第28話 そして日曜日
日曜日が来た。
俺、山神柚希。まだベッドの中にいる。だってまだ午前六時だから。今日は午前十時に瞳さんの家の最寄り駅で待ち合わせしている。
なんでこんなに早く目が覚めているのかって、それは…とっても緊張し変な妄想で…。
瞳さんの部屋に行って勉強するという事になっている。部屋に行くって事はお家デートって事だよね。これって普通話している内に何となくそうなってそうなるってありだよな。
一応俺は梨音と経験あるから初めてじゃないけど。瞳さんはどうなんだろう。あれだけ綺麗な人だし、過去色々あったのかなあ。それとも…。
なんで俺こんな事考えているんだ。やっぱり俺って…。でも瞳さんの事、真正面から向き合っていないのにこんな事考えて。
不味い不味い不味い。とにかくまだ手を繋いだだけだ。ちょっと顔にキスされたけど、あれは傷を早く治す為だって言っていたし。
とにかく、変な事して勘違いされたり嫌われないようにしないと。
私、上坂瞳。まだ朝の六時ベッドの中。今日は柚希が私の部屋に来る。呼ぶ理由を勉強会みたいにしたけど、本当は本当は…キス位はしたい。もし彼が望むならその先だって…。
だって、今のままじゃあ柚希を誰かに取られてしまう。神崎さんだって渡辺さんだって、いつだって柚希の傍にいる。だから…。
でも私初めてだし、いきなり押し倒されたりしたら…。どうすればどうしたら…でも。
今日は今までの関係から一歩進むことが目的。その一歩がどんなことになるかはその時。柚希が望むなら…。
それで、柚希が私をもっと一杯見てくれる様になるなら。
とにかく、上手くそういう雰囲気に持って行かないと。露骨にやって嫌がられたり嫌われたりしたら大変だから、そっと自然にね。
洋服もそれなりにちょっとアピールする感じが良いかな。
午前九時四十分。俺は瞳さんの家の最寄り駅の改札にいる。少し早いが、先に約束の場所に来るのは男として一応礼儀だ。
改札でスマホを弄りながら待っていると駅のロータリーの向こうに瞳さんが立っているのが見えた。まだ十分前だ。
ロータリーを迂回するように歩道側を瞳さんがこっちに歩いて来たので俺もそっちに歩いて行くと
「柚希おはよう。待った?」
「おはようございます瞳さん。いえ十分前に来ただけです」
「ふふっ、そう。じゃあ早く行こう」
瞳さんが俺の腕にしがみついて来た。
「ちょ、ちょっと。これじゃあ歩き辛いでしょう」
「ううん、いいんだ」
私の胸を思い切り柚希の腕に当てている。感じてくれているかな。ちょっと顔が赤い気がするけど。
瞳さん朝から積極的だな。今日は勉強会って言っていたのに。ちょっとこれは?
「柚希、バスで行く。それとも歩いて行く?」
「瞳さんの好きでいいですよ」
「じゃあ、歩いて行こうか」
バスの中じゃ流石にこうは出来ないし。
流石に途中で歩き辛いのか瞳さんが腕を離して手つなぎにした。助かった。
「柚希上がって」
「はい、お邪魔しまーす。…あれ静かですね」
「うん、家族は誰もいない。柚希と夕方まで二人だけよ」
「えっ?」
「だって、静かな方がいいでしょう」
どういう意味で言っているんだ?
玄関に入ると真直ぐ長い廊下が有って、その先に階段があった。
「柚希こっちよ」
ついて行くと二階には四つの部屋があり、一番奥の部屋が彼女の部屋の様だ。
ガチャ。
「さあ入って」
ドアを開けると女の子特有の甘い匂いがした。中は広く俺の部屋なんか比較にならない。入ってすぐ左横に勉強机があり反対側の壁の並びに本棚が二つ、更に向こうに洋服ダンスが三つあり、ベッドがその反対の壁側に置いてある。入ってすぐ床にはローテーブルとクッションが置いてあった。
「広い、俺の部屋なんかと比較にならないや」
「そうかな。普通だと思うけど」
「…………」
俺は持って来たリュックを床に置くと
「ちょっと座って待っていて。私がいない間、あまり触らないでね」
瞳さんが部屋から出て行った。床はフローリングで茶色だけど、壁は白、全体的にピンク系で統一していて本棚の一部は可愛い人形が置いてある。
チラッとベッドに目を向けると…。瞳さんここで毎日寝ているのか…。
いかん何を考えているんだ。今日は勉強に来たんだ。
「柚希、お待たせ。飲み物とお菓子を持って来たわ。そこに座って」
俺がローテーブルの傍に座ると瞳さんは反対側に座った。プレートに乗った飲み物はそのままに俺をじっと見ている。どうしたんだろう。
「柚希。どうかな私の部屋?」
「はい、綺麗でとても可愛くて、瞳さんの部屋だなって感じです」
「か、可愛い」
「あっ、いや。その白とピンクで統一されていてとても素敵です」
ふふっ、柚希が私の事可愛い、素敵とか言ってくれている。最初からテンション高いかも。でもここは冷静に
「そう、ありがとう。冷たい紅茶で良かったかな?」
「はい、嬉しいです」
俺は冷たい紅茶の入ったグラスを手に取って少し飲むと
「とっても美味しいです」
「ふふっ、嬉しいな。早速柚希の勉強しようか。何を持って来たの?」
「数Ⅰとリーダーです」
「じゃあ、早速始めようか」
よしここまでは予定通り。さて次は、
柚希が学校の教科書とノートを開いて復習を始めた。それを見ながらちょっとテーブルに乗りかかる様にする。多分見えるはず。
俺が数学の問題を解きながらちょっと手が詰まると
「柚希、何処が分からないの?」
瞳さんがテーブルに覆いかぶさるようにして見て来た。何故か第二ボタンまで外れている。思い切り胸の谷間と淡いピンクのブラが…。
「あの瞳さん、そんなに覆いかぶさるとちょっと」
俺の視線に気づいたのか
「あっ、ごめんなさい。でも今日はちょっと暑いわよね。あははっ」
手を内輪にして何故か胸の空いている部分をパタパタしている。
「えっ、そうですか」
とてもそんな暑さではない。
今度はテーブルを回って俺の横に来た。そして思い切りくっ付きながら
「ここはね、ほらここから計算が間違っている。公式もここは間違っている」
瞳さん左利きだったっけ?俺の方に向いながら左手でシャーペンを持ちながら誤った個所を指摘している。
でも俺は彼女の胸圧が…、不味い気が散る。でもここで変な事言ったら勘違いされて嫌われそうだし。
なんとか、彼女からの胸圧を耐えながら一時間位数Ⅰをこなすと
「柚希ちょっと休もうか。少し横になって背伸びするといいよ」
「そうですね」
俺は彼女の言う通り、横になって手を思い切り上に持ち上げた。気持ちいい。でもその時だった。彼女も俺の横にピッタリつきながら横になった。
「瞳さん」
「ふふっ、私も休憩」
瞳さんは俺の横になって同じように手を上げた。そしてふーっと言いながら手を降ろすと思い切り体をくっ付けながらじっと俺を見ている。
口も鼻も目も数センチも離れていない。
「柚希」
先輩が目を閉じた。これって、でも瞳さん疲れて寝ているだけだよな。もし俺が勘違いしてしまったら、もう口も聞けなくなってしまうかもしれない。悶々としていると
「柚希」
もう一度目を開けて言ってから瞳さんは目を閉じてほんの少し唇を俺に差し出した。これって間違いなよな。数センチの距離をゆっくりとゆっくりと近づけて
触れた。
柔らかくて甘い香りのする唇が俺の唇に触れている。顔がとても熱くなっているのが分かる。直ぐに離した。そうしたら彼女は一度目を開けると
「柚希」
そう言って思い切り口付けをして来た。
―――――
つ、ついに柚希と瞳さん…。でもキスだけだよね!多分。
次回をお楽しみに
カクヨムコン8に応募中です。★★★頂けるととても嬉しいです。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます