第84話 三日月形の床
【これまでのあらすじ】
濡れ衣を着せられチームBIOを追放されたレジスタンスエージェント バイオは、真実を探すため、グリと共に、Crystal Tower を登る。
行方不明となった百八の魔星の頭領ドージェの捜索中、バイオとグリはふじと同盟を組む。
最上階で、コントロールポータルを警護するしろとkurokirbyの元にふじが現れ、しろと警護を交代を申し出、しろは階下に。
入れ違いでバイオと共に現れたグリはCrystal Towerに迫る危機をkurokirbyに訴え、kurokirbyはしろと協議し、2人をコントロールポータルに案内するのであった。
kurokirbyが気密扉のロックを解除した瞬間、重い扉がゆっくりと外に開かれ、発生した気流が僅かに体を扉方向に移動させる。バイオは前方向に引っ張られる力に逆らわず、扉の外に足を踏み出した。
左手から顔を覗かせたばかりの朝陽が、薄い靄越しに周囲を照らしだす。自分たちが立っているのは、扉から前方10m、左右50mほどの奇妙な形状の床のようだ。奇妙というのは、床は直線ではなく曲線で囲われた三日月形であったのだ。
そして、後方は3m程の高さの壁で覆われているが、前方に壁は無く、不定期に突風が吹き荒れ、気を抜くと体ごと吹き飛ばされそうになる。その突風のせいか、気温が20度は低いように感じられ、体に震えが走る。
震えを抑えつつ、バイオとグリは、前方に足を進め、前方のへりから下を眺める。
白い雲と灰色の雲による絨毯が広がっているように見える。突風が吹く瞬間、絨毯が僅かに捲れ、海とおぼしき青いものを遥か遠方に垣間見たバイオは思わず、吐き捨てる。
「こいつは、地獄の釜だな」
グリも頷く。
「Yes.ここからドロップすれば、2,000m下の奈落に真っ逆さまだ」
視線を、水平に戻したバイオは、前方に浮いている物体を見つけ、目を疑う。
「なんだあれは?なぜ浮いている?」
「あれが、コントロールポータルさー」
ふじが答える。
続けて、kurokirbyが、左右に指を指しながら、
「床の左右を見てみろ」
バイオは、床の左右から細い通路のようなものが延び、前方で交差しているのを見た。
そして、交差した場所に、置かれているものが浮いているように見えたことに気付いた。
「あれが、コントロールポータル。。」
バイオは、スキャナーを取り出し確認する。
「これは、、届かないぞ。ここからコントロールポータルまで40m※1以上あるのか?」
kurokirbyが冷静に応える。
「このへりから、コントロールポータルまで43mだ」
震える寒さの中、脂汗を浮かべたバイオが、呻く。
「ということは、コントロールポータルに触るためには、」
「あの、通路を歩いて近づくしかない」
「サムタイムアゴー(さっき)、防衛面を考慮して移動させたというのは、こういうリーズンか。サートゥンリー(確かに)これでは、迂闊に近づけない」
グリが、呆れるように肩を竦めた。
※挿絵
https://kakuyomu.jp/users/dobby_boy/news/16817330651950767634
※1.40m:イングレスでは、プレイヤーから40m以内にあるポータルに対してしか主なアクションができない。
尚、主なアクションとは、「ハック」、「デプロイ」、「モッド設置」、「リンク」、「ウイルスによる攻撃」のことである。
ハックとは、必要なアイテムを取得するアクション。
デプロイとは、ポータルにレゾネーターを設置することによりポータルを所持または強化するアクション。
モッド設置とは、ポータルを強化するモッドと呼ばれるアイテムを設置するアクション。
リンクとは、自陣営のポータルから他の自陣営のポータルにリンク(線)を引くアクション。
ウイルスとは、レゾネーターを破壊することなくポータルの色を反転するアイテム。
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