第98話 ロープデスマッチ

【これまでのあらすじ】

 濡れ衣を着せられチームBIOを追放されたレジスタンスエージェント バイオは、真実を探すため、グリと共に、Crystal Tower を登る。

 最上階で、コントロールポータルにオニキスシールドがセットされ、巨大なCFが作成される。

 グリは八騎士のNo2であり、八騎士の目的は八つの塔による世界を沈めるCFの作成であることが判明。

 そして、目的を果たすために八騎士の一人のクローンとして産まれたのがバイオであるという事実が発覚。

 魔星のkurokirbyとふじは八騎士の目論見を阻止し、交渉する材料としてグリを拘束すため、戦いを挑む。



 腰を落とし、グリの安全帯のロープを強靭な両腕で引きこみながらふじが叫ぶ。

「勝負あったな。グリ。


 やー(あなた)を拘束するという目的を達するためには、やーのロープをこの120キロの握力を持つ両手で掴むだけでよかったさー。

おいらがそれを果たすまで、kurokirbyがやーの相手をする作戦だったさー」


 グリに向って歩みを進めながら、kurorkirbyが言葉を引き継ぐ。

「シンプルな作戦だが、効果的だろうが」


「ノーだよ。

 勝負はついていない!」

 叫びと同時に、ふじに向って疾走するグリ。


 張っていたロープが瞬時に緩み、眼前に迫るグリの右の飛び膝蹴りを、紙一重で屈んで回避するふじ。


 しゃがみ込むふじを見下ろしながら、

「シンプルな話だ。

 ミーのロープがキャッチされようが、ユーとのロープの間合いの中では、ミーはフリーに動ける。

 拘束には至っていない」


 言葉が終わる前に、左方向から飛んできた手刀を側転で躱すグリ。


 手刀を撃ったkurokirbyが低く叫びながら、グリに追撃のローキックを放つ。

「そうかい。

 だったら、俺がお前をロープの範囲外に押し出し、ふじに拘束させる。」


「グッド タクティクス(いい作戦だ)!バット」

 側転の着地と同時にローキックをカットしたグリは、カットのため持ち上げた右膝を内側に捻りこむことでkurokirbyの右こめかみに回し蹴りを放った。


 必死に回避するkurokirby。

 だが、僅かにグリの右つま先が額をかすめ、流血し、体勢が崩れた。


「ユーの四肢※1では、ミーをコントロールすることは出来ん」


 2人を交互に見下ろしながらグリが、右口角をあげた時、後方から重いものを動かす音が響いた。


「三の矢が届いたようだな。

 今度こそ、勝負あった」


 額を抑えながらのkurokirbyの言葉に、グリが思わず問いかける。

「What?」


「俺たちは、お前を足止めし、待っていたんだよ。

 エアロックの減圧を終えた彼が、気密扉を開け、ここに到着するのをな」


 kurokirbyの言葉を受け、気密扉から姿を現した大男が大人(たいじん)風の外見に相応しい重々しい声で叫んだ。

「くろかびさぁ。待たせたのぉ。

 よー持ちこたえたくれたー。」


 大男、天敬星のしろが右手に構えた拳銃の照準をグリに合わせたまま、ゆっくり歩いてきた。



 ※1.四肢:柔術、剣術、忍術の源流と呼ばれる古流体術。

 肩甲骨、腸骨の柔軟性を高め、四足歩行時代の運動能力を獲得するための技術体系。

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