第30話そして、またタイマンした話 前編
黙って避け続けてるだけで、暗殺者ならまだしもそうじゃない人間はベラベラ喋ってくれる。
とは、育ての親達からの受け売りだ。
情報を引き出すだけなら、無理に拷問する必要はないらしい。
まぁ、時と場合によるけど。
「おや当たりか。
ふふふ、どうせ俺を脳筋の人間とでも思ってたんだろ??
まぁ、たしかに妹と比べると頭は良くないほうだ。
でも、バカだからって何も考えてないわけじゃない」
それなりに考えてはいる。
でも、それを見下している側の人間は認めようとしない。
否定する。
それだけだ。
そして、おそらくだけど彼ら先代達が買ってた恨みつらみは、ここに起因すると思う。
つまり、傲慢なところだ。
元々はどうだったか知らないが、少なくとも他人が作り上げたものを、踏みにじるようなことを平気で行う人間だったのだろう。
「ダメだなぁ。
俺じゃないんだから、そんな簡単に感情を出しちゃ、すぐ負けちゃうよ?
先輩??」
俺のニコニコ顔の煽りに、カインが怒り狂って突進してきた。
剣を俺に向かって叩きつけてくる。
それをひょいっと避けつつ、剣を振り下ろした所に蹴りを入れた。
蹴りを入れた場所は、剣を持つ腕だった。
衝撃でカインの手から剣が落ち、カラカラと音を立てて更に屋根から落下する。
なんなら、腕もあらぬ方向に折れたようだ。
ルーディーと呼ばれた女性も、さすがに焦りを見せ始めた。
「さて、お前らには、いくつか聞きたいことがある。
なんで、このタイミングで闇討ちを仕掛けてきた?
そもそも、なんで俺は襲われてる??」
だいたい予想と妄想はできるけど、ハッキリさせておきたかった。
なんて俺が言った時だ。
ゾワッと嫌な感覚が背筋に走って、俺は飛び退いた。
すると、俺が今までいた空間がグニャリと歪んだ。
あっぶねぇ!
ルーディーが舌打ちする。
「教えてくれない、か。
じゃあ当ててみよう。
お前たちは、二年前魔族側についた。
連れ去られたのか、それとも自分たちからそちら側に着いたのかはわからない。
でも、死なずに生きて俺の前にいるんだから、少なくとも死んではいなかったわけだ」
俺は続ける。
「まぁ、これだけだと魔族側に付いたとは断言できない。
でも、状況が揃いすぎてる。
ヴァルデアを倒したあとっつーのが決定打だな。
こんな数日で殺しにくるなんて、魔族側じゃないと理由がない。
一応、俺、というか今の【
普通に考えるなら魔族と戦って勝てるような人材なんて、冗談でも火あぶりにする馬鹿はこの王国にはいないと思う。
いたらタダの阿呆だ。
ましてや、俺はクラン潰しって言われてる。
名を挙げたいやつが闇討ちに来たとしても、せいぜい半殺し目的だ。
でも、お前らは俺を殺しに来てる。
それだけ危険視されてるってことだよな、これ?
じゃあ、そんなに危険視するのはどんな奴かって考えると、答えは出るわけだ」
でも、わからないこともある。
どうして、先代幹部を、って言うより、人間を派遣させたのか?
ヴァルデアを倒した俺を危険視して殺そうとした。
これはわかる。
理解できる。
それだけ危険視してるなら、同じ四天王か同格の力を持つ魔族を数人派遣すればいい。
でも、していない。
これがわからない。
さすがに俺でも、ヴァルデア級の魔族が四人も五人も相手だとちとキツいものがある。
ふと、視線を感じた。
空を見る。
太陽はすでに沈みきっている。
空には月が昇り始めていた。
同時に、声が降ってきた。
「なるほど、勇者より楽しめそうだ!!」
かと思ったら、雷撃が襲ってきた。
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