第3話 空白の感情

スカイ:はぁ〜、不思議(笑)


〇〇:うん。


スカイ:色々探したんだよ?

だけど、駄目だった。


〇〇:うん。


スカイ:ヒナちゃんも全然教えてくれないんだもん。。。


〇〇:うん。


スカイ:…ねぇ?


〇〇:なに?

 

 


スカイは前のように私と目を合わせる。

けれど、その視線は2年間で

何かが変わった気がした。

 

 

スカイ:どうして、戻ろうと思ったの?


〇〇:…なんて言ったらいいのかな。。。

なんかね、ずっと忘れられなかったんだよね。

今の生活も、もちろん充実してるし、

影でみんなと関わりが持てて

それだけで、良かったんだけど。。。

頭ではそう思ってたのに、

足りなかったみたい。心は。

欲深いね(失笑)


スカイ:そうなんだね。

さっきみんなと飲みながら聞いて、

〇〇がちゃんと僕を見てくれてたこと

嬉しかった。

もしかしたら、

見てくれてるかもしれないって、

ずっと思ってたから。


〇〇:見てたよ。


スカイ:じゃあ、いなくならなければよかったのに。。。

 

 

 

そう言い、スカイは私の肩に額をのせた。

 

 

何処か懐かしい香りと、少し男っ気のある

香りがした。

 

 

 

〇〇:あの時はあれが良かったんだよ。

今でも思う。


スカイ:………そっか。

 

 

 

 

額をのせたまま、何かを考えるように

スカイは暫く沈黙した。

 

 

そして、私の腰に腕を回して抱き寄せた。

 

 

その瞬間

 

 

 

 

ヴーヴーとスマホの

バイブの振動が伝わってきた。

 

 

 


〇〇:…電話じゃない?

 

 

スカイはスマホをポケットから取り出し、

画面を見てそのまま切った。

 

 

〇〇:出ていいんだよ?私中に戻るね。

 

 

みんなの方へ戻ろうとすると、

抱き寄せていた腕の力が強くなった。

 

 

スカイ:行かせるわけないでしょ。


〇〇:え?でも、電話大丈夫なの?


スカイ:気にしないで。

 

 

そうすると、またバイブが鳴った。

 

 

スカイは素早く切る。

 



スカイ:本当に、気にしないで。

 

〇〇:……わかった。。。

 

 

何となく、察した。

 

 

女性からの電話だということを。

 

 

私から手放したんだから、

責める気もないし、遠慮なんてしなくて

いいと思った。

 

 


けれど、何故か

凄くズキンと痛かった。

 

 

私は何を期待していたのだろう?

そんな自分がとても気持ち悪く感じた。

 

 


スカイ:〇〇?どうしたの?


〇〇:え?なにが?


スカイ:何か凄い顔してたから。大丈夫?


〇〇:そうだった?うん、大丈夫。

 

 

必死で作った笑顔は、大丈夫だろうか。

 

 

スカイ:そっか。

それにしても、また〇〇と出会えるなんて、

やっぱり僕達は運命だね。

 

 

 

そうやって笑ったスカイは、

以前の様なかわいい笑顔に

少し大人な顔つきになったのを感じた。


 

 

 


 


それと、、、

私の嘘を見抜けなくなったスカイがいた。

 

 

 

 

先程の言葉に笑顔で返す。

 

 

 

スカイ:もう、僕は諦めないからね。

 

 

そう言って、真顔になった。

 

 

〇〇:うん。。。

 

スカイ:じゃあ、今日はずっと一緒にいようね?

 



私は返事をしないまま、 

お酒のグラスを

乾杯しながら、

椅子に隣同士で座った。

 



 

それから、

スカイは一緒にいない間に起こった事を、

色々と話してくれた。

 

 

私が編集した収録の裏話や、

ライブ中に私がいるか、メンバーで

探し回ったこと、

練習生が私の名前を言った気がして、

必死で盗み聞きしたこと。


時々笑いを交えながら、

お互い同じ時間を気にしながら

過ごしていた事を楽しく話した。

 

 

スカイ:そういえば、日本語を覚えようと思って、

歌を聞いてみたの。猫って歌が僕の感情に合ってて、そればっか聴いてた時があった。

〇〇は猫みたいだ〜。


 

 

けれど、 

その話の間、

私はバイブの音が気になって

仕方なかった。

 

 

〇〇:…ねぇ、いい加減でろや。

じゃあ、私行くね。

 

 

スカイ:駄目。行かないで。


〇〇:何かあったんじゃないよ?

尋常じゃないよ。電話鳴る頻度が。


スカイ:いいんだ。


〇〇:私は気にしないから。


スカイ:!!!!


〇〇:じゃあ、行く…

 


 

 

行くね、と言いかけた瞬間。

 

 

唇に暖かさを感じた。

 

 


〇〇:ちょっと!!


スカイ:いや、違うんだ。

行かないで!


〇〇:だからって何!?急に。

ほら、また鳴ってるよ?


スカイ:うん……。


〇〇:スカイは何も悪くないよ?

何でそんな雰囲気だすの?

 

 

スカイは急にしおらしく、

落ち込む姿を見せた。。。

 

 

スカイ:……もう駄目だと思ったんだ。。。

寂しかったんだ。。。

だから、他の人抱けばきっと、

何か変わるって思った。


〇〇:……


スカイ:忘れようとしたんだ。

〇〇のこと。

 

 

下を向いたまま、

スカイは泣いているように感じた。

 

 

 

〇〇:当然だと思うよ。

 

 

 

 


冷たい言葉かなと思った。

 

 


スカイを責められたら、きっと

救ってあげられたのかもしれない。

 

 

だけど、苦しんでほしかった。

 

 

私だけ見ていてほしかった。

と、思う凄く自己中な感情が

グルグルと襲った。


 

スカイ:………。

このまま、また〇〇を好きでいても、

苦しいでしょ?

 

 

〇〇:そうだね。。。

 

スカイ:でも、こんな風にまた会えて嬉しくて、

触れられて、期待してしまうんだ。

…やっぱり〇〇は魔性だね?

だから、大人になりたかった。

他を知れば、もっと色々と分かると思った。

だけど、、、もっと分からなくなった。。。

 

 

スカイの涙を拭いながら、

話した。


 

〇〇:私は魔性でもないし、

スカイに怒りたい感情もあるよ?

でも、こんなに苦しませたのは、

私だから何も言えないよ。。。


スカイ:そうなの?


〇〇:うん。

会わない間に男らしくなってるし、

ずっと見てたけど、何か前とは違うから、

今その人に嫉妬してる。

 

と言い、スカイのスマホをじっと見る。

 

スカイはスマホを咄嗟に隠した。

 

 

〇〇:…じゃあ、そろそろ電話しなね?

私は戻るから。


スカイ:うん。。。

ねえ、やっぱり、好き。

行かないで?


〇〇:…うん。

 

 

そう言って、

スカイが掴んできた手を

振り払って中へ戻った。

 

 

 

バルコニーの扉を閉める時に、

スカイの方を振り向いたが、

スカイはスマホを見ていた。

 

 

そして、こちらに

背を向けて電話をし始めた。

 

 

その後姿が恋しく感じる私は

何か可笑しいのだろうか。

 

 

 

ため息を一息ついて、

気持ちを切り替え、

みんなのところへ一歩戻ろうとした。

 

 

 

ドンッッッ

 

 


誰かにぶつかった。

 

 

アルマ:お〜、ごめん、大丈夫?

スカイとは話し終わった?


〇〇:…うん。


アルマ:会いたかったよ。

一番最初に話したかったけど、

あいつがさらって行っちゃったから。

僕もさらっていっていい?


〇〇:うん。

 

 


アルマは私の手をひいて、

以前使っていた、私の部屋に入った。

 

 

 

つづく

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