第37話 攻略と保護者探し

ブライト王国経由で魔国へ渡る私。故郷を守るために残るメロンとカリナ。


しばらくはお互いの事情で別の場所に行くが、3人は神の力を得た運命共同体。必ず再会することを誓った。


冒険者パーティー「殺戮天使」はメロン達の次の拠点、ダンガーラの街で再登録する。あとで紹介するが臨時メンバーも合わせて4人一緒で拠点をダンガーラに置く。私が帰ってくるまで誰も入れたりしないと言ってくれた。


それにペルミ村を助けにいったとき土地をもらった。


どこで生まれたかも分からない私だけど、メロンとカリナで家を作り、帰る場所を用意してくれるそうだ。



そして今、ランバーダンジョンのダンジョンボスの部屋の前にいる。



「さあ、総仕上げといくよ」


「出て来て神器黒虎」

「お願いします神器黒獅子」


キーーーーン。


メロンとカリナが刻印が刻まれた左手を突き出すと、刻印から黒と黄金の光の粒が立ち昇った。


沼様からもらった強化神器が2人の手に現れた。

どちらも刀身50センチの剣で、甲高い金属音付きだ。


対して私は・・

「右手に「泥団子80センチ」」


ぺちょっ。


「・・なにこの差」

「ぬ、沼様も考えがあったのよ」

「そうですよ、武器としての格は泥団子の方が黒獅子より上なんですから」


メロンとカリナの神器発動シーンを見ると、沼様はできる子だ。なぜ忠実なしもべの私の泥団子は、面白仕様にした?


ゴゴゴゴゴゴ。



特級ダンジョンのボスは5メートルのヒヒイロカネゴーレム。仲間はオリハルコンゴーレム4体とアダマンタイトゴーレム2体。

70年前にペルタ様がパーティーを組んで倒して以来、討伐記録がない。


ペルタ様がいても3時間かかったそうだが、私には楽勝すぎる。


「メロン、カリナ、いきなりボス行って!80センチ沼3個発動」


ぽちょん、ぽちょん、ぽちょん。


「はい、黒土針!」

「食らえ、黒斬風!」


カリナの神器のベースになっているのは土属性。沼様が召喚途中に食らった、私のイレギュラー召喚の原因になったが持っていたやつだ。


メロンのは山田竜都の神器の風属性を引き継いでいる。


バキバキバキ。べちょっ。


「ボスは傷だらけで上にキャッチした。もうオリハルコンゴーレム2体捕まえてるから、ダメージ入れて」


「はい忙しい!黒刃」

「次です。黒土塊」


バキバキバキバキ、バキバキバキバキ、ぽちょん。バキバキ。ぽちょん。


「はい、これで最後だね」


ぽっちょ~ん。


「あれ?終わりました」

「ここって、世界中でも有数の高難度ダンジョンだよね」


「ここは沼様由来の神スキルと神器が相性良すぎたんだよ。さ、ダンジョンクリアの宝箱開けよう」


特級宝箱から出たのは、クリアメダル3枚。蘇生、飛翔、氷魔法極のスキルオーブだ。

カリナが蘇生、メロンが飛翔を覚えた。新しいスキルを覚えられない私は氷魔法極を持って、ハルピインのギルドに戻った。


◆◆


ハルピインのギルドに戻り、臨時メンバーを迎えに来た。


「殺戮天使の皆様、お帰りなさいませ」

「マリアさん。ランバー特級ダンジョンの攻略成功しました。ギルドカードで確認します」


「おめでとうございます。では、ダンガーラに拠点を移しましょう」

「マリアさんも、準備はOKだね」


「はい、事務手続きも終了しております。これからは一度は断念した食材ハンターとして夢を追いたいと思います」


これからメロン、カリナに加わる臨時メンバーは、なんとハルピインギルドの受付嬢マリアさんだ。


以前、ペルタ様とマリアさんを交えて、今後の相談をした。

基本的に他人を信用しない私は問題ない。心配なのはメロンとカリナだ。


沼様の改造とレベル100の相乗効果で、レベル150の戦闘職を相手に軽く勝てそうなほど、強くなっている。


だけど、2人は性根が優しすぎる。情に訴えられたら、悪意を持つ人間の頼みでも聞くだろう。


今まで防波堤になっていた私がいなくなったとたん、2人か悪意にさらされる。


その心配を打ち明けると、マリアさんから提案があった。


「ならば私がメロンさん、カリナさんの臨時のメンバーになりサーシャさんの代わりをしましょう。余計な虫を寄せないことも含め、対外交渉等を引き受けます。代わりに私の夢をかなえる手伝いをお願いします」


最初こそトラブルになったが、マリアさんは仕事も丁寧で誠実な人柄。元C級冒険者で戦闘力もある。

マリアさんのありがたい申し出により、最大の懸念材料を解消できた。



「マリアさん、メロン達のことをよろしくね」

「はい。ダンガーラには実家の料理店があります。そこを手伝いながら、メロンとカリナが食材探しを手伝ってくれるときに狩りをします」


「その食材で作った料理をマリアさんの実家の料理店で出すんですね」

「ええ私を頑張って育ててくれた両親のため、そして美味しいものを食べたい自分のため、食材をハントできる冒険者を目指したのです」


「けど、弱い氷魔法しかなく、一度は冒険を断念したのか・・」

「しかしサーシャに相談されたとき、浅ましいと言われてもいいから、なりふり構わず飛び付こうと思ったのです」



「で、マリアさん。装備を揃えるお金は持ってきた?」


どん。


「はい、また夢を追いたいと思い400万ゴールドを貯めていました。これでサーシャから手持ちの装備を幾つか譲ってもらえるんですね」

「じゃあ、これをどうぞ」


「サーシャ、収納指輪ですか・・」

「中にちょっと装備が入ってるから着けてみて」

「はあ・・」


「あ、サーシャセットだ」

「サーシャセット?」



「中身は・・え?え?フード付きインナー、小手、ブーツ、鎖かたびら、胸当て、大盾、ナイフ、それがみんなミスリル製・・」

「私達と一緒の反応だね」


「さらに剣がS級武器の「六角氷姫」に、氷魔法極と魔力増加のスキルオーブ! ・・サーシャこれは一体?」


「どうせブライト王国で拾ったもんだよ。メロンとカリナが世話になるから、収納指輪込みで400万で買ってもらうよ」


「はあ・・」



400万ゴールドで1億ゴールド越えの福袋を買ったと思ってもらう。マリアさんにも怪我して欲しくないから。


懸念材料はなくなった。



これで安心して私は「殺しの旅」に出発できる。



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