第7話 傷に沁みる雪夜

秋が深まるように いろはと修一の仲は『友人』として深まった。


それは修一が無理やりそう結論付けていたのかもしれない。


青葉書店での素に近い「いろは」。

『JAZZ喫茶グリーン』でのJazzギターを奏でるちょっぴり崇高な「いろは」。

そしてLIVEの派手派手でCoolな「いろは」。


修一の生活は『いろは色』に染まっていた。


そして冬の12月。

いろは はクリスマス、年末LIVEに備えてバイト日数を減らした。


当然、修一も彼女が安心して店を休めるように協力する。


12月10日、 いろは は『修一君、25日のX‘masLIVE最高のステージにするから絶対に来てね』とチケットを渡すと、その日を境に店に来なくなってしまった。


今まで無断で休むことはなかった。

修一は電話をしようか悩む。

親には 『風邪をこじらせてしまったらしい』と嘘をつき、彼女の印象を損ねることのないようにした。


そしてそのまま25日を迎えることとなった。


『アイスボンブ』がトリをとるLIVEパーティだ。


修一は何となく いろは に会うのが怖かった。

LIVE会場の外で『アイスボンブ』の曲が始まるのを聞くと、こっそりと忍び込むように入っていく。


ドアを開けると耳だけでなく身体に感じる音の風圧。

前を占める熱烈なファンたち。


身体をうねらせたくなるような間奏部分のギターパート!


修一は気が付いた。


この音は いろは のギターじゃない。


客が少ない壁際から隙間をぬってステージがよく見える場所まで進む。


金髪のスタイルの良い女の子が いろは の場所でギターをかき鳴らしている。


いったい何があったのか。


修一は顔見知りのファンを見つけると声をかけた。


「なに? ああ、いろはちゃん? 一身上の都合で辞めたんだってさ。それで新しいギターリストMARIが加入したらしいよ。」


(嘘だ! )


修一は納得できなかった。

そんなはずはない!

いろは は修一に『最高のステージにするから絶対に来てね』と笑顔で言ったのだから。


全ての演奏が終わるのを待って修一は楽屋に入る。


「一輝さん、いろはちゃんは何故いないんですか? 」

「ああ、君は ..青井くん..だっけ。あいつ、音楽性が合わないって辞めたんだよ。」


「嘘つくのやめてもらえませんか? いろは はそんな子じゃない。俺に『最高のステージにする』って約束したんです」

「知らねぇよ。気が変ったんじゃねーの? 」


「いま、いろは はどうしてるんですか? 」

「知らねーって言ってるだろ。あんな下手ブス知らねーよ! 」


「いろは は下手なんかじゃない。あんたらの誰よりも上手い! ブスなんかじゃない! ふざけんな!! 」


そういった瞬間、修一は2,3発殴られた。

喧嘩をしたことない修一は手も足も出なかったが、言いたい事は言ってやったと思った。


雪が降るような寒さの中、殴られて腫れた唇がジンジンする。

だけど、そんな事より今、いろは がどうしているのかが気になっていた。

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