52日目 片桐さんからの誘い
5月30日、昼休みになり、修平はヒロからお弁当を受け取り、蓋を開けた。
「今日は、唐揚げ弁当か。美味しそう。」
「修ちゃん、大会で頑張ってたから、修ちゃんが好きって言っていた唐揚げ弁当にしたよ。」
「そういえば、応援にきてくれてありがとう。」
「修ちゃんのかっこいいところ見れたし、坂下さんとも仲良くなれたし、応援に行ってよかったよ。今度の個人戦も見に行ってもいい?」
「それはやめて。」
団体戦と違い、勝ち進めない可能性の高い個人戦で負ける姿は見られたくないので、修平はヒロの申し出を断った。
「吹奏楽部も大会ってあるの?」
修平は、唐揚げの下にひいてあるスパゲッティを食べながら、ヒロに聞いてみた。
「来月あるよ。ていうか、修ちゃんそのスパゲッティ食べるんだ。」
「食べちゃだめなの?むしろ、唐揚げの油吸って好きなんだけど。」
「食べちゃダメではないけど、油が多いからカロリーがね。」
修平とヒロとのやり取りを微笑ましく見ていた、片桐さんが思いついたように話始めた。
「そうだ、部員でなくても入っていいから、大森君もきてよ。」
片桐さんから思いもよらない、誘いをうけた。
「音楽よくわからないけど、行ってもいいのかな?」
「いいよ。『音楽』って文字通り、音を楽しんでくれたらいいから。じゃ、来月の19日、市民ホールであるからきてね。」
ヒロと美織から告白されたし、もしかして憧れの片桐さんからも。これがモテ期ってやつか。いつも美味しい、ヒロのお弁当がさらに美味しく感じられる。
授業を終え部活に行くと、美織が修平か来るのを待っていた。
「団体戦では負けたけど、個人戦で県大会いくから、練習付き合ってね。」
土日の大会で疲労があったので、今日は軽く練習するつもりだったが、美織に付き合ってかなりハードな練習となってしまった。
休憩中に体育館の外で水分補給をしているとき、美織が近づいてきた。
「小島さんにきいたけど、片桐さんの事好きなんでしょ。」
「ゴホッ、ゴホッ」
飲んでいたドリンクでむせてしまった。修平が片桐さんが好きなことがバレてしまっている。ヒロにも、美織にも。
「今日どんな人かなと思って、大森君のクラス覗きに行ったけど、きれいな人だね。大森君のタイプって、あんな感じなんだ。私とは違うね。」
すでにいろいろバレてしまっているので、誤魔化しようがなく正直に答えることにした。
「そうだよ。」
「高嶺の花を追い求めるのもいいけど、現実的に私と付き合ってもいいんじゃない。背伸びすると、疲れるでしょ。」
美織が修平の肩をたたきながら言った。たしかに、片桐さんと話すと嬉しいが、それ以上に嫌われないように気を使ってしまう。
部活を終え、ヒロと一緒に帰っているとき、
「ヒロ、俺が片桐さんの事好きって気づいていた?」
修平は、ヒロに聞いてみた。
「そりゃ気づくよ。修ちゃん、片桐さんと話す時だけ緊張してるから、すぐにわかったよ。」
「そんなにバレバレだった?」
「修ちゃん、嘘がつけないタイプだね。でも、そんな素直なところが好きだよ。」
修平は、片桐さんにも気づかれていることを心配した。でも、修平の気持ちを知ったうえで、吹奏楽のコンクールに誘ってもらえてことは脈があるってことかな。
「片桐さんと付き合いたいなら、勉強頑張らないと。今度から坂下さんと二人で修ちゃんの勉強、面倒見ることになったから頑張ろうね。そんな訳で、明日から毎日30分早く学校にきて勉強するよ。」
修平の気持ちを上手くヒロに利用されている気もするが、仕方ない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます