79日目 ヒロの家

 6月26日、修平は今週の水曜日からの期末テストに備えて、ヒロの家で勉強するために、ヒロの家に向かっていた。

 以前にも一度ヒロの家でテスト勉強したことあるが、そのときヒロはまだ男だった。ヒロが女の子になってから行くのは初めてで、ヒロから誘われたとはいえ、女の子の家に行くと思うとちょっと緊張する。


 ヒロの家についてチャイムを鳴らすと、ヒロが迎え入れてくれた。ヒロは、白のシフォンブラウスにピ水色のスカートを着ていた。

「いつもにまして女の子っぽいな。」

「そうでしょ。修ちゃん好みかなと思って、これにしたの。」

 以前、ヒロと話した彼女ができたら、デートに着てきてもらいたい服装の話を覚えていたみたいだ。あの時は、同じ男同士理想の彼女について語り合っていたかと思ったが、リサーチされていたみたいだ。

 家に上がり、ヒロの部屋に向かう途中に、リビングからヒロのお母さんが顔をみせた。

「あら、大森君、いらっしゃい。」

「お邪魔します。」

 以前にもあったことのあるヒロのお母さんだが、ヒロが女の子になってから改めて見ると、よく似たていることに気づいた。そのことをヒロに伝えると、

「女の子になってからよく言われる。男の子は母親に似るっていうけど、改めて実感したよ。」


 ヒロの部屋に入り、勉強を始めることにした。以前は来て早々に「ゲームしよう。」って言ってヒロから怒られたこともあるが、最近は勉強がわかるようになってきて、そんな気も起きなくなった。

「意外と部屋は前と同じなんだな。もっと女の子らしい部屋になってるかと思った。」

 ヒロの女子の制服がある以外は、以前来た時と変わらない部屋の様子をみて修平は言った。

「意外だった?修ちゃんはこっちの方が好きだと思って、あえて変えずにいたよ。」

 たしかに、ぬいぐるみがいっぱいあったりして、ピンクのカーテンだったら落ち着かなかったと思う。

「まあ、とりあえず勉強しよう。まず英語から教えて。」

「修ちゃんも変わったね。前はすぐにゲームしたいって言ってたのに。」


 勉強を始めて1時間ぐらいしたときに、部屋をノックする音がきこえた。

「おやつ持ってきたよ。大森君、足りなかったら言ってね。まだあるから。」

 ヒロのお母さんが、手作りと思われる焼きたてのパウンドケーキとカルピスをもってきた。

「ヒロ、フォーク持ってくるの忘れたから、キッチンからもってきて。」

 ヒロはお母さんにいわれて、部屋を出て行った。テーブルにケーキを置きながら、ヒロのお母さんは修平に話しかけた。

「ヒロが女の子になって、驚いたでしょ。私も好きな人のために女の子になりたいって聞いたとき、私も驚いちゃった。これからもヒロと仲良くしてね。」

「ええ、まあ。」

 仲良くするのは、友達としてなのか恋人としてなのか、修平は判断できなかったのであいまいな返事を返した。


 勉強もひと段落したところで、

「修ちゃん、息抜きにすこしゲームする?」

 ヒロの方からゲームに誘ってきた。

「せっかくだし、やろうか。」

 久しぶりにヒロと並んでゲームを始めた。ヒロとは家でゲームしたこともあるし、ゲーセンにも一緒に行ったことはあるが、女の子になったヒロと並んでゲームするのは初めてだということに気づいてしまうと、ちょっと緊張してしまう。

 そんな修平の心の迷いがあったせいか、ゲームで負けてしまった。

「修ちゃん、勉強ばかりして、弱くなったんじゃない?」

「今のは手加減してあげたの。次は本気出すから、勝つよ。」

 二人並んで仲良くゲームを続けた。男同士の気楽さと、女子のかわいさ、ヒロがこの前言われたという「いいところどり」の意味がわかってきた。





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