先輩どういうつもりですか(69話からいよいよ第三章に入ります)

@kana_01

第1話 プロローグ


始まりました。

宜しくお願いします。

少し長めです。


―――――


俺、山神柚希(やまがみゆずき)、中学三年生。俺には世界一素敵な彼女がいる名前は神崎梨音(かんざきりおん)。身長は百六十センチ俺より十センチ位低いけど艶やかな髪の毛は腰まであり、はっきりとした大きな目、スッとした鼻筋に可愛い唇。そしてそれを際立たせる綺麗な輪郭、思い切りの美少女だ。


中学二年のGWの前に俺から告白した。彼女も「私も好きでした」そう言われて二人は付き合い始めた。学校の登下校、休日どんな時でもいつも一緒にいた。もちろんキスもその先も。

 俺は、この子と一生二人で生きて行くのだと思っていた。彼女もそう思っていたはずだ。


 でも中学の卒業も一か月後に控えた日曜日。いつもの様に彼女の家の最寄り駅の改札で待っていると彼女が来た。そして


「柚希、私他に好きな人が出来たの。だからもう会わない。さよなら」

「な、何を言っているんだ。冗談だろエイプリルフールには早いぞ」

こんな冗談は言わないはずと思いながら返すと


「もうあなたには飽きたの。だからさよなら」

 踵を返してどこかに行こうとする彼女の腕を掴んで


「ちょっと待って冗談だろ」

「柚希何回も同じ事言わせないで。あなたには飽きたのよ」


 そう言って俺の手を振り払って去って行った。

何が起きたのか分からない程に呆然としたまま、周りの人が奇異な目で見ているのも構わず、そこにしゃがみ込んだ。





 何時間経ったのかどうやって家に帰ったのか分からないまま気が付けば自分の部屋にいた。

 母さんの声も姉ちゃんの声も耳に入らない。ただ泣き崩れていた。


 何日か学校もいけなかった。隣の家に住む幼馴染の設楽詩織(したらしおり)や友達の松本亮(まつもとりょう)が心配で訪ねて来たらしいが、とても会う気にならず帰って貰った。



 俺がやっと自分の部屋を出たのは多分三日目の夜だと思う。姉ちゃんが驚いた顔で俺を見ていた。それから母さんが来て…。



 更に二日後、やっと学校に行く気持ちになれた。学校に着くと担任の先生に挨拶に行った後、教室に入った。

クラスメイトが心配と興味で色々聞いて来たが、詩織や亮が他のクラスメイトからの声を上手く遮って俺を守ってくれた。




それから三週間後俺は梨音に振られたショックから立ち直れないままに卒業式を迎えた。


 高校への入学は決まっていたので、それまでの間姉ちゃんや詩織や亮がいつも誰かが俺の側に居て俺を思い切り支えてくれた。


 そしてなんとか高校入学する頃には、梨音から振られたショックも大分和らいでいた。





 俺山神柚希ちょっと紹介遅れたけど…、普通レベルの公立高校、中喜多高校にこの春入学して一年生になった。あえて普通レベルと強調したのは俺の頭の中を察して欲しい。俺が通う高校は山の上にある。元お城の跡地に建てられた学校なので結構登校時がきつい。但し下校時は楽でいい。



 今日も中学から一緒の友人松本亮と一緒に下校している。坂を降りきって、少し歩くと神社がある喜多神社だ。


この辺では有名な神社。そこを通り過ぎようとした時、


「きゃーっ、止めてー!」


「おい亮なんか聞こえたか?」

「ああ、境内の裏の方からだ。女の人の声だったようだけど」

「行ってみるか」

「でもなあ」

「女の人の声だぞ。もしかして…えへへっ」

「お前何考えているんだよ。とにかく行くか」



 俺と亮は階段を登って境内の裏が見えると所まで来ると


「おい、大人しくしていれば痛い思いしなくて済むんだ」

「嫌に決まっているじゃないですか。帰して下さい」

「駄目に決まっているだろう。痛い目に遇いてえのか」



 境内の陰で見ていた俺は、

「亮、警察に連絡だ。神社から出て連絡してくれ。二人共捕まったら話にならない」

「分かった。お前どうする」

「ちょっと様子を見ている」

 


亮が階段を降りて行くのを見た後、再び境内の裏を見た。

さっき女の人に話しかけていた男が振り上げた手を降ろそうとした時、


「止めろー!」

「な、何…?」


 気が付いた時は、腕を上げていた男の背中に思い切り体ごとぶつかった。


 どん

ぐへっ

うわっ


 俺は直ぐに起き上がって女の人の前に行くと

「逃げて」

「でも」

「早く!」


 後ろで走る足音がした。女の子を追いかけようとしたもう一人の男にもう一度体当たりをしたが、今度は少しぶつかった程度だった。


「ちっ、逃げられたぜ。まったくこのガキが現れなきゃ」

「くそっ、やっちまえ」



構えたが、喧嘩なんかした事のない俺が三人の男に敵う訳が無かった。


ぐきっ、ぼこっ、どすっ。


「ぐぇっ。止めろ」

「ふざけるな。手前のお陰でやり損なったじゃねえか」


ぼこっ、どすっ。


「ぐぇっ」




「警察だ!」


 やっと来てくれたか。俺はそのまま気を失った。





 うーっ、いてーっ。


目をゆっくりと開けると真っ白な天井が見えた。何処だここは?

「柚希気が付いたのね。先生呼ぶね」

「母さん?」

 母さんがベッドの側に有るナースコールボタンを押してくれた。


 少しして看護師と先生が来た。

「目を覚ましましたか。良かった」

「病院?」

「頭を打って意識を失っていたので心配しましたが、もう大丈夫ですね」

「先生、大丈夫ですか」

「お母さん、もう大丈夫ですよ」


 それから先生は俺の体の包帯が巻かれている所を見た後、病室を出て行った。顔や腕、脇腹や足に包帯やガーゼが巻かれている。



「柚希、松本君から聞いたわよ。無茶しちゃ駄目じゃない。丸一日寝ていたのよ」

「母さん、ごめん。それに制服汚れちゃった」

「制服なんてどうにでもなるから。それより先生が打ち身や打撲だけで骨折した所は無いと言っていたけど、頭を打って意識が戻らないから心配したのよ」


 良く見ると母さんの目の下にクマが出来ていた。

「ごめん母さん」



 夕方になると亮と幼馴染の設楽詩織(したらしおり)がやって来た。


「柚希、お前のお母さんから意識が戻ったって聞いたから急いで来たぞ」

「柚希、亮から聞いた。無茶したんだって?」

「そうだよ柚希、俺お前があのまま見ているのかと思っていたのに」

「悪い。体が動いてしまって」


「柚希は悪くないけどさ。らしくねえな。喧嘩なんかした事無いだろうに」

「でも良かった。意識が戻って。心配したんだから」

「詩織悪いな」


「まあ、柚希は大事な幼馴染だからね」

「柚希、いつ退院できるか聞いているか?」

「三日は居ろって言われた」


「そっか、じゃあ宿題が溜まるけどその体じゃ出来ねえだろうし」

「亮、答え書いておいて」

 詩織はクラスが違うので聞けない。


「駄目だ。学校復帰の練習だ。自分でやれ」

「そんなあ」

「ところで柚希、お前が助けた女の人だけど。誰か分かるか?」

「全然、うちの学校の制服を着ていたのと髪の毛が長くて俺と同じ位の身長だった位。だって男達の方しか見ていなかったから」



「そうか。警察の人から聞かれたけど俺も分からなくてな」

「まあ、いいよ。あの人(女性)が乱暴されなくて良かったんだから。ところで俺をこんな目にあわした奴らは?」

「ああ、今は警察の中みたいだ」



 次の日に警察の人が来て色々聞かれた。婦女暴行未遂、暴行傷害罪の罪に問われると言っていた。ただ、俺が助けた女の子が見つからないのは困ったと言っていた。

 後難しい話をしていたので全部両親にお願いした。どうも弁護士も必要らしい。俺は分からないけど。





 それから四日目家に帰った俺は、自分の部屋のハンガーにかけられているクリーニングから戻って来た綺麗な制服を見た。

ちょっと母さんが破けた所を縫った痕も有って、入学したばかりの制服をこんな事にしてしまった自分に少しだけ嫌悪感を感じた。母さんにも悪い事して申し訳ない。


翌日、それを着て玄関を出ると詩織が待っていた。

「おはよう柚希。大丈夫?」

「詩織おはよ。ああだいぶ良くなったよ。でもちょっとまだ足とか腕が痛い」

「今日も休んだらいいじゃない」

「いやこれ以上休むと俺の頭では挽回きつくなるから」

「あははっ、私が教えてあげるから」

「ありがとう、でも今日は学校に行くよ」


 詩織と一緒に駅まで行って電車に乗り五つ目の学校のある駅で降りると改札で亮が待っていた。


「柚希、おはよ大丈夫か?」

「ああ、なんとかな」

「でもその包帯結構痛々しいぜ。今日くらい休めばいいのに」

「私も柚希に言ったんだけど、どうしても学校に来るって言って聞かないから」

「柚希がそう言うなら仕方ないな」


ここからは詩織と亮と一緒に登校した。登校中俺の姿を見て驚いた顔をしている。まだ顔や腕には包帯がまかれている俺は随分目立ってしまった。体もギシギシしている。



 学校に着くと一番に担任の先生の所に挨拶に行ったけど、随分心配されていたようで良かった。良かったと言ってくれていた。



 その後、教室に入って自分の席に着いたが、恰好が恰好なので

「山神大丈夫か?」

「すげえな。男三人相手にしたんだって」

「凄いよ山神」


「山神君大丈夫だったの?」

「意識が戻らないとか聞いていたから皆で心配していたんだ」

「「うん、うん」」


 なんか凄い目立ってしまっている。困ったな。

「ほらほら、山神が困っているだろう。皆静かにしようぜ」

 亮のお陰で俺の周りに来ていた人達が自分の席に戻って行った。



「亮ありがと」

「全然構わないけど、当分あんまり動かない方がいいな。お昼は俺が購買に行ってやるから」

「わりい亮」


 午前中の授業が終わり、亮が購買から俺と自分の分のパンを買ってきてくれた。

もちろん飲み物も一緒だ。亮に代金を渡してから食べ始めようとすると詩織が


「ねえ、私も入れてよ」

「構わないけど、いつもの友達は?」

「ああ、今日だけ柚希と亮一緒に食べるって言って断った」


 ちらりと詩織がいつも食べている女の子達の方を見ると、こちらに関係なしに食べ始めていた。

「そうか、じゃあ、そっちの机借りて座れば」


 俺の前に亮が居て隣に詩織がいる形で座って食べ始めた。

「柚希これ食べる?私が作ったんだ」

「えっ、悪いよ」

 詩織が箸に持ったのはひじきが入った卵焼きだ。


「良いじゃない、パンだけじゃあ駄目だよ。はい」


 何気なく口を開けて詩織に卵焼きを口に入れて貰うと周りにいる人達が目を丸くしている。入学してまだ二ヶ月も経っていない。人間関係もお互い分からない時期にこれは悪目立ちしてしまった。


「柚希、詩織。ちょっとここ家じゃないんだから」

 亮が注意してくれたがもう遅かった。


「「あっ!」」

 普段から何気なくして貰っているので、ついいつもの癖が出てしまった。詩織の家は俺の家の隣で食事も一緒にする事も多い。

 だから普通恋人同士がやる様な事でも何気なくしていた。でも俺と詩織の間に恋愛感情はない。


「まあ、良いけど。周りの子達が驚いているぞ」

「あははっ、そっか。柚希ごめん」

「良いよ、詩織が謝る事じゃないし」


 その後は、俺が助けた女の子の会話にもなったが、髪の毛が長くて俺と同じ位の身長というだけでは、あまりにも手掛かりが少ないと言う事でお互いにそれらしき人を見たら教え合うと言う事で話を終わりにした。


詩織が席に戻るとやっぱり周りの女の子からさっきの卵焼きの件を聞かれていたが、幼馴染という事で切り抜けている様だ。


 しかし、助けた子が誰なのか位は知りたいな。



―――――

物語が始まりました。

 山神柚希が助けた女の子誰なのかな?


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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