9日目 モンバト

 4月17日日曜日の昼下がり、みんなとの約束は3時からだが、修平は早めにゲームを始めていた。

 みんなが集まる前に一人プレイで経験値を稼いで少しでもレベルアップしておきたいという見栄と、回復系アイテムを増やしておいて、片桐さんや村上さんがピンチになった時に助けるという妄想に近い欲望があった。


 3時になり、ゲームの中での待ち合わせ場所に移動した。女子メンバーのステータスを確認してみると、村上さんはやや魔力中心ながらバランス型であったが、片桐さんは攻撃力と俊敏性に偏った攻撃型であった。

 4人で目的のモンスターに行く途中に、別のモンスターをみつけたので、練習がてら戦ってみることにした。ファイヤードラゴンというモンスターで、強力な炎攻撃がやっかいなモンスターだ。

 一度炎を吐くとしばらくは吐かないのでその間に攻撃するか、背後に回りしっぽによる物理攻撃に気を付けながら魔法攻撃をするのが定跡の攻略法だ。


 戦闘が始まり、修平と村上さんはドラゴンの正面から炎攻撃を警戒しながら攻め、ヒロは後方に回ってしっぽによる物理攻撃が届かない距離から魔法攻撃を始めた。

 3人は定跡どおりの展開だったが、片桐さんはドラゴンの後方に回り、しっぽによる攻撃をかわしながらドラゴンにダメージを与えていく。かなり攻撃的なスタイルのようだ。

 「あんまり強くない」と言っていたけど、かなりうまくて強い。

 片桐さんはノーダメージのまま、あっという間にドラゴンを倒した。


 いきおいそのまま、今日の目的である「オクトパス・デビル」を倒しに行く。タコのモンスターで、8本の足で攻撃してくるのと、距離をとってもスミを吐いてくるので、かなり攻撃力の強いモンスターだ。

 昨日打合せしたとおり、ヒロが魔法を唱えている間、修平と村上さんがタコの足による攻撃を防ぎ、魔法によりダメージを与えていく。

 片桐さんは先ほどと同様、モンスターに近づき攻撃している。足による四方八方からの攻撃も巧みにかわしたり、防御したりしている。

 途中修平は攻撃を防ぎきれずに瀕死のダメージを負ったが、すぐさまヒロが回復アイテムを使ってくれて一命をとりとめた。その後なんとか苦戦しながらもモンスターを倒すことに成功した。

 

 その後も何体かモンスターを倒した後、5時になりみんなログアウトしていった。修平もログアウトして、ゲームの電源を切った。

 片桐さんはゲームが上手い。片桐さんの意外な一面がみれて、修平は嬉しかった。

 おそらくクラス男子みんな知らない、片桐さんの秘密を知った優越感もある。片桐さんのゲーム好きが知られると、一緒にやろうと誘ってくる男子も出てくるだろうから、秘密にしておこう。

 そうして片桐さんとまた何回かゲームをしながら、片桐さんとの距離を少しずつ縮めていけばいいだろう。

 


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