鳴神社』うちの高校の近くにあるり、鳥居をくぐると、数歩で本殿と


言う小さな神社。


 音々ネネさんと鳥居をくぐった時、本殿の右脇に人影が見えた。


(んっ!!あれは……)


 そう、俺のあこがれのひと涼風響スズカゼオトアその人


だった。


 音々ネネさんは、オトアに目で合図を送ると、


オトアがそれにうなづく。


「じゃぁ~、後はよろしくw」


そういうと、踵を返して帰っていった。


「えっ!」


(どう言うこと!?)






◇◇◇◇◇






 緊張の面持ちでオトアが俺に近づいてくる。


 オトアの緊張が俺にも伝わり、俺はますます緊張し体が


固まる。


 オトアに声を掛けたいが、声が出ない。


 少しの沈黙の時間。


 多分、1~2分だろうけど、俺にはすごく長く感じた。


「あっ、あの~……日向ヒムカイ君……」


「あっ、はい……」


 オトアの絞り出すような言葉に、俺は素っ頓狂すっとんきょう


返事をしてしまう。


(俺だめだよな)


すると、思い切り息を吸ったオトアが一段と大きな声で、


「後悔したくないから、勇気を出して言うね!私、日向ヒムカイ君の


ことが好きです、付き合ってください!!」


 一気に、まくしたてるように言う。


しばらくの沈黙の間。


「だ…めですか?」


不安そうに、上目遣いで聞き返す、オトアに、俺もやっと


声が出せた。


「駄目じゃないです!」


「えっ!」


それを聞いたオトアが、驚きそして困惑したような顔をした。


(ん……っ、聞えなかったのかな?)


と思ったので、も一度大きな声で言う。


「駄目じゃないで~すっ!!」


俺の言葉に、少し落胆気味に、オトアがボソっと言う。


「そう言う言い方じゃなくて……」


「えっ!」


オトアの呟きに、固まる俺。


「なんか、私とイヤイヤ付き合ってくれるみたいに聞える~ぅ!」


と少々ふてくされて言うので、俺は考える。


(えーこういう時って、何が正解なんだ?)


しばらく考える俺。


(えーと、こういう場合、ドラマや映画では……)


で、絞り出した答えが……。


「僕も涼風スズカゼさんが大好きです!喜んでお付き合い


させてくださいw」


と頭を下げて言ってみた。


(これが正解であってくれ!)


「わーいwうれしい~w」


俺の答えを聞いて、満面の笑みでいきなり俺に抱き着く、オトア


 俺は、正解を出せたと言う安堵感と、オトアに、いきなり抱き


着かれた恥ずかしさで、急に頭に血が上り、顔が真っ赤になった。


 そして、その後の記憶がなくなる。


 気が付くと家にいた。


(これは、夢だったんだろうか……)






◇◇◇◇◇






 オトアから告白された……俺が好きだと言わされた。


ってどっちでもいいんだけど、それからの俺の生活は一変する。


 以前までは、高校へ通うバスの中では、オトアが前の席に座り、


俺はそれを後ろの席から、そっと見つめるだけだったんだけど、今はバス


の2人掛けの席に並んで座り、おしゃべりしながらの登校。


 帰りは、高校近くの『鈴鳴神社』の裏手にある、ため池を半分埋めて


できた公園で、ベンチに腰掛けてのおしゃべり。


 毎日が夢のようだ。


 そんなある日、いつもの公園でおしゃべりしてた時のことだった。


「あれぇ~なにかな?」


と公園の前にある池の方を指さす。


「んっ!?」


俺がオトアの指さす方を見ると、そこには、何やら光る物体


がぷかぷかと浮かんでいた。


「何だろう……あれ取れないかな、天太テンタ君」


オトアが言うので、


「んっ?」


俺は、オトアの言葉にあたりをキョロキョロ見回し、


「ちょっと、待っててオトア


と言いながら、ベンチ近くにあった壊れた竹ぼうきの柄を見つけ、


それを取って、公園と池の間にある柵を越え、竹ぼうきの柄を使い


光るものをたぐり寄せる。


「んっと、もうちょい……よし!」


最後は、竹ぼうきの柄にひっかけてそれを池からすくい上げた。


オトアも俺のそばに来て、それを眺める。


「何だろう?」


と俺が言うと、俺がすくい上げた物体を見て、オトアが言う。


「……魔法の……ランプっぽいねw」


「魔法のランプって!」


 オトアの言葉に俺はそう言い返すものの、竹ぼうきの柄に


ひっかけた部分が魔法のランプの持ち手に見える。



「ねぇ、擦ったら魔人が出てきたりしてw」


「まさかねっ」


と少し半笑い気味に言う俺に対して、オトア


「貸して、天太テンタ君」


「いや、ばっちーぞ」


俺の忠告も聞かず、オトアは竹ぼうきの柄にひっかけた、


”魔法のランプ”もどきを手に取り、公園の水場に持っていき洗う。


”ジャー”


「っと、これできれいになったかなw?」


とスカートのポケットからハンカチを取り出し、それを拭こうとした。


「おいおい、やめとけオトア!」


思わず俺が止めようと声を掛けるが、オトアはにっこり笑って、


「だって、魔法のランプだったら、いろんな願いを叶えてもらえるで


しょw」


と無邪気に俺に言う。


(いやいや、そんなのがこの日本にあるわけないっしょ)


と、俺が心でオトアに突っ込んでいる間に、オトアは、


ランプをハンカチで拭く。


”キュッキュッキュッ”


と、


次の瞬間、



ランプの口の部分から、黙々と黒い煙が立ち込め、あっという間に俺


オトアを包み込んだ。


「キャー!!」


「うっわ!」













 気が付くと、俺達を包んでいた黒い煙は消え、あたりは赤茶けた


土と岩だらけの場所にいた。


「ここ……どこ?、天太テンタ君」


オトアが俺に訪ねてくるが、俺は首をかしげ、


「さぁ……」


としか言えない。


それを見たオトアが周りをキョロキョロ見て言う。


「アメ……リカ?」


「アメリカ?って……なんでそう思うんだよ」


と俺がオトアに聞き返すと、


「だって……なんかここ、グランドキャニオンぽくない?」


と言う。


(確かに、赤茶けた岩ポイ物が並んではいるが……)


「グランドキャニオンって渓谷だろ?」


と少しあきれたように俺が言い返すと、


「じゃ~異世界?かな」


オトアが言うので、


「異世界って……剣と魔法のあの世界かい?」


「うん、うん」


俺の質問にうなずくオトアを見て、


「にしては……全然、殺風景じゃない?」


と再び問い直すと、


「そうよねぇ~、イメージじゃないよねぇ」


 俺とオトアの共通認識として、黒い煙に包まれた時、


体が一瞬ふわりと浮かんだような感覚があったので、


どこかに飛ばされた……。


って言う思いはあるが……。

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