第21話サクサク進んで攻略中

 そこからはラインハルトの言葉通り、慎重に進んでいった。

 魔族との遭遇率が上がったというのもあるだろう。

 戦いの中で、魔族から情報を引き出しつつ、倒していく。

 そうして気づけば四十階層へとたどり着いていた。


 次の階層へと進みながら、俺たちは情報を整理した。


「いやぁ、まさかこのダンジョンで魔王軍が魔物の強化実験してるとは」


 俺がそう話題を振ると、ラインハルトが口を開いた。


「数年に渡っての実験らしいですからね。

 もしかしたら二年前も同じことが起きていたのかもしれません。

 それを考えると、最近このダンジョンが発見されたというのも、怪しいですね。

 わざとそういった情報を流して獲物がやってくるのを待ち構えていたのかもしれません。」


 続いて、エールが考えつつ言ってくる。


「戻ったら、二年前のことちゃんと調べてみようと思います。

 今にして思えば、お兄ちゃんたちの死を伝えてくれた人、いつのまにかいなくなっていたんで」


「それがいいだろう。

 自分も手を貸すから、遠慮なく声をかけてくれ」


 エールの言葉に、ミーアがそう提案する。

 回復魔法はやっぱり偉大だ、やはり魔族の方が強いのでラインハルトもミーアも、そこそこボコられていたのに、今はもう全快している。


「でも、不思議だな。

 なんで魔族領じゃなくて、わざわざこっちで実験なんかしてるんだ?」


 俺のつぶやきに、反応したのはラインハルトだった。


「なにかしらメリットがあるから、でしょうね」


「ラインハルトもやっぱりそう思うか」


「えぇ、まぁ」


 そのメリットがなんなのか、と問われればやはり、


「作ったらすぐ人で試せるもんな」


 これだろう。

 出来上がった、強化した魔物。

 その出来栄えを試すには、すぐ近くに人が住んでると都合がいい。

 たとえば、どの程度の驚異になるのか?

 たとえば、人はどうやって強化した魔物に対処してくるのか?

 何匹までなら、村人だけで対処するのか?

 どこから冒険者を頼るのか?

 国が軍を派遣してくるまでに、かかる時間は?

 そうして、人間の国の手の内を読むことができる。

 潜入する、と言う手もあるだろう。

 ひとつ言えるのは、情報の抜き方は様々である、ということだ。

 そう考えると、スライム退治の時の青年の驚きも納得できる。

 あの青年は、冒険者が派遣されることは読んでいたのだろう。

 だから、驚いた。

 加えて情報の漏洩についても口にしていた。


 あの青年、エールのお兄さんによく似た人物が魔族と繋がっているか否かも、ガチで気になる。

 同じ王国内で、場所だけ違うものの似たような研究を同時期にしていた、というのが、繋がりがあるように思えてしまう。


 まぁ、こちらでは人間が魔族と繋がりがある、ということ自体が珍しい。

 仮に繋がりがあったとして、どうして魔族側に手を貸しているのか、という疑問が出てくる。


 あの青年が魔族が化けたものであった可能性もある。

 でも、低いだろう。

 あそこでその化けの皮を剥がないわけがない。

 何故なら、SSSランクの俺がいたから。

 牽制として、正体を見せてもよかったはずだ。

 それをしなかった。

 魔族という存在は、人間からしたら脅威そのものだ。

 たとえSSSランク冒険者であっても、相手が魔族とわかったら慎重になる。

 そういった反応が、【普通】なのだ。

 それは、魔族側も把握しているはずだった。


 まぁ、いい。

 進んで、もう少し偉い魔族が出てきたらボコって聞けばいいだけだ。

 魔王軍の幹部クラスでも、出てきてくれないかな。

 噂では、魔王軍の幹部は文字通り一騎当千どころか、一騎当万の力を有しているらしい。

 まぁ、まず人が相手にするならば軍隊を派遣することになるだろう存在だ。


 最近聞いた話では、もっぱら神様が遣わせた勇者の相手をしてるらしい。

 だからきっと、ここにはいないだろうと思う。


 そう思っていた。

 喜べ、そんなふうにおもっていた、数時間前の自分。

 魔王軍幹部の四天王の一人と、タイマンできるぞ!!

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